ウミウシクエスト 〈城ヶ島〉
(2020年8月)
三浦半島の先端、城ヶ島で潜った。三浦マラソンで駆け抜けたことはあったが、ダイビングは初めてである。今回は楽しみなことがいくつかあった。
今回のダイビングが楽しみだった理由
小麦色の笑顔が眩しい里佳さんだ。バリでは〝謎の1万本ダイバー〟としてマンボウをグイグイと追いかけていらした。激流の中でのマンボウチェイスに疲弊した私が思わず「ウミウシに会いたい」とこぼしたところ、「城ヶ島に来たら」と誘ってくれた。幼稚園の先生のかたわら、休日はガイドをしているというのだ。
リングライトである。
私はTG4を愛用しているのだが、ライティングはお金持ちの友人ダイバーKGさんから譲り受けたストロボ1灯スタイルだ。少し距離がある場合には抜群の威力を発揮するのだが、ウミウシなどを寄り寄りの顕微鏡モードで撮る際は光がうまく当たらず、やぶれかぶれにライトを併用していた。そこで勧められたのがこれ。一気に心強くなったと同時に、カメラの見た目もランクアップした。
サイパンで知り合った方が手掛けるシリーズで、カクレクマノミ柄やナンヨウハギ柄などダイバー心をくすぐるデザインの数々。迷って迷ってチンアナゴにした。こんな人、見たことない。先取り感にワクワクする。
そして当日
集合時間は8:45。講習の学生さんや他のショップのお客さんなどで賑わっている。里佳さんとの再会を果たし、申込書を記入すると、ブリーフィングが始まった。
立体模型が出てきた。わかりやすい。エントリー後に「あれ、そういえばブリーフィングしたっけか?」と思うこともあるぐらいなので、丁寧な説明だ。透明度は悪いだろうから、あらかじめ地形がわかると安心する。
1本目 10:25 岩骨
さていよいよ出航だ。ポイントまでは5分程度なので、タンクを背負ってボートに乗る。
エントリー直後はまるでヌサペニダのごとく流れていた。ただヌサペニダと違って潜降ロープがあるので楽ちんだ。ただヌサペニダと違って透明度が悪いのでロープがなければ絶望しそうだ。なんせ2mも見えない。プランクトンが走馬灯のように流れてくる。上がってるんだか下がってるんだか分からない中20m近くまで潜ると、急に水温が下がり透視度が上がった。視界的には安心したが、寒さ的には不安が増した。水温16.6℃。私のウエットスーツでの最低記録更新だ。ダイビングは常にトレードオフ…なのか。
まずは水深29mあたりでバルスイバラモエビに会った。〝エビの女王〟と言われるらしい。通常は水深50〜60mに生息するそうなので、貴重な出会いである。言われてみればそこはかとない気品を感じる。
このあとはウミウシ祭り。
キイボキヌハダウミウシは、可憐な見た目に反し、ウミウシを捕食するらしい。怖すぎる。食いしん坊でも共食いはやりすぎだ。
どことなくアンニュイなサクラミノウミウシ。
ミヤコウミウシ。色遣いはわりと好みだが、やや装飾が多すぎるのではないか。
いつ見ても優雅なムラサキウミコチョウ。名前の通り胡蝶蘭のようだ。
雪見だいふく風の、シラユキモドキ。
サガミリュウグウウミウシ。おしゃれな気もするが、私ならこの柄の服は買わないかな、と思った。
オレンジ色のベニカエルアンコウもいた。前歯が気になりしばらく見つめ合った。差し歯が取れてしまったおじさんを彷彿とさせる。
それはそうと、ヒラタエイがそこらじゅうにいたが、ダイブ中一言も触れられなかった。エイも場所と種類と出没頻度によってはスルーされるのだな、と学んだ。
2本目 へいぶ根 12:48
2本目も濁った浅場からの視界が開けてヒヤッとする感じは同じだ。それにしてもより寒く感じる。震えと尿意に耐えながらウミウシを探した。血管が浮いたようなサラサウミウシ。進撃の巨人を思い出す。
キャラメルウミウシ。程よい色遣い。おしゃれ上級者であろう。
サキシマミノウミウシ。潮に揺られて健気な印象を受けた。
ヒロウミウシ。ウミウシ研究をされていた昭和天皇から名付けられたのだと、城ヶ島マスターのナトさんという方が教えてくれた。ヒロシという日本人が発見したのかなと勝手に思っていたのだが、大間違いであった。ありがたみが倍増する。
わりと定番のオルトマンワラエビ。いつ見ても蜘蛛感。
ハナタツはずっと下を向いていたので目が合わなかった。残念。
みんなのアイドル、ミナミハコフグも登場。
アフターダイブ
今日のダイビングは2本で終了。器材を洗って着替えた後は、隣のしぶき亭でダイバー定食をいただいた。「ダイバーです」と自己申告するだけで、おかずやソフトクリームをサービスしてくれる。
そして山春商店でカマスとアジの干物、里佳さんおすすめの塩辛を買った。
都心から1.5時間でこの充実。パーフェクトな休日であった。城ヶ島はとてもいいところだ。