ジョークを分析し、おもしろい要素を抽出して消滅せしめ、おもしろくなくする試み【ジョーク】どこかで見た顔(ジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト』)
文学にまつわる事件を解決する文学刑事シリーズより。潜入捜査中のヴィクターが、正体を見破られそうになる場面である。
どこかで聞いたことがあるような、なつかしく、そしておもしろいジョークだ。
どこの国でも、どんな言語でも通用する普遍性もありそうだ。
なにがおもしろいのか、考えてみよう。
人は主に顔で他の人間を認識しているから、「どこかでお前に会ったことがある」という意味で「どこかでお前の顔を見た」と言うことができる。
とはいえ、顔だけが移動することはないから、「おれの顔は他の場所にあることはなく、常におれの頭についている」と言い返すことができる。
しかしながら、顔がついた肉体は移動できるから、他の場所で会っていない理由にはならない。
①顔は他者を認識するための有効な手立てだが、②顔=人間ではない。このズレがおかしみを生んでいるのだろうか。
だとすれば、個体認識できる要素を本体と分離することができれば、このジョークは成立しないことになるはずだ。ふたつ考えられる。①顔以外の要素で他の個体を認識できる、あるいは②顔だけが移動できる場合だ。
①の例 : 語り手が犬の場合
「どこかで嗅いだ匂いだな」
「そりゃそうさ、いつも散歩中にそこら辺でマーキングしてるからな」
うむ、ジョークとして成立していない。ちゃんとおもしろくない。
②の例 : ろくろ首(抜け首タイプ)
※ろくろ首は、首が伸びるタイプと、睡眠中などに首が胴体から離れて浮遊するタイプ(抜け首)が存在する。
「どこかで見た顔だな」
「……でしたっけね。覚えてないけど」
うむ、成立してない。ちゃんとおもしろくない。
以上、ジョークを分析し、おもしろい要素を抽出して消滅せしめ、おもしろくなくする試みであった。
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