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ASEAN商標統計情報:マレーシア編
0. はじめに
今回はマレーシア商標の統計情報をお届けします。
1. 出願件数
1.1. 全出願件数
この項では2020年~2024年に出願された件数を紹介します。
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マレーシアでは商標案件が出願されると、公報が発行されるのを待つことなくASEAN IP REGISTER(以降AIRと呼びます)で情報が公開されるようです。しかし2024年に出願された案件数は、2023年出願数の70%程度にしか達していません。おそらくマドリッドルートで2024年に出願されが案件の収録にはタイムラグがあるものと思われます。
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1.2. 出願ルート
マレーシアでは2019/09/27にマドリッドプロトコルに加盟しています。AIRに収録された他国案件の多くでは、「Application Type」フィールド、あるいは「Application SubType」フィールドに登録された値により、直接出願とマドプロ出願を識別できます。しかしマレーシア案件は、「Application Type」フィールドには出願ルートを把握できる情報が含まれていません。また「Application SubType」フィールドには情報が一切入っていない状態であり、当国案件の出願ルートを明らかにすることができませんでした。
1.3. 産業分野別
各案件に付与されたニース分類コードを、「特許行政年次報告書2023年版/特許庁」で使用されている規則に則って6つの「産業分野」に分類し、「産業分野」別の出願件数推移をグラフ化しました。
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マレーシアでも、2020年~2024年の間に産業分野比率の大きな変化は見られません。
1.4. 内国出願・外国出願
出願人名の住所文字列に含まれる国名記号をもとに「出願人国籍」を判定し、マレーシア国籍の出願人が含まれる案件を内国出願案件とし、マレーシア以外の国籍の出願人が含まれる案件を外国出願案件として計数しました。マレーシア国籍出願人と非マレーシア国籍出願人による共同出願案件は、内国出願・外国出願の双方に集計されています。
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ASEANでは珍しく内国・外国比率がほぼ均等という結果です。2024年に外国比率が減少しているのは、マドリッドルート案件の収録が遅れていることが原因と推定され、期間が経過すると徐々に外国比率が高まるものと予測されます。
2. 出願人
2.1. 出願人国籍
2020年~2024年の全出願における出願人国籍上位10か国について、2020年~2024年の各年の比率をグラフ化しました。
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マレーシアでも中国のオレンジ色の扇が拡大を続けています。特に2024年出願案件にはマドリッドルート案件の収録が十分ではないと想定されるにも関わらず、2023年の中国籍出願比率を既に16%ほど上回りました。
2.2. 出願件数ランキング
2020年~2024年に出願された案件について、出願年ごとの件数上位出願人を名寄せし、一覧表にまとめました。
2.2.1 すべて
AIRに収録された全ての案件を母集団とし、2020年~2022年の各年に出願された件数が多い出願人をリストアップしました。
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内国人出願率が半数程度のマレーシアです。米国企業をはじめ、日中韓の企業もちらほらとランクインしています。
2.2.2. 産業分野:化学
化学分野に対応するニース分類が付与された案件だけを母集団として、前項同様に2020年~2022年の出願数上位をリストアップしました。
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2.2.3. 産業分野:食品
食品分野に対応するニース分類が付与された案件を集計しました。
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2022年の10位は、モロッコのムハンマド 6 世国王陛下による出願です。長年特許情報と携わってきましたが国王による出願を見たのは初めてです。
2.2.4. 産業分野:機械
続いて機械分野の出願数ランキングです。
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2.2.5. 産業分野:繊維雑貨
繊維雑貨分野の出願数ランキングです。
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2.2.6. 産業分野:産業役務
産業役務分野の出願数ランキングを紹介します。
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2.2.7. 産業分野:一般役務
6つの産業分野の最後です。一般役務分野のランキングです。
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2.2.8. 日本国籍出願人
日本国籍出願人を母集団としたランキングをご紹介します。
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このような会社がマレーシアでのビジネス展開に力を入れているようです。
3. 審査期間
2020年~2024年に登録された商標案件について、出願日から登録日までの経過期間をグラフ化しました。
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2020年には出願から2.4か月で登録まで至っていたにも関わらず、その後徐々に審査期間が延長され、2024年には出願から登録まで約18か月も経過するような状況になっています。
インドネシアでは保護期間の出願から10年を超過した際に、期間延長を認可した案件について「延長査定」日も「Registration Date」フィールドに登録していたため、出願から登録までの見かけの数字が伸びる現象が発生していました。しかしマレーシアでは10年ごとの件数ピークも確認されていません。2024年に登録された件数は2020年の登録件数の1.5倍に伸びるなど、何となくバックログ(審査滞貨)解消に向けて知財庁が頑張って審査している際の傾向と似ている気がします。
4. 登録率
4.1. すべて
2020年~2024年に出願されたすべての案件が、現時点でどの程度登録されているかの比率を調べました。
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2020年~2022年に出願された案件は、ほぼ審査が終了したものと思われます。この3年間は65%程度の登録率です。
4.2. 日本国籍
続いて日本国籍の出願人による案件だけを母集団として、登録率を調べてみました。
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登録された全件を対象としたときの登録率より、10%ほど高い数字で推移しています。2023年以降は出願数も減少していますが、これはマドリッドルート案件情報の収録のタイムラグが原因と思われます。
以上、マレーシアにおける商標の統計情報をご紹介しました。
アジア特許情報研究会/アイ・ピー・ファイン 中西 昌弘