聴覚過敏のメリット
聴覚過敏で困っている、という話はよく聞く。
オフィスや学校で人の声が聞き取れないとか、スーパーの宣伝の声に耐えられないとか、特定の日常音が気になって仕方ないとか、とかとかとか。
一方で、聴覚過敏でよかった、という話は聞かない。
おそらく、能力を生かした側の人は聴覚過敏という『問題』に無自覚なので、発信しない。ので、見つからないためだろう。
確信を持って言おう。
聴覚過敏は役に立つ。
メカニック、機械屋さんの領域ではめちゃくちゃ有利だ。
身近にある機械、例えば電車を思い浮かべてほしい。見た目は四角い箱に、車輪と電線と繋がるパーツがあって、中には人が乗るスペースがある。そして見えないところに、走行を支える重要で様々な部品が隠されている。
繰り返す。『見えないところに』『重要で様々な部品』が『隠されている』。
言い換えると、『重要で様々な部品』に異常が発生したとき、一番気付きやすいのが『音』なのだ。
熟練したメカニックは音に敏感だ。機械の駆動音のわずかな違いで異常と、それが発生している場所を察知し、的確に処理する。もちろん、的確に処理できる知識と技術を身に着けていることが大前提となるが、『わずかな音の違いを聞き分けられる耳』を持っていることは確実に有利だ。
これからロボティクスが進歩し、機械を『作る』工程において人間はロボットに置き換えられていくだろう。というか、置き換えられて行っている。しかし、機械を『修理する』のは、人間にしかできないことだ。機械が壊れた、と一言で表現できても、要因は様々だ。先ほどの電車の例でいえば、壊れたのが駆動系なのか、電気系なのか、制御系なのか、ブレーキ系なのか、さらにそのどの部分に異常が起きているのかで対処が変わる。それを調査し、判断し、実際に壊れた部品の付け替え、修理完了したか確認するまで、全てをロボットが自動で行えるようになるのは遠い未来になるだろう。
聴覚過敏に困っている私のお仲間の皆さんには、機械はうるさいイメージがあって嫌いな方がいらっしゃるかもしれない。だが振動に弱い機械もある。音も振動なので、そういう機械がある場所は本気で無音だ。作業環境としても聴覚過敏当事者に最適だったりするのだ。
これは私の個人的な嗜好だが、安定して駆動している機械の駆動音を聞くのは心地いい。以前働いていた会社で、人の声でパニクった時は機械部屋に逃げ込んだりしていた。そこで逆に異音に気づいて、装置の故障を指摘すれば上司や周囲の社員に認められる。いいことばかりだ。
聴覚過敏に困っている高校生以下の皆さん、またその保護者の皆さん。機械系、お勧めします。
なお、身近な機械の例として電車を挙げたが、私は電車に詳しくない。間違った用語を使っていたら、コメントなどで指摘をお願いしたい。