大学入試共通テスト 日本史探究解いてみた 2025
昨年はこちら。
はじめに
今年も例に漏れず大学入試共通テストの日本史を解くことにしたのだが、「日本史B」が見当たらない。今年から新課程に変更となったため、従来の日本史Bは「歴史総合、日本史探究」になったようだ。どうやら世界史の部分も加わっているようであり傾向が変化している可能性もある。が、あえてノー勉で突っ込むスタイルで行く。まぁ日本史上級者やし今回もサクッと8割超えていきますよ。
※以下、設問への解答については「解いた時点での所感」を地の文で、「正しい解説」を引用として記載していく。前回も注意事項に記載したが、筆者は2008年度のセンター試験受験を最後に一般的な日本史の勉強はほとんどしていない在野の理系クイズプレイヤー(得意ジャンル:日本史)であり、地の文における思考回路は間違っている可能性があるためこれから受験する人は絶対に参考にしてはいけない。※ちゃんと下の引用の解説も読んでね。
第1問 19/25
「歴史上における境界」に関する問題。旧ソビエト圏、中東地域、中共関連、アメリカ移民問題と「境界」が問題となっている時代になんとも攻めた出題である。
問1. 地図と事項を結びつける高齢の問題。a.は香港、b. は…上海?
イギリスはこの頃には清を圧倒し、租借地などを形成していたはずなので、い-aの③が正解。→◯
問2. 時期的には江華島事件、台湾出兵が行われた時期。1875年ごろ?
①は日清修好条規のことで、②はアロー戦争、流石に明治維新よりは前な気がする…③はなんか怪しい。④は日朝修好条規を指しているが、これは日本最初の不平等条約だから×。多分③?→×
問3. さっぱりわからん…がこの頃大きな発言権を持っているとしたら流石にスペインよりはイギリスでしょう。で、穀物法とか言ってるので貿易の利益を上げたいんだろうから②が正解かな。→◯
問4. ①→~1902、② 戦後、③、合ってるように見え…これ柳条湖事件や!なので④が正解!→◯
問5. 地図の情報を読み取るだけ。長崎からの経時的な流行の広がりより先に関東で感染拡大しているのでやっぱりアメリカ船の影響。京都は一番流行が遅いため、感染の起点とするには無理がある。①→◯
問6. グラフを読み取るだけ。③ベトナム戦争後はむしろアジア人の割合が増加しているのでこれが誤り。③→◯
問7. メモⅠがプラハの春、メモⅡは改革開放、メモⅢはキューバの成立…。ⅠとⅡの関係がわからず。⑥?→×
問8. 研究テーマの策定方法。ドイツ関税同盟はよくわからんが多分だいぶ前。ベルリンの壁崩壊は1989年だから、その前後の人口動態を比較する。明治と言えばお雇い外国人。なので④→◯
第2問 12/15
「お菓子」から近現代の砂糖の生産・消費に切り込む問題。毎年思うのだが、高校生たちよ、何を食ったらそんな深い考察ができるんだ。砂糖か。たぶん砂糖だ。
問1. 史料を読んで答える問題。工藤平助は『赤蝦夷風説書』を著し蝦夷地開拓の重要性を説いた人物。時代は忘れたけど田沼時代くらいの政治家だろう。今年の大河ドラマでも言及されるだろうか…。い. は松平定信とかかな※。う.とえ.は史料を読んで答えるだけなのでえ.が正しい、②→◯
問2. 史料を読む問題。最初「資料2」の時代感がわからず混乱するも、下線部みたら大正時代って書いてあるやんけ。1911-1926なのでWWⅠの時期でしょ。①→◯
問3. 平安時代の習俗を問う問題。全部正しいような、そうなのか、となるような一歩踏み込まないとわからない選択肢だが、去年の大河ドラマでF4や実資を見ていた人なら答えられる?難しいけど、②の説明は「書院造」…室町時代の建築様式だ!②→◯
問4. 最大のやらかし問題。「中世」を読み、「禅宗」を読み落としたために間違えてしまった。①は江戸時代、③は鑑真のことなので除外。②も④も中世だな…でも④って正しいのか?ということで②→×
問5. これも知識と史料読解の融合。①は砂糖≠甘葛という史料が読めていれば×、②、カステラはさすがにポルトガルって常識…だよ…ね(不安)?④は少し難しいけど切符(配給)ってことは砂糖の消費は落ち込むに決まっているので③→◯
第3問 9/15
九州と東アジア諸国との外交関係について学ぶ問題。
問1. 3世紀までの諸外国の王朝を知っていれば簡単。新羅は6世紀とかそんな印象でその前だといわゆる三韓の時代。④→◯
問2. 王朝との外交関係。結構難しい。①は逆の関係なので即除外だが、残りの3つはよくわからん…③が正しい気がするので③?→◯
問3. 「渤海」=「高麗」の史料を探せ、という超難問。渤海っていつ頃の国家だ…?渤海の前である「高句麗」と書かれているし、宋とかの時代くらいか…?③、④は明らかに韓国の話なので除外し、①と②で迷って①→×
問4. 純粋な誤答。あ.は「兵士・軍団制の廃止と健児(こんでい)の設置」なのだが、九州が除外対象か思い出せず…。×かな?い. は昨年の大河ドラマでも描かれた「刀伊の入寇」。◯なので、③?→×
問5. まとめメモの画像とキャプションが合っているか確認するm…螺鈿紫檀五弦琵琶だー!これは正倉院宝物の一つなので国風文化とは関係ない。サクラさん残念。というよりこれだけ深い考察ができる歴史クラブ部員がこのような初歩的なミスを犯すだろうか。タケシさんの方は聖衆来迎図かな。これは浄土信仰とマッチしているので正解。④→◯
第4問 12/15
中世武士の問題。
問1. ①について正誤が一瞬判定できず。唐なんか滅んどるやんけ、と1回選びかけるも「からもの」だ、と気づいて除外。②まぁ鎌倉武士の基本組織だから◯。③なんとなくだけど、半済令って室町じゃなかったっけ。④御家人ではないけど実朝さんとかも和歌詠んでたよね、ということで③→◯
問2. 「蒙古襲来絵詞」と史料から答えるだけ。この絵には「石塁」が描かれている。ろくな準備もできず迎え撃った1274年の文永の役と異なり、上陸阻止を図るため1281年の弘安の役の前には防備が固められている。なので「い」が正解。史料は1324年のものなので、当然その後も警備しているから「Y」が正解。④→◯
問3. 吉田兼倶って何神道だっけ…を思い出せず。名前から勘で「伊勢神道」を選択。黄檗宗が伝わったのは江戸時代なのでキリスト教は間違いない。③→×
問4. 貨幣を鋳造することによる大名のインセンティブを問う問題。難易度が高く選択肢を読むだけでは正解できない。選択肢の中の間違いを潰していくしかない。①の藩札は江戸時代の話なので×、②は明らかな誤りはなさそう。③豊臣・徳川政権は「石高」を採用し、土地の生産力を米の収量で表しているので×、④戦国時代を念頭においた時、銀の流出を招くほどの貿易は行われていない気が・・・ということで、②→◯
問5. これも正誤判定。①は平清盛を言いたいのかと思うが、勘合貿易は室町時代。②は日本史ベタ問。鎌倉幕府が出した御成敗式目は従来の律令を否定するものではなく、御家人を対象とした法令である。③はよくわからんが、遠隔地と連携して軍団って作れるのか?、ということで④→◯
第5問 9/15
「近世の村」について考察する問題。
問1. いわゆる「太閤検地」の問題。この画期的な点として全国の土地の生産高を統一した枡で測定したことが挙げられる。なのであが誤りなのは瞬殺。近世の百姓に武力など許されていない気がするのでYを選び、④→◯
問2. 資料を読むだけ。③→◯
問3. 鬼門の時代正誤。Ⅰは水野忠邦、天保の改革の人返し令、Ⅱは徳川吉宗、享保の改革、までは自信があるのだが、Ⅲがあいまいすぎてどこのことだかわからず、④→×
問4. 資料を読むだけ。②→◯
問5. 意外な形で足元をすくわれてしまった問題。④について「定免法の採用に伴う増収では?」と思ってしまったので④→×
第6問 3/15
松本清張許すまじ。
問1. 史料問題を間違える痛恨のミス。あ. は明らかな正解なのだが、い. についても「総督府に引き換えを…」と書いてあるので正解?となり選択。Yは金本位制の誤りなのでXだから、③→×
問2. ②について、「向学心があったからではない」と明言している以上、学ぼうとはしてないのでは?と思い選択→×
問3. これは簡単。Ⅰが戦後、Ⅱが戦中、Ⅲだが最初の史料に「1895年 朝日新聞」があるので新聞社が強くなるのは戦前と推測可能(大正かな?)⑥→◯
問4. この辺は自信なし。ゼネストって会社職員じゃないの?①→×
問5. またしても史料問題。女性参加をみるならば全体投票率でしょう。ということであはW、いについては難しいが、特異な政治主張などがあるのかも、ということでY、①→×
まとめ
結果…64点。これはひどい。もう日本史強者を返上したほうが良いかもしれない。
以下、言い訳タイム。
今年の問題を解いてみて感じたのは、この「日本史探究」、「日本史B」とは全く別のカテゴリである。「日本史B」の内容は本当に日本史のみに特化した内容であり、諸外国との関係性についてもあくまで日本視点で知っていればよかった。しかし、「日本史探究」においては日本と直接の関係性がない時期でも世界の諸国の状況をある程度正確に理解していないと正解にたどり着けない問題が非常に多かった。今回誤答した問題の多くはそうした世界史的問題だった。また大問の構成も大きく変化し、これまでは問題が進むにつれて時代が近現代に進んでいたのに比べると時代の前後の振れ幅が大きくなった印象だ。第2問:明治・大正→第3問:古代への揺り戻しなどは少し戸惑ってしまった。また、史料考察問題に加えて「リサーチクエスチョン」と「その検討手法」を問う研究志向問題が多く取り入れられたのも印象的である。こうした大幅な改訂について、私個人の所感を申し上げるならば、「受験生目線ならば改悪、ただし中等教育における歴史ならば大改良」である。これまでの知識偏重、年号・年表首っ引きスタイルに比べ考察する内容が増え、単なる暗記科目ではなくなった分、受験生の負担は大幅増となった。一方で、そうした勉強方法は歴史を無味乾燥なものとし、その裏にある国際情勢や人の感情の機微と言ったコンテクストが排除されるものであった。史料考察問題や研究志向問題はこうした「歴史の楽しさ、面白さ」を際立たせるものであり、また国際情勢との関係性を重視した出題は「受験科目」ではなく「教養」としての日本史を学ぶ意義を明確に示している。数年前からセンター試験・大学入試共通テストにおいて日本史Bは知識偏重から考察重視にスライドしてきていたが、今回の「日本史探究」において一つの完成形を見たと言えるだろう。ただ、実質世界史と日本史の両科目を勉強することになる受験生からの敬遠は起こりうるので高校においてぜひ「日本史の魅力」を発信しつつ試験対策にもなりうる授業を模索していただけるとよいのではないだろうか。やめて先生死んじゃう…!
というわけで惨敗したわけだが…おや、旧課程の「日本史B」もあるのか。ざっと大問の1文目だけ見ると問題違うっぽいな…。
もう一回遊べるドン!
→To Be Continued…