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原子時計


概要

 一般的な時計は水晶振動子の振動周波数(例:32,768 Hz)を利用して1秒間という時間を測定しています。水晶振動子は1秒間に32678回振動するため1振動の時間的な刻み幅が約3usとなるため、高精度で1秒間を測定することが可能になります。
 原子時計の振動周波数は約9THz(周期にすると0.1ps)となるため、単純計算では水晶振動子よりも6桁以上の精度で1秒間を測定することができます。逆に言うと原子時計をはじめとした超高精度時計を使用し、1秒間という長さが定義されることもあります。

9THz周波数信号の時間的な変化

原子時計の種類

マイクロ波時計

 マイクロ波時計は、原子を構成する電子配置のエネルギー準位間を利用した高精度時計です。基底状態と励起状態のエネルギー差(周波数差)は極めて正確であり、このエネルギー差に相当するマイクロ波の周波数を利用することで高精度な時計を実現することができます。現在はアンモニアやセシウム、ルビジウムといった原子(分子)時計が用いられており、特にセシウム原子を用いたマイクロ波時計を基準として1秒間の長さが定義されております。


セシウム原子時計の展示品

光格子時計

 特定波長のレーザーを用いた光格子(卵パック容器のようなもの)に原子を捕捉させることで、上記のエネルギー準位間の周波数差をさらに小さくすることが可能となります。日本では東京大学の香取教授がストロンチウム原子を用いた光格子時計の研究開発に取り組んでおります。

光格子時計

応用先

 主な応用分野として、GPS、金融、科学研究で活用されております。

  • GPS:GPSにて正確な位置情報を計算するためには、衛星から発信される電波の到達時間を正しく計測する必要があるため、GPS衛星には非常に高精度な原子時計が搭載されています。

  • 金融:金融取引においては、取引システムにおける取引時のタイムスタンプを付与するために原子時計が使用されています。複数間の取引システム間での取引の整合性を担保するためにも正確な時刻情報が重要となります。

  • 科学研究:アインシュタインの相対性理論の検証に役立つと期待されています。実際、地表高度差(重力ポテンシャル差)によって生じる時間の微妙な遅れを計測することに成功しております。

参考


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