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一人暮らしをしようとして、治安が悪いと言われる寿町の宿で住み込みバイトをしていた話

大学4年生に上がる前の春休み、私の頭の中で考えていたことは、
「一人暮らしがしたい、でもお金がない。」
でした。
なんとかお金をかけずに一人暮らしができないか、と色々調べていた時に見つけたのが「フリーアコモデーション」という、宿で働く代わりに費用負担をせずに宿泊することが出来るというしくみでした。
結局いろいろあって自身の生活スタイルとは合わなくなってしまい、半年ほどでやめてしまったのですが、なかなかできない経験だったように思うので書いてみたいと思います。

仕事の内容について

仕事は夜間のフロント・チェックイン対応を主に行っていました。
社員さんが帰ってしまう夜の6時以降、その日にチェックインするお客さんをひたすら待ち、チェックインの対応や締め作業などをする仕事です。宿泊施設という特性上仕方がないのですが、深夜0時、1時近くになるまで待つ(または電話で起こされる)ということもあり、翌日が朝早いと体力的にきつかったです。(寝ていても電話の幻聴が聞こえたりしましたw)

寿町ってこんな場所

私の働いていた宿泊施設は、横浜市の中心部にほど近い、寿町と呼ばれる場所にあります。
駅を挟んで反対側は中華街や元町のお洒落なショッピング街、高級住宅街がある場所。そのすぐ近くに、三畳一間で「宿」とも呼べないことから逆さ言葉で「ドヤ」と呼ばれるような簡易宿泊所が立ち並び、生活保護受給率が神奈川でダントツの寿町。「分断」を肌で感じるような場所だったように思います。

昔見た、外国の光景で川を挟んで高級住宅地と
トタン屋根のスラム街が隔てられた写真を思い出しました。

簡易宿泊所に住む人の多くが65歳以上の生活保護受給者。私の働く場所も、上階が観光客向けの宿泊施設、下階が生活保護受給者が住む簡易宿泊所になっていました。私が部屋に戻ろうとすると、よく杖をついて歩くおっちゃんとすれ違いました。

4畳一間、水回り共用の中での生活

使わせてもらっていた部屋は、こんな感じの4畳一間。
年季の入った壁や天井を見て、何とも言い難い感情になったのを覚えています(笑)
潔癖症とは程遠く、大概のことは気にならないと自負している私ですが(?)備え付けの布団を使うのだけは何となく気が引けてしまい、持ってきた寝袋で寝ていました。

ちなみに、宿で余っていたテーブルを借りるまでは、週末実家に帰るまでの数日分の荷物の入ったスーツケースの上でご飯を食べていました。

上京1日目みたいな光景です(笑)

トイレ・水道・シャワーなどの水回りはすべて共用だったので、毎回ドアの戸締りをして廊下の端にある水回りスポットまで行かないといけないのが思った以上に面倒でした。やっぱり住むなら水回りがある家がいいです(それはそう)

「寿町で暮らす」ということ

朝、時間があるときは、大学に行く前に隣駅の喫茶店でモーニングを食べるために寿町のメインストリートを通って通学していました。
何せお年寄りの多いまち。みなさん朝は早いです。朝6時台に私が歩くと、もうすでに道端のそこかしこで朝からお酒を飲んだり、たばこを吸ったりしているおっちゃんたちがいました。
そんな時間に、そんな場所を歩く女子大生は私くらいのものなので、物珍しげに私のことを見てくるおっちゃんたちの視線を横目に感じつつ登校していました。

夕方、学校から宿に戻ると、朝に道端でお酒を飲んでいたおっちゃんが全く同じ場所でお酒を飲んでいたりしました。この人は一体どんな一日を過ごしているのだろうか、と逆に感心してしまいました。
また、ドアが開いているお店を隙間から覗くと、楽しそうに酒盛りをしている声が聞こえてきます。ここではこれが日常なんだな、みんな意外と楽しそうにやってるんだな、となぜかうらやましいような気持ちになったことを覚えています。また、お年寄りが多いからか、診療所にはいつも長い行列ができていました。朝9時開院にも関わらず、7時にはもう入り口に座っている人がいてびっくりしました。近くにはデイサービスや福祉事業所、保育園もあります。

以前は、「日雇い労働者の住む危険なまち」と言われていた寿町。
いまはだんだんと、「行き場のない高齢者が住む福祉のまち」になりつつあります。
神奈川出身の人に「寿町でバイトしていたことがある」と伝えると、たいてい驚かれます。
女性が一人でバイトして、危ない目に遭わないのか、と聞かれることもあります。確かにほかのまちよりはなんともいえない緊張感がありましたが、幸い、危ない目には遭いませんでした。
皆さんが想像する寿町といまの寿町にはだいぶ乖離があるような気がします。意外とみんな、普通に暮らしているまちでした。

おわりに

寿町で働いていた6か月間、特に劇的なことは起きませんでした。
そこにはただ、寿町で生活している人の「日常」があったように思います。(住まなくてもわかったことかもしれませんが)
しかし、きらびやかな元町の商店街や、世界中から観光客が訪れる中華街の裏で、道の端で一日中お酒を飲んでいるおっちゃんの日常が存在しているということに気づけたのは良かったなと思います。
寿町に住まなかったら、おっちゃん達を見ようとはせず、無意識のうちに目を伏せて通り過ぎているんじゃないかと思うので。

寿町のすぐ近く、元町の街並み

今回はそんなところです。
読んでくださってありがとうございました。

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