使いたくも使われたくもない言葉【フレーズ】Permission denied(ジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト』)
文学にまつわる事件を解決する文学刑事シリーズより。政界も牛耳る軍事企業の介入により、主人公が上司から意に染まぬ命令を受ける場面。
知ってるけど使いたくないし、使われたくない言葉ってないだろうか。
私はある。例えば You're dismissed だ。
直訳すると「あなたは去らせられる」。この場に留まる必要はないことを伝える言葉で、「解散」とか「下がってよろしい」などと訳される。
この人を人とも思わないような超エラそうな感じは、日本人にはちょっと思いつかない言い回しだ。責任の所在を明らかにせず、議論の余地もない。
これに勝るとも劣らないフレーズを見つけた。それがこの Permission denied だ。
私は知らなかったが、IT関連の用語でもあって、セキュリティに引っかった時などに表示され、「権限がありません」と訳されるそうだ。ヒトが発するなら「却下する」だろうか。
しかし英語では却下する主体がなく、何が却下されたのかも、その理由も問題にされない。そのくらい絶大な権限が向こうにある感じがする。
日本語で超上から目線というと、「判決を言い渡す」とか「控えおろう!」とか「頭が高い」とかいろいろあるが、裁判官とか町奉行、暴れん坊将軍などが目に浮かぶ。コスプレと言ってもいいかも知れない。むしろコントだ。
しかし上の英語の2例は、有無を言わせない、血の通わない、冷徹なものを感じる。純粋な権力だ。美しくさえある。このニュアンスを訳出するのは本当にむつかしい。
うまく表現できないが、日本語と英語の間にある、何か根本的な違いが、そこにあるような気がする。