リビア 東部デルナの大洪水 キュレネの考古遺跡
リビア
気象情報関係者の間では、メディタレー二アン(=地中海)エリアで発生した低気圧が、ハリケーンにまで発達した場合メディケーンと呼ばれるそうだ。今回リビア東部に襲い掛かった低気圧ストーム・ダニエルは、ギリシャ付近で発生し猛烈な勢いのメディケーンに大化けした。ギリシャやトルコなどにも大きな被害をもたらしている。
リビア東部では9月10日から大雨になり、11日にデルナ近郊の2か所のダムが決壊、鉄砲水が街に流れ込んだ。街のほぼ中央を流れるワジ・デルナ川からあふれ出た濁流に多くの人が呑み込まれ、地中海に流された。道路や橋が寸断、建物が跡形もなく破壊された。
まずアフリカ大陸。リビア ( Libya ) は北部に位置する。
海は地中海。国境を接する国は右からエジプト、スーダン、チャド、ニジェール、アルジェリア、チュニジア。サハラ砂漠の中にあって、エジプトとの間にはリビア砂漠がある。
左に首都トリポリ ( Tripoli )。右、東部にベンガジ ( Banghazi )、トブルク ( Tubruq )、その中間にデルナ ( Darnah )がある。
トリポリには国民統一政府、東部には東部政府があり対立している。内情は知らないが、国が分裂しているわけだ。
デルナ
海沿いの町だ。緑っぽいところは高原地帯。人口12万人。
衛星画像は、2023年9月2日。ベイダ ( Baida ) の近くにキュレネの考古遺跡がある、マーカー地点。ズームイン。
町の背後にはジュベル・アフダル山地があり、森林に囲まれている。街の真ん中を流れるワジ・デルナ川がわかる。
市街地
参考衛星画像は、2022年1月7日。被災前の街並みを見ておこう。
大洪水
9月11日に発生した洪水がどのように街を破壊したのか。以下のように衛星画像を分類して、ズームインしながら見ていこう。
洪水前 :9月2日。
洪水直後:9月12日。
洪水後 :9月22日。
洪水前
7,8,9月は雨がほとんど降らない地域だから、川には水がなく雑草、雑木が茂っている。
洪水直後
洪水後
洪水前
洪水直後
まだ濁流が引いていないようだ。
洪水後
街の半分くらいが土砂におおわれている。
洪水前
洪水直後
洪水後
見出しは10月2日の衛星画像。
キュレネ
衛星画像は、2023年9月2日。左下の町は保養地として知られているベイダ。キュレネの考古遺跡があるのはシャッハート ( Shahhat ) の町。ズームイン。
マーカーの先端はゼウスの神殿。
等高線を描いてみた。500,600という数字は標高(m)である。線の混み具合などから、遺跡が高原に築かれていたことがわかると思う。
考古遺跡
参考衛星画像は、2019年3月10日。遺跡はシャッハートの町の郊外にある。紀元前630年頃サントリーニ島から移住してきたギリシャ人が建設した植民都市の遺跡である。365年の大地震で神殿などの建築物が崩れたといわれる。のちに廃墟になり、18世紀に発見された。ズームイン。
この辺に遺跡が集まっている。
ゼウスの神殿
遺跡
左上に円形劇場。
ネクロポリス
傾斜地には墓があり、共同墓地となっている。ここから海岸のほうにかけて2000以上の墓地がみられるそうだ。
キュレネの考古遺跡の被害状況を調べている際にあらたに建造物の遺跡が発見されたそうだ。その一方で、遺跡の土台も洪水に洗われたため崩壊の可能性が指摘されている。
リビアでは政治的混乱が続いているため2016年、キュレネの考古遺跡を始めとしてすべての世界遺産は危機遺産リストに登録された。
今年の台風の動き、雨の降り方や異常な猛暑を経験していると、とてもよそ事とは思えない。ホンマにどうなっているのか、どうなるのかこの地球は。
注記)
a.衛星画像は、欧州宇宙機関 ( European Space Agency : ESA ) が運用する EO ブラウザからスクリーンショットしたものを使用しています。.
b.参考衛星画像は、Esri が運用する World Imagery Wayback からスクリーンショットしたものを使用しています。