楽曲のバランスは基準を決めるところから〜「なんとなくいい感じ」を卒業し確信を持つためのバランス感覚〜【ミックス】
モニター環境
前回はミックス作業にあたり、トラックの整理を行いました。
今回からミックス作業がスタートします。
早速作業のためのボリュームを決めましょう。
「ボリュームを決めるってどう言うこと?」と思われるかもしれません。
皆さん各々環境があると思いますが、簡単に言えば耳を痛めず、近所迷惑にならない音量で作業をしましょうと言うことです。
ミックスに際してモニタースピーカーとモニターヘッドフォンがあることが望ましいですが、住環境からスピーカーで音を出すのは厳しいという方はモニターヘッドフォンのみでも構いません。ただPC内蔵のスピーカーでミックスをするのは避けてください。
モニタースピーカーの置き方等に関して、今回は割愛しますが今後取り上げられたらと思います。
記事の最後に参考書籍をあげておきます。
筆者のモニター環境
モニタースピーカー:IK Multimedia iLoud Micro Monitor
サブウーファー:FOSTEX PM-SUBmini2
モニターヘッドフォン:SONY MDR-CD900ST
サブウーファーは可能ならといった感じです。モニターヘッドフォンについても一応業界標準的に使われていたものを始めた当時買ったものなので今とはトレンドが違うかもしれません。
レベル管理
モニタースピーカーの音量を決定するには「ピンクノイズ」を使用します。
これは、ピンクノイズがどのオクターブ帯域でも音の大きさが同じであり、音を扱う場で基準とされることが多いためです。
DAWにはジェネレータが入っている場合が多いので、お手持ちのDAWのジェネレータでピンクノイズを生成してください。生成時、大きさは-20dB、時間は30秒としてください。
生成したピンクノイズを再生したらスピーカー本体のボリュームを調整し作業位置で聴いた聴感を合わせます。DAW上のフェーダーで調節してはいけません。ミックスしたい曲のサビ(強く歌う箇所)の音量感を決めてください。この音量を基準に、最大箇所でも+4〜6dBくらいになるイメージです。
これでモニターボリュームの設定は終わりです。
ここで設定したモニターボリュームがミックス全体の基準音量になるので、曲のミックスを仕上げるまで変更しないようにしましょう。
今回の設定は、メーターを見ずとも0dBを超えてオーバーロードするような心配をせず広いレンジの曲でも対応できるような設定となっています。
この設定方法について詳しいことが知りたいと思った方は是非以下の記事も読んでみてください。
https://note.com/noamitakayuki/n/na5c97fdc94ac
※リンクを貼るにあたり、執筆者のTakayuki Noami様に許可をいただきました。ありがとうございます。
フェーダーで各楽器のバランスを取る
ミックスにおいて音量バランスを取る際重要なのは「対比すること」です。
いきなり全てのトラックを鳴らしても果たして最初に手をつけるKickが適正な音量なのかどうか判断することは大変難しい作業です。
人間の耳は1対多の音量比較より1対1の音量比較の方が得意なようです。
以上の理由から基準となる音に対し、どの程度「大きい」もしくは「小さい」ということを判断基準に音を重ねていきます。ミックス時のモニター音量は前項で決定しているので、極力大きさは聴いて判断しましょう。
ドラム3点(Kick,Snare,HH)
ドラム3点で低域から高域までの骨組みを作るイメージでバランスを取ります。
◆Kick
まずはKickの音量を決めます。基準となる音はモニター音量を決めた際に使った「-20dBのピンクノイズ」です。
ピンクノイズのトラックを再生した状態で同時にKickを再生します。
Kickのフェーダーを一番下からゆっくりあげていくと最初はピンクノイズに隠れて聞こえなかったKickの音がだんだん聞こえ始めるはずです。ピンクノイズとKickの音量が聴感上イコールになったと思ったらフェーダーをそこで止めてください。
これが、対比して音量を決めるということです。
◆Snare
次はKickの音量を基準にSnareの音量を決めましょう。
ピンクノイズはミュートして問題ありません。
SnareはKickの音より少し小さくします。90〜95%くらいの聞こえ方を目指してください。
Kickを再生し、Snareのフェーダーをゆっくりあげます。まずはKickと同じ音量になるまで上げてください。そこから少し下げるとうまく音量が決まります。基準に揃えてから上げ下げするのがコツです。
◆HH(ハイハット)
HHはKickと同じ存在感にしましょう。
アンビエンス(空間)
◆Room
Roomはドラムを録音している部屋の響きを録音したものです。
対象物の目の前にマイクを置いて録るオンマイクと対でオフマイクと呼びます。
このトラックを重ねることによりドラムに生っぽさがでます。
オンマイクのSnareに対してRoomのSnareは小さくなるよう(6〜7割強くらい)に調節します。
Roomを足したことによりSnareが少し大きくなるので、オンマイクのSnareを下げて再度Kickとのバランスを取ります。
◆OverHead
OverHeadとはドラムを上方から狙ったマイクです。Roomよりはドラムに近い位置から録音しているのでCymbalが目立ちます。
OverHeadのCrashCymbalをハイハットより少し大きくします。
OverHeadを足したことによりハイハットが少し大きくなるので、ハイハットを下げ、再度Kickとバランスを取ります。
Tam
Tamの大きさはSnareに少し負けるくらいで調整してみましょう。
TamがSnareより大きいとフィルの後のSnareの印象が弱くなって迫力に欠けます。
皮モノ(Percussion)
基本はTamより小さく、Snareに近づくほどラテンのような賑やかさがでます。
振りモノ(Percussion)
ハイハット含め、手数が少ないものほど大きくしてみましょう。
Vocal
ドラム、パーカッションが整ったところで花形のVocalを乗せます。
Bassを先に重ねる人が多いように感じますが、私の癖として先にBassを乗せると必要以上に大きくしてしまいバランスを崩してしまうことが多いため、まずはVocalから重ね、その後Bassを重ねています。
よく「ボーカルの入るスペースを意識してミックスする」ということが言われますが、ウワモノを入れる前のこのタイミングでVocalを入れてしまえば、そこをあえて意識することなくミックスが進められます。
対比関係は図のとおりです。SnareよりVocalを大きくすると自然です。
Bass
Bassは音量上げ過ぎ注意です。上げたくなっちゃいます…が!
Snareと同じくらいの音量に基本的には留めましょう。
Chorus
Vocalに対して聴感上50%が目安。
小さい音量から徐々に上げて心地よいところで決めれば良いでしょう。
Vocalの音量に近づくほど派手になります。
Lead Gt(メロディライン)
ギターソロ等Vocalがないところで主旋律を担うため、聴感をVocalと揃えます。
Riff Gt(フレーズ)
リフが聴こえる程度にVocalより少し下げてあげましょう。
Piano(Chord)
Riff Gtの邪魔をせず、且楽曲全体に厚みを持たせるよう調節しましょう。
Acoustic Gt
コードを弾いている前提ですが、せっかくPianoがある想定なので後ろから支えるくらいの気持ちでちょい控えめに入れてバランスをみてください。
Pad
あまりPadの定義がはっきりしていない(ジャンルによって色々ある)のでここでは白玉系の長い音としますが、オルガンやシンセによくあるような感じのものだと思っていただければ良いです。
これは、「良く聴くと居るな」くらい控えめにいれて雰囲気がでればOKです。
最後に一曲を通して最後まで聴いてみましょう。
まとめ
お疲れさまでした!
モニターの音量設定からやったため予定よりだいぶ長くなってしまいましたがいかがだったでしょうか。
どんなにトラック数があっても1対1で比較して音を重ねていけば最終的にバランスの取れた形まで持っていけることを実感していただけたら幸いです。
好みのバランスや手順と違う!という方もいらっしゃるかと思いますが、ミックスに絶対の正解はないので、参考になりそうなところは取り入れてみてください。
次回は「パン振り」を予定しています。お楽しみに!!
以上、さっちーでした!!!
参照
「とーくばっく〜デジタル・スタジオの話〜 第3刷」 David Shimamoto著
「サウンドプロダクション入門 DAWの基礎と実践」 横川理彦 著
「音圧アップのためのDTMミキシング入門講座!」石田ごうき 著
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