オーソリティとミレーレの合流点
オーソリティ(+2021年生まれの全妹)とミレーレは同牝系出身のオルフェーヴル産駒。共通する牝祖である Querida までを掘り下げてみたメモです。つらつらと眺めているうちに遠くにある Royal Sash 牝系との縁を感じたこともあって書きました。
それぞれの母たちは近い世代の父が異なっていますし、同じオルフェーヴル産駒であっても母が伝える資質は違って来るはずなので、産駒傾向の参考になるようなものでは全くもってありません。
ざっくり母同士を比べてみた感じでは Sadler's Wells と Nijinsky(と複数ラインの Nasrullah + Princequillo 血脈)を共通して持っています。もちろんオルフェーヴルが四代目に持つ Lt. Stevens が Sadler's Wells の 三代母 Thong と全兄妹であるという脈略は、この配合の大前提でもあります。
わかりやすい違いとしては、ロザリンドが Hail to Reason / Nancy From Nairobi が Mr. Prospector のクロスを持つあたりかもしれません。
16号族 Miss Agnes からの分岐で Plucky Liege を経由する名牝系で、多くのG1馬や名種牡馬を輩出しています。
Pia ⁃ GB (1964)
1967年の英オークス馬。本家優秀牝馬です。
六代母が Plucky Liege、五代母 Noor Jahan は Sir Gallahad = Bull Dog と同血きょうだいになります。
五代クロスは Gainsborough 5×5 のみで、3/4英 1/4独のアウトライン。
父 Darius ⁃ GB (1951)
2000ギニーやセントジェームズパレスステークスを勝ったマイル王者。英ダービーでは3着に入り、エクリプスステークスを制してますから中距離もこなせるだけの実力をみせました。
一見五代アウトのふんわり仕上げに見えますが《Rosy Legend ≒ Solario》が相似型になっている2×3があります。しかも Rosy Legend が持つ牝系ニアリークロスに含まれる血も反復しているところが特徴的です。
Rosy Legend は母系同士の《Golden Legend ≒ Purity》を軸としながら、簡単に図にするのは難しいほどの綿密なインブリードが敷かれています。
・七代母が Pocahontas な超名門牝系
・St. Serf / Bend Or は共に Stockwell と Thormanby 持ち
・Hermit は Whalebone 直系
彼女と Solario を並べてみると下記のようになります。
そして Darius 自身の三代母は Security。ここで Royal Sash と繋がります。こんなにもニアリー Sylko な彼の血がシーザリオを生みだした牝系に存在していて、日本で出会ったのです。
そんな Darius は超大胆血統構成の息子 Derring-Do が後を継いだりしてくれて High Top や Huntercombe[ハンターコム]などを送り出すもサイアーラインの継続には厳しいものがありました。母父に入れば Pia と並んで評される活躍馬 Pola Bella の系統などもあり、牝系に名を残しています。
母父 Neckar ⁃ GER (1948)
独血脈の典型《Aditi ≒ Alchimist ≒ Arjaman》のうち、ふたつを3×2で抱えていますね……というだけでは終わらない濃厚血統。また五代母が Catnip ということはつまり Nearco と同じ牝系出身の種牡馬です。
Principia ⁃ FR (1970)
Pia の娘 Principia は5戦して3勝の戦績が残っています。息子 Chief Singer が短距離からマイル路線で活躍して種牡馬入りしました。
Dark Legend 5×5 で、母に続いて Bay Ronald のクロス。そっと添えられている《Easton ≒ Rosy Legend》が目を惹きます。再びの名牝。
父 Le Fabuleux ⁃ FR (1961)
仏ダービ馬。
日本におきましてはなんといってもフジキセキ。ホットプレイとグレースランドの仔たち、メルヴェイユドールも大変お世話になりました。《Worden ≒ Le Fabuleux》の Wild Risk クロスは(大人しくなるわけではないにせよ)暴走列車化しないことが多いのでありがたい存在でございます。しかもステイゴールドとは共通点が多いのに Northern Dancer アウト、今後の世代におきましても何卒宜しくお願い申し上げます。
話が逸れましたが娘の Principia さん。
こちらは父の血統に加えて Satanella が牝系にいらっしゃるところが断然輝いておりまして Dictus さんが大喜びだと思うのです。
Querida ⁃ IRE (1975)
たくさんの仔に恵まれ、種牡馬や繁殖牝馬を複数輩出した Querida。同じく欧州血脈優勢の Royal Sash よりも20年近く手前で米血を取り入れ、次世代の娘たち Be Discreet と Kirov Premiere 其々の分岐から日本の活躍馬を生み出すことになります。
ここでは代が遠ざかってきた大事な牝祖を活用しています。
《Bull Dog = Noor Jahan》の4×7、その母 Plucky Liege は6*5×8です。さらに父と五代母 Satanella との関係では《Sun Princess ≒ Mahmoud》5×6になっており、《Halo ≒ Sir Ivor ≒ Drone》に共通することでお馴染み〈Turn-to と Mahmoud〉の組み合わせ。
父 Habitat ⁃ USA (1966)
良馬場のマイル王者 Habitat は、息子 Steel Heart からニホンピロウイナーそしてヤマニンゼファーまで続いた父系が示すように良質なスピードを伝えました。エピファネイアが《Kris S. ≒ Habitat》の2×4、スイートサルサの母は Habitat 3×4 ですから、彼を刺激した配合から活躍馬が出ています。
そこから先の配合を見るとスイートサルサはデュランダル産駒。
要は Sunday Silence + Northern Taste です。ということは母スイートハビタットにオルフェーヴルなんて最高なのではと思ったら、10年程前ステイゴールドの方が試されておりまして不受胎じゃないですか残念無念。その後ダイワメジャー産駒が生まれているし狙いはきっとそういうことだった気が。
エピファネイアと同血のロザリンドと Northern Taste を強調したオルフェーヴルからオーソリティが活躍してくれたのはなによりです。
最後にシーザリオの息子さんたち。続々と種牡馬になられていることもあり、母父側にオルフェーヴルやドリームジャーニーを持ってきてオーソリティを逆転したような構成も今後たくさん出てくるのでは。母母の血統も含め注目していきたいと思います。
エピファネイア産駒
#8-c
2019 Sugamo Sass to AUS (オーソリティと同血量)
│ 母 オルファン by Stay Gold
│ 母母 Oriental Art by Mejiro McQueen
│ 伯父 ドリームジャーニー, オルフェーヴル
#2-f
2020 牡 ナイツオブラウンド 3.6
│ 母 ウェストレー by Orfevre
│ 母母 Veil of Avalon ⁃ USA by Thunder Gulch ⁃ USA
│ 五代母 Highclere ~ Burghclere ~ Wind in Her Hair
#3-l
2021 牝 ブラッシュアップ
│ 母 ハーズシャドウ by Orfevre
│ 母母 アスピリンスノー by El Condor Pasa ⁃ USA
│ 三代母 Ski Paradise ⁃ USA
#1-u
2022 牡 血統登録
2024 3.27
│ 母 フィオレドーロ by Orfevre
│ 母母 レイカーラ
│ 三代母 Carla Power ⁃ GB
#9-h
2023 牝 4.2
│ 母 セウラサーリ by Orfevre
│ 母母 サマーナイトシティ by Helissio ⁃ FR
#6-a
2024 2.12
│ 母 ラッキーライラック by Orfevre
│ 母母 Lilacs and Lace ⁃ USA by Flower Alley ⁃ USA
#2-b
2024 2.10
│ 母 ロックディスタウン by Orfevre
│ 母母 ストレイキャット by Storm Cat ⁃ USA
#4-k
2024 2.4
│ 母 レッドラルジュ by Orfevre
│ 母母 Luxury ⁃ USA by Storm Cat ⁃ USA
リオンディーズ産駒
#9-f
2021 牡 ゾクチョウノアキ
│ 母 アルヘンティーノ by Orfevre
│ 母母 Evita Argentina ⁃ USA by Candy Ride ⁃ ARG
│ 牝系 The Apple ~ Colonial
#1-n
2021 牡 カズトシクン
│ 母 ルーレットクイーン by Dream Journey
│ 母母 ペレブラッサム by Dancing Brave ⁃ USA
│ 三代母 Hindostan 3×3
│ 牝系 Chelandry
#9-g
2023 牝 血統登録
│ 母 ヒガシドリーム by Dream Journey
│ 母母 シュガーハート by Sakura Bakushin O
#14-f
2024 3.16
│ 母 レスプロンディール by Orfevre
│ 母母 トワエモア by Empire Maker ⁃ USA
サートゥルナーリア産駒
#2-s
2022 牡 ショウヘイ
│ 母 オーロトラジェ by Orfevre
│ 母母 Musical Way ⁃ FR
│ 伯母 ミッキークイーン
#6-e
2023 牡 2.6
│ 母 アンドラステ by Orfevre
│ 母母 ヴァリディオル by Dynaformer ⁃ USA
#2-f
2023 牝 1.31
│ 母 クロンヌデトワール by Orfevre
│ 母母 Stars In Her Eyes ⁃ IRE by Woodman ⁃ USA
#14-f
2024 2.21
│ 母 キスオンザグリーン by Orfevre
│ 母母 Lolly For Dolly ⁃ IRE by Oratorio ⁃ IRE
#8-c
2024 2.10
│ 母 ショウナンナデシコ by Orfevre
│ 母母 ショウナンマオ by Daiwa Major
#9-h
2024 3.23
│ 母 セウラサーリ by Orfevre
│ 母母 サマーナイトシティ by Helissio ⁃ FR
母父リオンディーズ
#4-r
2023 牝 血統登録
│ 父 エポカドーロ
│ 母 ラヴドワンズ
│ 母母 ディアマイベイビー by Deep Impact
Chief Singer持ち牝馬
*Chief Singer 持ち牝馬とステイゴールド系種牡馬の配合おまけメモ。
#1-l
2021 牡 アルデドゥオーモ
│ 父 オルフェーヴル
│ 母 アルフィルク by Agnes Tachyon
│ 母母 タイキポーラ
│ 三代母の父 Chief Singer
#31
2015 ムーンライトナイト 3822.5
Halo 3×5
Northern Dancer 5×5
│ 父 ステイゴールド
│ 母 Pollen ⁃ IRE by Orpen ⁃ USA
│ 母母の父 Chief Singer
いちいち調べながら試行錯誤して書いていることが多いです。 新たに気が付くこともあるので加筆修正はわりとすると思います。 どこまで続けられるかは気力と体力と時間次第です。