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いとこと朝まで話したこと

小さい頃きょうだいみたいに育ったいとこと、数年ぶりに泊まった。もう寝るかなとなってから2人で話し始めたら止まらなくて、朝まで話した。最後にこんなにたくさん話したのはもう10年近く前だった気がする。たくさん話したことを、未来で曖昧な記憶に溶かしたくないのでここに残しておく。

彼女は考えの強度こそ私と似ているけれど(きっと彼女の方が強いけれど)考える方向も選択も全然違う。経験してきたことも環境も違う。ただ昔から想像にふけるのが好きだったり、自分の考えを詰めるところだったり、人の考えを聞くことだったり、本を読むのが好きなところは、似ている。
考えの作り方、出し方、受け取り方が似ている人とは、話すのがとても楽しいなと私は思う。

彼女は言った
“理不尽に享受できない人がいる権利を自分だけ享受したくないし、結婚しているから一緒にいる2人よりいつでも離れられるけど一緒にいることを選び続けている2人の方が強いから結婚はしない”
“なぜ子供が欲しくないのかという問いは、わたしにとってなぜ卓球部に入らなかったか?なぜうどん屋にならなかったか?と同じような問い”
“結婚はしたくないけど、うどん屋を開くのが夢だった人がうどん屋を開いたらおめでとうと思うように、私もおめでとうと思う”
“結婚するしないも、子供を産む産まないも、それだけで世界を分けるのは違う。仕事をする、子育てをする、旅をする、音楽をする、スポーツをする、全部が同じくらいの強度な世の中になればいい”
“音楽を極めて音楽家になった人の「音楽がない人生は考えられない」と、子育てをした人の「子供のいない人生は考えられない」が並んだらいいのに”
“お墓参りに意味を感じてなかった。でもおばあちゃんと一緒にお墓参りに行くことは、おばあちゃんが安心して死ねることにつながると気づいてから必ず行くことにしてる”
“子供はいらないけどつけるならで名前は考えてある。晴、澄、清。私たち人間は弱いから、どうか取り巻く環境が美しくありますようにと。”
“いわゆる東京というものに、憧れがあった。そこで否応なく学歴主義に飲み込まれて苦しいこともあった。そこを今の彼に救われた”
“子を持たず結婚せず生きるとして、あと何十年も自分のために何をするのだろうと思うこともある。自分の見た目を磨いて何になるのだろうと。反対に子供を数人育てるより仕事で多くの人の目に触れるものを生み出すことに意味を感じることもある”

高学歴で、東京の大手会社で働き、独身派で子供はいらないと思っている彼女。

私は言った
“結婚も出産も恋人の有無も、本当は優劣なんかないのに、みんな自分の頑張ってきたものや居場所を肯定したいから他の否定をしてしまう”
“私は私だけを信じてる。環境がどうであれ、自分が自分を愛せて軸があれば幸せになれる。だから子供にもそういう意味の名前をつけた”
“全て自由だし個人の意見が1番大事。でも子供を産むか産まないかは、他のことをするしないと感覚が違う気がする。全生物に本能として組み込まれた生殖活動と生物としてプラスアルファである音楽活動では、生物としての取り組みやすさや自分ごとにやりやすさが全く違う”
“不妊や婚活で悩む人が多い世の中は、自然淘汰されるはずだった生命体まで救おうとする人類が産んだ歪みのように感じる。善悪の話ではなく。未熟児が多いのも、帝王切開が増えたのも、同じような感覚。弱い生命体が増えていて、自分もその一つかもしれないと思う。”
“身近な人を亡くした経験がある自分にとって、お墓参りに行くのは自分のため。どうしても息を引き取る瞬間が思い出されることが多いけど、お墓参りに行くとそこで思い出すのは必ず笑った故人。”
“私は結婚して子供もいるけど、自分が底にいる感覚になることもある。友達が自分のためにお金や時間を使って、華やかな場所にいるのが羨ましくなる。子供にお金も時間も使い、疲れた身なりのまま寝かしつけをする時間が辛いこともある。”

大学を出て公務員になり、20代前半で結婚してすぐ子供を2人産んだ私。

お互いに目から鱗を落としながら、「そうだね。難しいね。色んな視点を持つのが大事だよね」に全ての話題で着地した。
自分の人生は一つしかないから、本を読むんだよね。とも。起承転結に振り回されたかった学生時代から、心理描写や人の心の弱さ脆さを描いた物語が好きになったのも、きっと少し大人になったから。

これだけ色々な話ができるいとこがいるのは幸せだと思う。そして彼女が自分と全く違う色の人生を歩んでいることにも意味がある。
あの夜話したことを引っ張り出して、1人であれこれ考える時間は楽しい。

今彼女に聞きたいのは
“おばあちゃんが好きなのは分かったけど、おじいちゃんは好きなの?”(浅。笑)
“私にとっては「なぜ子供を持たないの?」という疑問は、ビーガンの人に「なぜビーガンになったのか?」と聞いてみたい気持ちに似ている。(いとこのビーガンへの見方はわからないけど)こう聞かれたらどう感じる?”
“うどん屋になる理由が無い状態で、大切な人があなたと一緒にうどん屋になりたいと懇願してきたらどうするのだろうと気になる。なる理由もならない理由もないのか、いざそうなるとならない理由が浮かんでくるのか、興味がある。”
“学歴主義に染まりかけて苦しかったあなたは、ルッキズムに対してどう思う?私は見た目のコンプレックスが多かった。それが今無くなったから生きやすい。でもその一連はルッキズムに基づいてるとも思う。人間が見た目にこだわってしまうのは何故なんだろう。全ての生命は生きているだけで美しいのに、なるべく整った見た目でありたいと思うのは何故なんだろうか。私はまだルッキズムを抜け出せない。”

相手を納得させる必要はない。でも、自分で自分の気持ちに納得がいく瞬間を、人と話すことが増やしてくれるなと感じた夜だった。

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