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㉙ 悪行三昧の終着 上田主税(18)

事件

事件は昭和33年2月18日白昼、北海道稚内の農家で二女(16)と姪(26)が殺されているのを作業から戻った主人と長男が発見した。
二女には乱暴された形跡があり首を絞められて殺害され、姪は斧やナタで頭を殴られて即死状態だった。
家からは金品がなくなっており、この家の雇われ人の上田主税(18)の姿が見えずに、有力容疑者としてすぐに手配された。
【昭和33年2月19日北海道新聞】

手配された上田主税

上田は父親は戦地に赴き、母親を早くに亡くし、九州や四国、横浜や千葉などを転々とし各地で窃盗を繰り返し北海道に流れ着き被害者方で農業の手伝いをしていた。
周囲には「悪いことをしてきたが、うまくごまかし警察に捕まらなかった」と話をしていたという(実際には窃盗での少年院歴があるが)
事件では二女に関係を迫ったが拒否されたために乱暴のうえ殺害し、たまたま仕事から帰宅した姪に見つかったために発覚を恐れて殺害し逃走していた。
【昭和33年2月19日北海道新聞】【刑資197】

警察に追い詰められ自決を試みる

上田は事件後の19日朝6時すぎに同市内をうろついていた所を農家の姉弟とバッタリあい、にこりと挨拶をして立ち去ったが『主税』という名の入ったシャツを見て、事件を聞いていた姉弟がびっくりして警察に通報し、三人の署員が周囲を捜索し山林で上田を発見。追い詰めたが盗んでいた猟銃の弾を空缶に入れて火をつけ爆発させて自殺をはかり全治一週間の火傷を負い逮捕された。
【昭和33年2月20日北海道新聞夕】

季節労働者の問題

北海道では春になるに前に例年、沢山の季節労働者を雇い入れていた。上田もその一人で年齢もはっきりしない流しの労務者だった。これまでも身元のよくわからない者を受け入れていたが、今回の事件で大きなショックを受けた農漁業には身元を調べるなどの対策をすることを余儀なくされた。

北海道新聞58.2.19

裁判

強盗殺人1、強姦致死1
昭和33年9月3日 旭川地裁 死刑
昭和34年3月24日 札幌高裁 控訴棄却
昭和35年3月15日 最高裁上告棄却
【集刑37巻6号】【昭和33年9月4日北海道新聞】
【昭和35年3月15日北海道新聞夕】

上告趣意書には少年法や死刑制度の問題点の他に敗戦後の貧困という生育環境が影響してる点、精神鑑定が行われなかった点などが書かれていたが棄却された。
【集刑132】

※上田の死刑執行日は不明





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