北欧は本当に「幸福度が高い」のか?実際にデンマークに来て考えたこと

こんにちは。
皆さんの中には、「北欧は幸福度が高い」ということをなんとなく聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
そのイメージの通り、北欧諸国は常にOECDの世界幸福度ランキングで上位にランクインしています。
私が現在留学しているデンマークの今年の幸福度はなんと2位、日本は51位という結果になっています。
しかしこの結果は本当に鵜呑みにしてよいものなのでしょうか。

もちろん北欧では教育・医療・介護など人生のさまざまな局面において手厚い社会保障があり、それが幸福度の高さにつながっている、という主張も理解できます。

ここでは、幸福度ランキングは本当に幸福度を示しているのか、そもそも幸福とは何なのか、デンマークに来てみて自分なりに調べたことや考えたことについて書いてみようと思います。


そもそも「世界幸福度ランキング」はどういう指標で判断されているのか?

OECDが毎年統計を出している、世界幸福度ランキングは、おもに以下の6つの指標から算出されています。

①一人あたりGDP
②平均寿命
③他人への寛容さ-「過去1カ月にいくら募金しましたか?」
④社会的支援・周囲のサポート-「困ったときに助けてくれる、信頼できる親類や友人がいますか?」
⑤人生の自由度-「あなた自身の人生における選択の自由について、満足ですか?」
⑥国への信頼度・政治的腐敗の少なさ-「あなたの国の政府・ビジネスに汚職/腐敗が蔓延していますか?」

https://worldinvest.jp/worldhappinessranking/

こう列挙されると、わかったようなわからんような、といったところなのですが、私がまず疑問に思ったのが、幸福度を測定する項目はこれで本当に適切なのか?という点です。

たとえば③の「他人への寛容さ」を測る質問項目は、「過去1カ月にいくら募金しましたか?」です。
正直、この質問項目は日本に当てはまらないような気がしませんか?

そもそも日本では募金自体がそこまで根強い文化ではなく、「募金額=他者への寛容さの指標」という図式に、個人的にはいまいち納得がいきませんでした。
たとえば、「他者への寛容さ」を測る質問であれば、他者に対する共感・思いやりといった視点からの質問のほうがより適切なのではないでしょうか。

また、⑤人生の自由度-「あなた自身の人生における選択の自由について、満足ですか?」という質問も、集団主義や個人主義といった国民性によって変わりうるもののように感じています。個人主義の国のほうが「個人の自由」という面では感じやすいだろうし、かといって「自由であること」が「幸福」と直結するものなのか?という疑問もわいてきます。

そして、この幸福度ランキングなるものは、④社会的支援や⑥国への信頼度といった項目にも表れているように、個人の幸福度というよりもむしろ、「国家や社会に対する満足度」を表しているといったほうが適切に感じます。

幸福度ランキングの指標を調べていくにつれて、「幸福」の定義も人によって異なる中、このような指標に当てはめて順位付けしたものに果たしてどれだけの意味があるのだろうかと、疑問に思うようになってきました。
まずそもそも、「幸福」とはいったい何なんでしょう。

幸福は「ほとばしる幸福」と「かみしめる幸福」の2種類ある?

これは私がデンマークに来て考えるようになったことなのですが、「幸福」には「ほとばしる幸福」(≒非日常の幸福)と「かみしめる幸福」(≒日常の幸福)の2種類があるのではないか、と思うようになりました。

たとえば、「ほとばしる幸福」の例は、「受験に合格した!」「宝くじに当たった!」「高級車を買った!」というような、「非日常の何かを達成したことによって生じる幸福感」のことだと考えています。
ジェットコースターに乗っているように、めまぐるしく飲み込まれるように流れに乗って、頂上に行ったらハッピー!というようなイメージです。

一方、「かみしめる幸福」の例は、「見上げた空が晴れていてうれしい」「一日のはじめに飲むコーヒーがおいしい」のような、「見逃しがちだけど実は私たちの日常の近くにある幸福感」のことだと考えています。
ジェットコースターでいうと、実際に乗る前に順番待ちをしながら友達としゃべっているとき、みたいなイメージでしょうか。

日本にいたときの私は、「幸福」といえば前者のイメージしか想像できていなかったように思います。頑張って何かを達成する、その先にあるのが幸福だ、いつの間にかそうした思考になってしまっていました。

しかしデンマークに来て思ったのは、デンマークの生活の中には「かみしめる幸福」がちりばめられているということです。
太陽があたたかければ外に出る、コーヒーとおやつ休憩を大事にする、友人たちのグループでのおしゃべりの時間を大事にする、こうした日々の中で幸福感を実感すること、「すでに持っているものに目を向けてそれを大切にする」という感覚がデンマーク人には根付いているように感じました。
そうした姿勢が幸福度の高さにも反映されているのかなと感じています。

この「ほとばしる幸福」と「かみしめる幸福」は、どちらが良い・悪いといったものではなく、この2つの幸福がちょうどよいバランスで存在することが、「安定した幸福感」を感じるために重要なのではないかという結論にたどり着きました。非日常ばかりでは疲れるし、日常だけでも飽きてしまう、というのが、幸福感に関してもいえるのではないかと考えています。

実際にデンマークで暮らしてみて思うこと

日本ではよい面がフォーカスされがちな北欧ですが、実際北欧で暮らしてみると、日本についても改めて見つめなおす機会になっています。
ここでは、デンマークで暮らしてみて、日本との比較で気づいたことについて書いてみようと思います。

①日本の「気軽に楽しめる娯楽」の多さはすごい!
北欧は高い税金の負担の上で成り立っている社会なので、とにかく何をするのにもお金がかかります。なんと消費税は25%!
チェーン店で気軽に外食を楽しんだり、気分転換にカフェに行ったりする、という文化はあまりないようです。
また、公共施設も集約が進んでおり、図書館などもアクセスがあまりよくなかったり、営業時間が短かったりします。

そう考えると、日本がいかに気軽に楽しめる娯楽の多いことか!と感じさせられます。安くておいしいチェーン店がたくさんあり、銭湯、カラオケ、ネカフェ、ゲームセンターなど…こうした娯楽はなかなか日本の充実度にはかなわないなと実感しています。

北欧では、娯楽の少なさからか、アルコール・ドラッグなどの依存も近年問題になってきています。やることがないのでお酒を飲んで楽しむ…というのは、わたしもこちらに来て増えたような気がします。

②気候は意外と気分を左右する
北欧は、地理的条件により、夏がとっても短く、冬がとっても長いです。
日本の場合、一番日が短い冬至であっても10時間弱ほどの日照時間があり、冬は晴れていることが多いです。
デンマークではなんと最も短い日は7時間ほどしか日照時間がありません。また、秋から冬にかけてはどんよりと曇っている天気のことが多く、青空を見られるのはほんのわずかな時間しかないことも。

デンマークに来て、気候は意外と私たちの気分に大きな影響を与えていることを実感しています。やっぱり雨が降っていたり、寒かったりするとなんとなく体がだるくなってくるような感覚があります。

北欧では、冬場に太陽光を浴びる機会が少なく、体内で十分なビタミンDが生成されないことによる、冬季うつもよくみられるようです。不足している分はビタミンDのサプリメントなどで補うそう。

結局、幸福ってなんでしょう??

結局、「幸福」というものは明確に定義できるものではなく、わたしたちが一人一人の中で見出していくものなんじゃないかと思っています。

確信していることとしては、幸福は「人との比較」からは生まれないということです。どんな状態の自分であることが幸福なのか、自分自身の評価軸・価値観できめることが大切なのではないかと思います。

そして、先に述べたように、おそらく幸福は「日常の中でかみしめる幸福」と「非日常の中でほとばしる幸福」の2つの性質があり、
「すでに多くのことを持っていることに気づくこと」が日常の中の幸福を、「日々の中で自分なりに目標を見つけてそれを達成していくこと」が非日常の幸福を見つけていく上でのヒントになるのではないでしょうか。

今回はそんなところです。
読んでくださってありがとうございました。


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