昆虫図鑑がすきだったあの子_vol.5
Vol.1~4も併せて御覧ください!
____________________________________________________________________________
人生初の長期夏休みを迎える、1学期の修了式。
私は朝から誰もがみりゃわかるほどにご機嫌だった。
よく考えてみてほしい。学校の宿題はあれど、2ヵ月もの間、自由時間があ与えられるのだ。
普段学校にいては絶対に見ることのできない時間帯の教育番組を、誰に怒られるでもなく自由にみることができるし、
夏休みの宿題はあれど、締め切りまでめちゃくちゃ時間あるから、誰に急かされるでもなく自由に進めることができるし、
好きな友達といつもは平日1,2時間遊べたらいい方だが、誰に止められるでものなく夕方まで自由に遊ぶことができるのだ。
ただ、唯一悲しい点。それはワタルくんと9月になるまで会えないということだ。前回も伝えた通り、彼と私は物理的距離な問題で、低学年のうちは外で一緒に遊ぶことが厳しい。まぁ、仕方ない。夏休み明けに採れた昆虫の話を図鑑を見せてもらいながらでも聞こうかな、また2人で教室でおしゃべりしようかなと余裕綽々でいた。
修了式当日は、いつもの朝とは違い、友達と悠長に話す時間もない程あわただしい。
教室の大掃除をクラスごとで行い、そのあと全校集会にて修了式、最後に教室にて夏休みの宿題をぽ~んと配布され、午前中で、はい解散だ。
こんなタイトスケジュールなので、悠長に友達と話す時間はもちろん、ワタルくんがいる隣の教室に行くことすらできない状態のまま修了式を迎えた。
全校集会は、校長先生の記憶にも残らない小難しい話と他の先生の話す声が眠気をいざない頭の上下運動が止まらない。私の前に座っていた友達は上下運動が先生にバレて注意されている。何とか堪えなくては。
残るは先生からの重要な報告のみ。あぁ、これを乗り越えたら夏休み!
その気持ちの一心で頭を固定させようとしていたのも束の間、
「サカグチワタルくん」
と名前を呼ぶ声が聞こえた。
夢と現実の境目にいた私は、ヘッドバンキングをしている私にしびれをきらした先生が、私の好きな人を全校生徒をバラしたのではないか。その恐怖で一瞬でシャキッと目が覚めた。が、実際は違った。バラされてはいなかったのだが、その名が呼ばれた理由はもっと深刻だった。
「いま前に並んだ4名は、残念ですが本日で最後の登校日となります。夏休みが終わったら、別の学校に行くことになりますが、それぞれの場所で頑張ってくださいね。今までのありがとうとこれからのエールを込めて、4人に大きな拍手を送ってください!」
体育館には温かい拍手の波が起こる。周りの人びとは拍手が耳にこだまするが、私にとってそれは津波が襲い掛かる感覚に近かった。
最終日ってなに?
別の学校?どういうこと?
もう会えないってこと?
なんで言ってくれなかったんだろう?
夏休みが楽しみで仕方ない気持ちで迎えた1日が一変、整理しきれない情報量と戦う1日と化した瞬間だった。(続く:次回、最終回)
______________________
最終回vol.6は以下からご覧ください!