動いたからこそ見えた、地域との関わり方【さすかるインターン生・中山杏奈さんインタビュー】
2022年6月、福島県いわき市で産声をあげた「さすかる」。
さすかるは、地域活動において個別的になりがちな分野や領域に横串をさし、地域のさまざまなひと・もの・ことをかけ合わせ、新たな価値や文化を持続可能な形で構築していくことを目的に結成された編集チームです。
昨年夏、寺澤亜沙加・前野有咲が中心となり、さすかるの最初の事業として、領域横断型インターンシッププログラム「さすかるインターン」を実施しました。各地から7名のインターン生がいわきに集まり、8月〜9月の約1ヶ月半、各インターン先で自分と地域に向き合いながら活動に取り組みました。
初代さすかるインターン生の7名は、いわきで何を体験し、どんなことを感じたのか。インターン生一人ひとりに、「さすかるインターン」を通して得た学び、参加後の変化について伺ったインタビュー記事をご紹介します。
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今回紹介するのは、Guesthouse & Kitchen Haceインターン生の中山杏奈さんです。福島市の出身の中山さんは、東日本国際大学への進学をきっかけにいわきにやってきました。まちづくりやコミュニティスペースの運用に興味があり、Haceでは、空き家活用の事業アイディアを考えるインターンに取り組みました。進路を考える中で、インターンを通じて自分が地域にどのように関わりたいかを見つめなおせたといいます。
地域に貢献できる手段を模索する
高校生の頃に新聞部に所属し、浜通りに取材に行ったのをきっかけに、復興学やまちづくりに興味をもちはじめました。東日本国際大学への進学後は、地域活性のゼミに所属し、いわきの田人をフィールドに地元の方の話を聞いたり、お祭りに参加したりと、地域に定期的に関わっていました。また、休日や授業がない日は、いわき市内のカフェをめぐるなど、ゼミの活動やカフェを通じていわきの魅力を知ることが多かったと思います。
ある日、あまり行かない海辺のカフェに行ってみようと、折戸にある「月見亭」を訪れました。席からちょうど海が見渡せて、一息つける素敵なカフェ。これが月見亭に抱いた印象でした。もっとお店について知りたいと思い調べてみると、もともとここが空き家だったことを知りました。
地元の人が集まれる交流スペースやコミュニティスペースを作りたいと思っていたため、リノベーションの段階から、いろんな人が関わっていた月見亭の事例はとても参考になりました。リノベーションや空き家活用についての知識を身につければ、将来自分がやっていきたい町おこしにも役立てられるのではないか。そう考えていた時にさすかるインターンで、Guesthouse & Kitchen Haceのインターンを見つけ、これはまさに自分がやりたいことにぴったりだと思いました。
当時大学3年生で進路について迷っていたタイミングだったので、地域に関わる仕事に就くのか、他の業界に進むのかなど、今後の働き方や暮らし方を具体的に考えたいと思ったのも、インターンの参加を決めた理由になりました。
自分と地域と向き合う
インターンの冒頭に参加した、いわきの各地をめぐる「いわき巡り」は、とても印象に残っています。特にいわきの「食」に対するイメージが変わりましたね。小川にある「ファーム白石」やいわき駅前のゲストハウス・GUESTHOUSE & LOUNGE FAROで、生産者や料理人の食に対する思いに触れて、食べ物と地域、風土は密接につながっているのだと改めて感じました。
大学進学を機にいわきに住みはじめて、食について知る機会が本当に少なかったことに気付かされました。大学の活動だけでは、どうしても活動範囲が限られてしまうため、いわき巡りのように各地をめぐって話を伺う体験は、学生にとってはとても貴重だったと思います。
Haceのインターンでは、空き家活用の事業計画書の作成を目標に掲げて取り組みました。自分の生い立ちと地域の強み、売り上げが見込めるのかなど、さまざまな観点をいったりきたりしながらコンセプトを考えました。途中、体調不良が続いてしまったため、インターン期間では、空き家活用のコンセプトを考えることを最終目標に取り組みました。
幼少期から恐竜やカフェが好きだったこと、湯本の地域資源である「化石」「石炭」を組み合わせて思いついたのが「化石カフェ」というアイディアです。具体的なサービスは考えられませんでしたが、一人のプレイヤーとして、いわきでどんなことを実現させたいかについて、真剣に向き合えた1ヶ月半だったと思います。
体調不良もあり、思うように活動できない時間が多かったことが悔やまれますね。しかし、限られた期間でどう時間を使っていくか、自分の体とどう向き合っていくか、スケジュールやマネジメントを考える機会にもなりました。社会人になっても必要なスキルだと思うので、コーディネーターや受け入れ企業の方など、もっと周囲とコミュニケーションをとることを心がけていきたいです。
これからは「IT」×「地域」で
今後の進路について、インターン終了後に私が出した答えは、いったん都内の会社に就職するという選択でした。地域活性に関するゼミとは別に、プログラミングを学ぶゼミにも所属していたので、IT企業にしぼって就職活動を行い、内定をいただくことができました。
さすかるインターンを通じて、現時点で自分には、地域で即戦力で活動していく力が備わっていないと自覚できたのも、選択を決める要因になりました。全然ネガティブなものではなく、これまで「町おこし」や「地域活性」を抽象的に考えていたフェーズから、どんな形で貢献していきたいのかを具体的に考えるフェーズに移行したのだと捉えています。
就職活動がひと段落し、現在は卒論に取り組んでいます。比較的時間ができた分、今後の地域との関わり方をゆっくり考えていきたいですね。今やりたいと構想しているのは、子どもたちにプログラミングを教える教室です。やっぱり、これまで長く続けてきたのが地域と関わることだったので、今後もこの軸を大切に活動していきたいと思います。