少年死刑囚の生育環境
生育環境に問題があると非行少年になりやすい傾向があることは少年犯罪ではよく言われる事だが、手持ちの少年死刑囚の資料の中から生い立ちに関して記載があった者は44人中38人だった。
ここではその38人を「父親がいない」「母親がいない」「両親がいない」「両親共いる」という4つのケースに分けてそれぞれで何人かの少年を取り上げて書き記した。
尚、「家庭環境が悪くても立派に自立する少年もいるから本人の問題だ」的な意見もあるだろうが、0か100の話になってしまうし、実際に38人中24人がどちらかの親がいない、両親がいた14人もしつけという名の虐待や極端な放任主義など9割の少年に何らかしらの問題があったことが確認された。
シングルマザーに偏見を持たせる意図はないことも付け加えておく。
父親がいないケース15人
【遠藤進】
父母の仲が悪く、父親は家族を残し東北で仕事。仕送りなどもなし。
残された母や兄弟は東京のバラック小屋で極貧の生活をしていた。父を求めて東北に一人で行った際に凶行
【関光彦】
父親のDVで両親は離婚し、祖父や母から生活費を出してもらい一人暮らし。母は証券関連の会社の役員で一時期羽振りがよくバイクなどを買い与えていた。
(光彦の家庭内暴力から逃げるためであったようだ)
【笹沼充男】
父が愛人を作り失踪。母親も他の男と同棲し、充男を放置し極貧の中で育つ(実母は情状証人としての出廷を拒否)
【山田秀則】
11歳の時に父親が死去。女遊びで淋病になり、そのことを母親には相談できずに治療費目当てで強盗殺人。
【山野井鴻志】
父親がいない家庭に育ち母親は生活費を稼ぐだけで精一杯で全く子供の面倒を見ず。放任され母親の愛情を受けずに育つ
【松井永明】
永明は父と愛人との子。愛人の元で育つがやがて仕送りなどもなくなり離別。逮捕時に実父に「ざまぁみろといいたい」と答えていた。
幼少期に近所の中年女に性的なイタズラをされた事がトラウマとなる。
【芳我匡由(河渕)】
父が元暴力団関係者。母も乱れた生活で家事などをほとんどせずに遊び歩いていた。
母親がいないケース6人
【安斎金蔵】
2歳で養子に出され、9歳の時に養母が死去。その後、父親の再婚で邪魔物扱いされて冷遇され、学校にも行かせてもらえずに農作業を朝から晩まで休みなく強制されて、それが嫌で家出し非行を繰り返し少年院へ
そこで知り合った15歳の共犯者に「未成年は罪が軽い」と強盗殺人を持ちかけ、裁判長に「光を見いだせない」とまで言わせるほど性格が歪んでしまった。
【小林正人】
母は正人を出産後に急死。父の弟夫婦へ預けられたが、養母の兄弟に暴力団関係者が複数いるという環境で育つ。
【上田主税】
父は出征し、一時期愛児園に入れられたが、復員後に引き取られその後母が急死。父からは邪魔物扱いされて冷遇されるようになり家出し、各地を住み込みで働きながら放浪
【大久保公文】
3歳で母親と死別し、非行少年になり少年院へ。そこで同じように5歳で父を亡くした吉井と境遇が似ていたことで意気投合し、出所後に強殺
【大月孝行(福田)】
父親のDV。母親の自殺。父親の再婚
両親ともいないケース3人
【坂本登】
父親は戦死。母親も病気で死別。残された弟と妹を一人で見なければならなくなったが、妹も栄養失調で亡くなった。先が見えない中で後に連続殺人を犯す古谷惣吉と出会う。
【井戸八郎】
両親と死別し、兄夫婦の元に弟と居候。
仕事はしていたが、酒を覚えて昼間から泥酔
両親ともいるケース14人
【菅野純雄】
多忙な両親で子育てを殆どせずに、祖父に任せきり。
唯一の理解者の祖父の死後も変わらずに放任されて、引きこもりがちになる
【宗岡省吾】
父が元軍人で母は厳しい倹約家で暴力もある家庭環境だった。同僚の女性を妊娠させた事で激しい叱責があり殺意が芽生えた。
【平徹雄】
父親が事業失敗し、しつけが厳しく虐待もあった。
馴染みの交番で『愛情論』について警察官と語り合う(この警察官を毒殺して拳銃を奪った)
【李珍宇】
父は昼間から酒を飲むアル中で事件後も「人殺しくらいで…」などと言うような性格。母は日本語が不自由。
以上がケースごとに簡素にまとめたものになるが、私の感覚で特に環境に問題なさそうな少年は3~4人だけと感じたが、どう感じるかは人それぞれだと思うので少しでも考察のお役に立てればと思う。
子は親や環境を選べない
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