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12話 副反応には気をつけろ/「リリーのすべて」感想


正直ワクチン副反応の威力には恐れ入った。

なんかもう体も痛いし頭も痛い
脱げば寒いし着れば暑い
歯を震わせ、汗をかき
2日間、ベッドから一歩も動けない寝たきり老人と化していた。

普段風邪もひかないし、インフルエンザにもかかったことのない私は
およそ10年ぶりの発熱(しかも39度)に狼狽えた。
こ、これが……熱…
とうつ伏せになって倒れていた。(背中が痛いから)

今回は熱が出ると事前にわかっているからよかったものの
これが突然訪れたらと思うと恐ろしい。
普段風邪とかひかない人間はなんてったって準備が悪い。
解熱剤も持っていないし、保冷剤も足りない
ポカリは1リットルじゃ足りなかった。

何が食べたくなるかわからなくて
パンとか買ってみたけど食べれなかったし
冷蔵庫を開けてブロッコリーが見えたときは2日前の自分にイラッとした。

本番は(本番?)必ずウイダーを用意すると心に決めた。
あ、ウイダーってウイダーって名前じゃなくなったの知ってる?

頭痛や筋肉痛などワクチンの後遺症(ワクチンの後遺症ってなんだ)が残る中、
自分の免疫の高さに感謝しつつ
ゴロゴロしながら鑑賞したのがエディレッドメイン主演の「リリーのすべて」だ。(なぜ)

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ネタバレ注意

【感想】
 実話をもとに書かれた小説「The Danish Girl」を映画にしたもの。トランスジェンダーという概念やそれに対する理解がない時代に、苦悩を抱えて生きる二人の美しい物語だった。というかエディ・レッドメインが美しすぎた。器の美しさもさることながら演技も繊細で、精神が不安定な人間の表現が非常に生々しく、引き込まれた。

 抑圧された女性性が心の中で沸き起こる描写が実にリアルで、もしや目を背けているだけで、多かれ少なかれ男性の誰しもが内包している欲望なのではないかと思える内容である。

 また愛する人が目の前にいながらそれを喪失するという、妻側の苦悩にも焦点を当て続けたのもよかった。自分を探し続ける儚いリリーの物語であると同時に、性に錯綜する夫を愛し、支え続けたゲルダの物語でもあったのだ。

 性自認や性的趣向が寛容的になった現代では逆に生み出せない作品であり、小説(映画)の文化的価値を感じた作品だった。読まれる物、売れる物を創ることに焦点がいきがちだが、現代を生きる自分にしか書けない創作物を心のままに手掛けたいと思わせてくれた。

【あらすじ】
 1926年デンマーク、コペンハーゲン。画家アイナーとその妻ゲルダは、子宝に恵まれないながらも幸せな日々を送っていた。

 ある日、ゲルダの肖像画の脚のモデルが急遽必要となりアイナーがそれを務めることに。女性用のストッキングに足を通し、バレエシューズを履き、チュールドレスを自分にあてがうと、アイナーは妙に心が惹きつけられた。

  その晩ワイシャツの下にキャミソールを着ている夫を見て、女装し“リリー”として舞踏会へ参加するよう持ち掛ける。アイナーはそこで出会った男と出掛けるようになり、ゲルダは当惑する。

  その頃ゲルダの描く女装したアイナーの絵が人気を博し、パリで個展を開くまでとなる。アイナーは自分を見失い医者に相談するが、初恋の相手との再会や、裸の女性を模倣するなど、パリでの生活はアイナーの中の“リリー”の存在を大きくしていくばかりだった。

 “リリー”は性転換手術により完全な自分を手にいれた直後、ゲルダの支えも虚しく死亡する。
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「いい映画だったァ〜〜」
「蠍も物語書けば?」
 ベッドに仰向けになる私の顔に、小さい私がよじ登ってきた。

「ほら、界隈では2000字のストーリーっていうコンテストが開催されてるんだよ」
 小さい私は全身でスマホを担いで持ち上げnoteのページを見せた。
「#2000字のドラマ、じゃん。適当なことを言うねあんたは」
「細かいことはどっちでもいいんだよ。若者の日常だってよ。得意でしょ。やろうよ」

 面白いと思ったことを強引に推し進める姿勢が自分にそっくりでため息が漏れる。
「明日ね」
「明日やろうはばかやろう、だぞ」

 小さい私はスマホをぐいと、私の鼻に押し当てた。
「ふがっ」

(続)


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