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イメージできてる?〜コンプをかけると結局何が変わるのか〜【ミックス】

はじめに

コンプレッサー(以下コンプ)は一言で言えば文字通り音を「圧縮」するものです。
例えば歌やナレーションは一つのフレーズの中で声が大きくなったり小さくなったり音量にムラが出ることがあります。これは聞き辛さの要因の一つになり得るため、大きすぎる音を抑え、音量を一定にそろえるのがコンプの基本的役割です。
このコンプ、前回のEQと同じく初めのうちは変化や効果を感じづらくもあるので、今回は視覚的にもわかりやすいよう、Audio Compression VisualizerというWeb上のサービスを利用しつつ解説を進めていこうと思います。
最後にリンクも載せるので是非参考にしてください。

基本パラメータ

スレショルド(しきい値)

どれくらいの音量を「大きい」と判断し圧縮するかを指定する値です。
下図のグレーのラインがスレショルドを表し、左上のスライダーを左に動かすほどスレショルドは下がります。
このスレショルドを超えた音のみ圧縮されているのがわかると思います。
図中、青の範囲で示されているのが圧縮後の波形で、緑の波形は圧縮前の波形、上部の赤い範囲はリダクション量、つまりどれだけ圧縮されたかを示すものです。

スレショルド(しきい値)

レシオ(圧縮比)

レシオはスレショルドを超えた音をどれくらい圧縮するかを決めるものです。図では「2」と表されていますが、圧縮比なので正確には「2:1」であることを示しています。このように、右辺は1で固定なので図のように省いて記載されることも少なくありません。
レシオが2:1の場合はスレショルドを超えた音を(大体)1/2に抑えることを意味し、4:1なら1/4、6:1なら1/6に音量を抑えます。レシオを大きくすればより大きく圧縮されることになります。

レシオが2:1の場合

アタックタイム(アタック)

アタックタイム、それから次項目のリリースはコンプの時間変化に伴うかかり方の違いに関わるパラメータです。
乗り物を運転する際のブレーキを踏む反応速度をイメージすると良いかもしれません。
まずはアタックタイムを最速にした場合は以下のようになります。

アタックタイムが最速の場合

対して、アタックを最遅にした場合、圧縮を開始するポイントが後ろにずれます。

アタックタイムが最遅の場合

図の波形をスネアと仮定したとき、アタックタイムを最速にすると「バシっ!」っという叩いた瞬間のアタック音がグッと圧縮されるのに対し、
最遅に設定するとアタックの音はほぼそのまま残り余韻部分が抑えられ、アタックをより強調するような音になります。

リリースタイム(リリース)

リリースタイムは音を圧縮した後、圧縮がオフになり、元の音量に戻るまでの時間を設定します。
アタックがブレーキを踏む反応速度とすると、リリースはブレーキから足を離す力加減やスピードをイメージしてもらえるとわかりやすいかと思います。
リリースタイムはリズムのノリに変化をつけられるのが特徴です。
早ければ跳ねるような印象を与え、遅ければゆったりとした印象になりますが、早過ぎれば音量が急速に戻るためしゃくった印象になり(ポンピング)遅過ぎれば、圧縮したくない次のアタックまでコンプがかかってしまうということも起こります。
リリースの調整に悩んだ時は、リダクションメーターが戻る動きが曲のテンポに合うように調整すると良いでしょう。


最速リリース
最遅リリース

この場合リリースが速い方が余韻部分を大きく残すので響きも残り、リリースタイムが遅い方が余韻を抑えるのでタイトに聞こえます。

メイクアップゲイン(メイクアップ)

音を圧縮するということは相対的に音が小さくなることでもあるので、「コンプをかけた音はいいんだけど小さいな…」ということになることがあります。そんな時はメイクアップゲインを上げて調整することになります。
圧縮した波形の形はそのまま、音量を上げることになるので、一つの音の中での音量差が小さい分、肉厚に聴こえるこえるのがわかると思います。

調整前
調整後

コンプで何がしたいのか

音量の均一化

はじめにも書きましたが、歌でも朗読でもナレーションでも楽器でも、過度にワンフレーズの中に音量の大小があると大変聞き辛く、場合によっては手元で音量を調整しながら聴かなければならない(大袈裟に言ってます)こともあるかもしれません。それを「抑揚の範囲に収めつつ、聞きやすいようにする」
これがコンプの役目の一つです。

ノリを演出したい

アタックを強調したい、跳ねるようなノリを出したい、タイトに聴かせたい。これらは全て基本パラメータの調節によって印象を変化させることになります。

肉厚な音にしたい

アタックを潰しメイクアップゲインで音を上げれば、アタックを潰した分余韻も大きくなり肉厚な音に仕上がります。

アタック音と距離の関係

ミックスをしていて「この音目立つから音下げよう」とフェーダーを下げても「なんか浮いて聴こえるな…」と思うことはないでしょうか。それは、各トラックの空間を演出できていないからかもしれません。空間の演出と聞いてリバーブが思い浮かんだ方もいるかもしれませんが、それは空間演出の要素の一つに過ぎません。コンプを使ってマイクからの距離を演出してみましょう。なぜコンプを用いてマイクからの距離を演出できるか。それは音の減衰に以下のような性質があるからです。

音の減衰

表を見ると高い音ほど空気の影響を受け吸音されることがわかります。また、高い音と低い音では高い音の方がエネルギーが小さいのでより減衰します。

EQでハイを削ったり、アタックをコンプで抑えることにより、吸音された丸みのある音を演出することができます。
聴き手に近い音は、大きく・はっきりしていて・リバーブが少ない。
聴き手から遠い音は、小さく・丸みがあり・リバーブが多い。
音の大小はフェーダーやプラグインのアウトプットゲイン等、音の丸みはEQのハイカットやコンプによるアタックの潰し具合、リバーブについては次回取り上げますが、こう言った調整を駆使し、楽器やボーカルが同じ空間で鳴っていることを演出する(音をなじませる)ためにもコンプを使います。

まとめ

今回、コンプとはなんなのか、どんな目的のために使うのかということを書いてきましたが、音を圧縮するということはそれだけダイナミクスが失われるということです。私個人としては、「分からずになんとなくかけるくらいならかけない方が良い」と考えています。
ミックスのどの段階にも言えることですが、目的がはっきりせずに行われる”処理”はいたずらに音を破壊しかねません。ご自身でミックスしながら「必要がない」「かけてみたけどわからない」と判断したら「コンプをかけない」「下手に触らない」勇気も必要だと考えています。
次回は「空間演出」「リバーブ」あたりをテーマにしたいと考えています。

以上、さっちーでした!

参考

ツール

Audio Compression Visualizer

https://codepen.io/animalsnacks/full/VRweeb

書籍

『スグに使えるコンプ・レシピ DAWユーザー必携の楽器別セッティング集』早乙女正雄 著

動画

Web



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