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#1 哲学者から学んだこと 『働き方改革の先にある懸念』エミール・デュルケーム(1858−1917)(#武器になる哲学)


デュルケーム【 Émile Durkheim 】[ 1858 ~ 1917 ]フランスの社会学者。コントの実証主義から出発し、社会的事実を客観的に考察する科学としての社会学の方法論を確立。著「社会学的方法の規準」「自殺論」「宗教生活の原初形態」など。(大辞泉辞書より引用)

従来の働き方は、「終身雇用、年功序列、企業内組合のような集合社会の中に身を置く」というものでした。しかし、現代推奨される(ビジネス書や実業家が昨今よく勧めている)働き方は、「複数の会社に同時に勤める、短期の間に会社に移る、そもそも会社に所属せず、個人として様々なプロジェクトに関わる・・・というもの」です。

このような働き方改革が進み、「ポスト働き方改革」が成立したあとの社会にはどのような懸念があるのか。

武器になる哲学の筆者、山口周さんは『最大のリスクは社会のアノミー化である』と主張しています。

アノミーとは、もともとはギリシア語の「無法律状態(アノミアー)」を意味する。デュルケームは著書『社会分業論』(1893年)と『自殺論』(1897年)において「アノミー」の概念を提示した。『社会分業論』においては、社会的分業において分化した機能を統合する相互作用を営まないために共通の規範が不十分な状態を示す。
『自殺論』においては、経済の危機や急成長などで人々の欲望が無制限に高まるとき、欲求と価値の攪乱状態が起こり、そこに起こる葛藤をアノミーとしている。
『自殺論』においては自殺は次の4つの形態に分類される。
・自己本位的自殺
・集団本位的自殺
・アノミー的自殺
・宿命的自殺
この中で、アノミー的自殺(仏: suicide anomique)は、急激な社会変動や性的自由化などによる欲望の過度の肥大化の結果、個人の不満・焦燥・幻滅などの葛藤を経験する個人に起きやすいものであるとした。
(wikipediaより引用)

働き方改革によって社会の規制や規則が緩む(アノミー化)することで、私たちが会社というものから解放され自由に働くことができるようになると、逆にその自由な状態が人に不安を与える場合があります。

自殺率の非常に高い国である日本が特に懸念しなくてはいけないのが、アノミー的自殺が増える可能性です。

アノミー的自殺とは、集団・社会の規範が緩み、より多くの自由が獲得された結果、膨れ上がる自分の欲望を果てしなく追求し続け、実現できないことに幻滅し虚無感を抱くことで起きる自殺。
(武器になる哲学 より引用)

自由なだけでは幸せにはなれないということでしょうか。
人の人生の目標は幸せになることです。以前は会社に所属感を求めていましたが、アノミー化によって、人は所属的欲求のやり場を失いかけています。

では、会社に所属感を求めてはいけないのであれば、人は何を心の拠り所とすれば良いのでしょうか。

一つは、家族愛を追求することです。短命な会社ではなく、パートナーや子供のために尽くし、人生を全うすることは家族に精神的支柱を置くことに他なりません。こうして所属感を得ることは一つの答えだと思います。

もう一つは、会社ではなく、職に就くということです。会社に居場所を見つけるのと同じように、その業界内での自分の居場所を確立することです。

現代の会社は非常に短命で、年功序列や終身雇用、企業内組合の制度は永遠ではありません。会社に所属感を求めても、報われない可能性が出てきました。
会社に就くのではなく、職に就くとはどういうことか。
『就職』とは職に就くとかきます。日本では就職とは「ある企業に入社する」という意味でとられることがほとんどですが、就職とはある共通の仕事をするグループに所属すること、その集団内に自分の居場所を作っていくことです。

詰まるところ、アノミー化が進んだ社会で幸福に生きていくためには、自分にとって安全なコミュニティは何かというものを考えながら、自律的に自分が所属するコミュニティを作っていくという意思を持つことが重要です。
最近、クラウドファンディングやオンラインサロンがようやく脚光を浴びてきましたが、これも会社以外のコミュニティに他なりません。
他者貢献をできる場を自分で作り上げることこそ、ポスト働き方改革以降の幸せになる秘訣なのかもしれません。

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