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アブドゥルくんは存在しない!(誇張)
どうも、言語学サークル(一応)所属のさっさんと言います。古株なのに一度も記事を書いたことがなかったのですが、これを機にボチボチ書いていこうと思います。
さて、本題に移ります。ダラダラとXをいじっていたら、こんなポストが目に入りました。
インドから留学生のアブドゥルくんが入部しました!
— パワプロ 栄冠クロス公式 (@pawa_eikan573) March 5, 2024
なんだか見たことのない練習もありますよ・・・?#栄冠クロス #栄冠クロス0ꓸ5周年 pic.twitter.com/DlVBygKWVk
これ、アラビア語を学習している人にはめちゃくちゃ違和感があるんですが、皆さんは気付きましたか?
実は、「アブドゥルくん」なんて人は存在しません。
理由を以下で詳しく解説しますね。
アブドゥルってどういう意味?
まずは、アブドゥルって言葉の意味について触れましょう。
アブドゥルというワードはアブドとアルという二つの単語が合体しているので、一つずつ意味を紹介しますね。
アブドという言葉は直訳すると「下僕」「奴隷」といった意味になります。アブド・アッラー(アッラーの下僕、つまり敬虔な人)という形で人名に用いられるパターンが多いですね。あとはアブドアル=マリクとかは世界史で習った人もいるんじゃないでしょうか?
じゃあアルってなんなの?ってなると思いますが、アルはアラビア語の定冠詞です。英語でいうとTheに相当する言葉で、アルコールやアルカリのアルもこの定冠詞です。実はアラビア語由来だったんですね〜。
勘のいい読者の皆さんは気づいたと思いますが、アブドゥルという言葉には続きがないとおかしいんです。マキシマム・ザ・ホルモンがマキシマム・ザで終わってるようなもんなんです。コナミ(画像のアプリを運営している企業)にはアラビア語ができる人はいなかったんですかね...?
アラビア語の人名法則
ついでなので、アラビア語の人名法則についても触れちゃいましょう
皆さんが知っているアラビア語人名ってイブンとかムハンマドが名前に入ってることが多くないですか?あれにも実は理由があるんですよね。本筋からは離れてしまいますが、軽く解説します。
①イブンについて
イブンはアラビア語で息子という意味になります。つまり、イブン・ルシュドはルシュドさんの息子だし、イブン・バットゥータはバットゥータさんの息子だし、イブン・ハルドゥーンはハルドゥーンさんの息子です。これは雑学として語ってくれる先生も多いので、有名かもしれませんね。ちなみにですが、アブーは父親という意味です。アブー・バクルはバクルくんのお父さんってことだったんですね〜
②ムハンマドについて
ムハンマドが多い理由ですが、これはシンプルです。名前のバリエーションがめちゃくちゃ少ないからです。(もしかしたら種類も沢山あるのかもしれませんが、同じ名前の人はめちゃくちゃ多いです)
え、じゃあ名前が被って不便じゃないの?って思ったそこのあなた、正しいです。その為に、親の名前や子どもの名前、あと出身地や称号も名前に入れてしまうんですよね。
一つ例を挙げてみましょうか。
イブン・バットゥータは本名をシャムス・ウッディーン・アブー・アブドゥッラー・ムハンマド・イブン・アブドゥッラー・アッ=ラワーティー・アッ=タンジー・イブン・バットゥータといいます。長いですね...
これを一つずつ分解していくと、信仰の太陽である(称号部分です、敬虔な人って解釈しとけば大丈夫です)アブドゥッラーくんの父親で、ムハンマド(本名)というもので、アブドゥッラーの息子で、ラワート族で、タンジェの出身で、バットゥータの息子(この場合のバットゥータはお母さんらしいです)という意味になります。ここら辺も機会があれば別の記事でもっと掘り下げましょうか。
モハメド・アブドゥル
ここからも余談です。記事を書いている途中に知ったのですが、ジョジョの奇妙な冒険にはモハメド・アブドゥルという人物が登場するみたいですね。彼も後ろに名前が続かないとちょっと違和感のある名前になっちゃいますね...
ちなみに、モハメドはムハンマドを英語風に読んだときの音です。「蝶のように舞い、蜂のように刺す」でおなじみ(?)のモハメド・アリはアラビア語圏ではムハンマド・アリーと呼ばれているのでしょう。
p.s. アブドゥールさんなら居ます。あと、アブドゥルって名前で活動してる人ならいます。涼宮って実際には存在しない名字だけど、ペンネームとかでは使われてるみたいな感覚なんですかね?