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ピンクのゴム手袋の女の子

王家衛の映画。90年代半ば。
「恋する惑星」と「天使の涙」
双子のような映画。

この映画が全然面白くない、何だかよくわからない、というひとはいると思う。
わたしもよく分からない。
でも、とても好きだ。

全方位から好かれたいと思わないわけじゃないけれど、一部のひとから熱烈に愛される。そういうのも悪くないと思う。

断片的に映像が流れる。
視点が次々に切り替わる。

気に入っている場面をいくつか。


パイナップルの缶詰を食べ続ける金城武が好きだ。
恋の賞味期限と缶詰。
「天使の涙」では、彼は、パイナップルの缶詰を食べ過ぎて口がきけなくなってしまった設定になっている。
彼が深夜にアイスクリームトラックをジャックする場面が何故か温かくて、すごく好きだ。
無理矢理アイスクリームを食べさせられている家族は、幸せそうに見える。皮肉な最後のひとことの真実は、切ない。

そして、男の家に勝手に上がり込み、模様替えしたりお掃除したり……ピンクのゴム手袋で踊るように動き回るフェイ・ウォンの可愛らしいこと!

よく考えたら、怪しいストーカー。
なのに愛らしい。

「天使の涙」では、ミシェル・リーが男の部屋に忍び込んで、ゴミをあさる。

ミシェル・リーがあまりにもきれいで、そこで行われる行為の虚しさと哀しさが、あまりにも切ない。
彼女は食事中もタバコを手放さない。
ひどいのに、品があって、困る。

どちらの女も、男たちの知らないところで、それを行う。男は気が付かない、あるいは少しの違和感だけが残る。一方通行の恋心。

現代なら、もっと別の手段で、こっそり相手に関わろうとするのかな?

わたしはだんだん古い感覚の人間になってきたのかな、と思うことがあります。
肌触りを確かめたい。

この映画は湿り気が肌に吸いついてくるような気がします。
湿っぽいビニールがまとわりつくような映像。

梅雨の明ける前に。

また観たいです。





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