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ドイツ スウェーデン バルト海 アオコの大量発生  

バルト海

 何これ?
 バルト海の海面に渦巻く緑色の帯。海の上に広範囲に描かれた縞模様。その正体はアオコだった。
 アオコは普通は淡水の湖や沼地で見られるものだ。ラン藻(シアノバクテリア)が大増殖する現象、もしくは爆発的に発生したラン藻のことをアオコと呼んでいる。
 夏になって海水温が高くなると発生し、水面を緑色に変えてしまうアオコ。強烈な腐敗臭。なかには急性肝炎を引き起こす毒素を含むものがあるそうだ。
 ここバルト海では、海なのにアオコの大発生だ。かなり以前からバルト海の危機は進行していたらしい。

 バルト海をじっくり見てみよう。スカンディナヴィア半島とヨーロッパ大陸に囲まれた、ものすごく奥行きのある内海だ。周辺の沿岸国といえば、スウェーデンから時計回りにフィンランド、ロシア、エストニア、ラトヴィア、リトアニア、ポーランド、ドイツそしてデンマーク。

 海水の出入り口は1ヶ所。左下のスウェーデンとデンマークに挟まれた狭い海峡だけだ。すべての海水が入れ替わるには30年から60年かかるとされている。また、周りの河川からは水が流れ込む一方なので塩分がうすまり、汽水の濃度になっている。アオコが発生しやすいわけだ。
 バルト海の上のほうはボスニア湾、右のほうはフィンランド湾。ストックホルムの横の海域がバルト海中央部。
 デンマークの左は外海の北海、大西洋につながっている。

 ドイツ、ポーランドの北岸。

ドイツ沿岸

 ドイツ北岸の都市リューベック ( Lubeck )、ロストック ( Rostock ) が見える。

 左上の島、フェーマルン島とは橋でつながっている。上の島はデンマーク領。

 衛星画像は2024年8月6日。ズームイン。

 風が吹き寄せ、海流が陸地と干渉した結果なのか?、生じたアオコの模様。

 アオコに葉緑素があるかどうかを見てみよう。植生を調べるためのデータ処理を行った。アオコの濃い部分が反応しているのがわかる。

 いくつかの方向を拡大してもっとよく見てみよう。まず上の方。左端はフェーマルン島。

 船の航跡がくっきりと残っている。

 左の方。上はフェーマルン島。

 海岸にアオコが打ち寄せられている。

 右の方。右下はロストック。

 リューベック付近。

 左下の河口からさかのぼるとリューベックの市街。

バルト海沿岸のビーチ

 バルト海は重要な漁場であるだけではない。沿岸には海上スポーツや休暇を楽しむためのレジャー施設が設けられている。周辺のビーチを見てみよう。

リューベック

 参考衛星画像は2023年4月6日。世界遺産のある港湾都市。その歴史ゆえに正式名称はハンザ都市リューベック。旧市街は川をさかのぼった地点。ズームイン。

 4月はまだまだ寒いから少ないね。

ロストック

 参考衛星画像は2021年10月7日。ハンザ同盟の重要都市。

 秋でもビーチを楽しむひとが多いんだな。

フェーマルン島

 参考衛星画像は2022年5月23日。ご覧のように島全体が農業とレジャー施設をコラボしている感じの島。上の港にはUボートが展示してある。週末、休暇を過ごすキャンプ場、コテージ、ビーチが整備されている。

スウェーデン沿岸

 スウェーデン、ストックホルムの沖合あたりがバルト海中央部になる。
 2019年、フィンランド環境研究所は「バルト海の長期的な環境変化」と題する報告書を公表した。それによれば、
・過去100年間の平均海面水温は上昇。
・富栄養化は進み、無酸素水域は拡大している。
・いくつかの海域ではラン藻の増加が目立っている。
とまとめている。
 状況は深刻だ。バルト海中央部は今や、世界最大の「死の海域」とまで言われている。

 衛星画像は2024年8月7日。マーカー地点はストックホルム。海上に広がるアオコ。ズームイン。

アオコの状況変化

 8月上旬のアオコの発生状況を追ってみた。1日、6日、11日の衛星画像を調べてみよう。

1日 海流、風などの影響はどうだろう。

6日 左下方向に寄せられている。

11日 消えてきた。

リューベック付近の海岸の変化

1日

6日

11日 波打ち際に数百メートルの幅に打ち寄せられている。

フェーマルン島周辺の変化

1日 狭まった場所の様子。

6日 右から左に流れている様子がわかる。

11日 右上の入り江のような所はたまりやすいんだな。

 これじゃあ夏のバカンス気分も台無しだよね。ビーチでくつろいだり、ボートで遊ぶ気になれない、と思うけどどうだろう。バルト海での海水浴は要注意らしい。 
 アオコの研究はもっと進めてほしいものだ。

注記)
a.衛星画像は、欧州宇宙機関 ( European Space Agency : ESA ) が運用する COPERNICUS ブラウザからスクリーンショットしたものを使用しています。
b.地図画像・参考衛星画像は、ESRI が運用する World Imagery Wayback からスクリーンショットしたものを使用しています。

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