大阪オリオンホテル事件 E子(19)
昭和29年5月23日、大阪ミナミのオリオンホテルで三角関係のもつれから若い男が殺害された事件で二日後に逮捕された当時19歳の少女と愛人に無期懲役が求刑された事件についての記事になります。
事件
E子(19)と殺害されたS(24)は婚約関係にあった。
あったのだが、E子はもう一人の男I(33)とも関係を持っていた。
事件前日の22日にも逢引し、Iから「三角関係に耐えられない」と言われていた。IはなんとかE子を自分だけのものにしたかったし、板ばさみのE子が悩んでいてSよりもIに気持ちが向いていたというのが事件前の状況だだと思われるが、その後言った言わないで裁判でもお互いの主張が食い違う事になる。
どちらが嘘をついているのか?
先出の通り5月23日夕方にSとE子はオリオンホテルに泊まり、その際にE子が「避妊薬だから飲んで」と青酸カリをSに飲ませ、Sは苦しみながらまもなく死亡し、身の回りのものや靴のネームも剥ぎ取られた状態で発見され、翌日に出頭したE子は最初は否認していたが、まもなく毒殺したことを認めた。
その際に「Iから責任のあることをやれ。会社に青酸カリがあるだろうとそそのかされたので実行した」と自供したためにIも共犯として逮捕され殺人罪で起訴された。
Iは終始、事実無根と主張
E子は前日22日にIと会った際に「この中に青酸カリを入れて飲ませれば…」とポケットから出したウイスキーの小瓶をちらつかせたので、イラっとしIの頬をはたき、少し揉めて瓶を堀に投げ捨てたと自供したが、堀を調べたが物証は見つからずにIが共謀してるかはE子の自供しかないという状況であった。
求刑は二人に無期も判決は…
あれだけ相思相愛だったのに「E子は虚言癖がある」「Iは嘘つきだ」と法廷では醜い争いが展開されたが、昭和32年1月30日に大阪地裁でE子は心神耗弱状態とされ懲役7年の判決(未決清算900日)、Iは証拠がないとして無罪の判決が言い渡された。
地裁の判決要旨
E子
当時若年の少女が板ばさみになり、睡眠不足や生理などの体の不調もあった。
犯行の動機にSさんに対する貞操防御があった。
故人の冥福を祈り信仰の道に入っている。
I
殺害を企てるほどの異常な嫉妬心や復讐心はなく当時の行動も普通、自発的に警察に出頭している。(Sの本当の名前を知ったのはSの死後でそれまではMと聞いていた)
大阪高裁
昭和34年3月27日
前日にE子とIが会ったのは30分だけだった事、「Sと婚約解消してほしい」と言っただけだった事、E子には虚言癖が認められるが(供述では他にも辻褄が合わない証言をしている)、精神異常ではなく計画的とされ、E子には一審破棄で懲役10年の判決。Iは二審でも無罪だった。
二人は公判ではとなり同士に座ったが目も合わせずに判決を聞き入り、言い渡しの瞬間にE子は「ワッ」となりハンカチで顔を覆ったが、Iは何かの物語でも聞くように静かに聞いていた。
※E子の弁護人は上告の手続きを行ったが、その後は不明です。
【大阪新聞昭和31年4月15日】
【大阪新聞昭和32年1月7日と31日】
【大阪新聞昭和32年3月28日】
【いろごと裁判22話】
(資料提供:折原臨也リサーチエージェンシー様)