Good Deal から再開 (Family#1-t)

下記頁からの続きです。

Good Deal (1932)

Apelle は Federico Tesio 氏の生産ということで、伊ダービーを勝った伊国産馬。ただし父系は Monarque から五代続けて仏国の馬です。

サイアーラインを辿ると Whalebone から Monarque に至っていますし、父母は Pocahontas 5×5、そもそも母が英国産馬ですから、代わり映えしたとまでは言い切れませんが……ドーバー海峡の向こう側から少しだけ風が吹いてきたようです。

父父 Sardanapale は仏ダービーやパリ大賞典を勝利。産駒を通じてその血を世界中に拡散しました。その父 Prestige を見てみれば16戦無敗の記録持ちなどとあり、なにやら錚々たる経歴が並んでいます。

Apelle の母系をみると母母 Seraphine から数えて五代母が地味だった母系を突如発展させた Seclusion 。Seraphine の代では Hermit を通じてファミリークロスの5×5となっています。母 Angelina はこの良血を評価されていたのですが受胎すらも難しくなかなか仔に恵まれませんでした。Apelle はその試練の中で産まれ、無事に育って活躍し、種牡馬として血を繋いだ唯一にして最大の孝行息子となります。

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Good Deal では 父 Apelle - 母 Weeds 間で下記が関連します。
St. Simon 4×3 - 5*4 → 5*4×5・6
Bend Or 5×5 - 4×5 → 6*6×5*6
Hampton 5×5 - 5 → 6*6×6
まだまだ主要系統まみれではありますが、それでも五代に限れば Weeds よりはすっきりしていて、牝系にしては珍しくわりと素直に種牡馬様からのお申し出を受け取った印象です。

戦績はこちらを見ると7戦して成績は不明も$20,131稼いだと出ているのですが、当時基準でどれくらいの活躍なのでしょう?後述する息子を確認するとニューダービー(第一次世界大戦により代替開催された英ダービー)を勝利しているのに$16,955です。(戦時中で賞金変動が大きかった?)

彼女が Apelle を迎えたことは、まさに "Good Deal" だったのではないかと思えて仕方ありません。数十年先の日本で Ribot(父母父 Apelle)や Soaring 牝系(母母父 Apelle)と出会うことになる未来がやってきたのですから。

Salecraft (1938)

この代まできても未だ第二次世界大戦すらはじまっていません。歴史。

Orpen (1928) 、なかなか強烈です。
Sundridge = Amphora3×3
しかも Amphora は彼の三代母ですから、ファミリーラインクロスの配合になります。でもまあ Glengowrie や Highland Lassie を経てきた Good Deal 陣営にとやかく言われる筋合いはないかもしれない。

全姉弟の母となる Sierra もエプソムダービー馬 Sainfoin の全妹という背景を持ち、Fair Trial や Sind の血統表を眺めてみれば《Sainfoin = Sierra》4×4 としてばっちり同血クロスが残っている名牝系っぷりです。

サイアーラインは Gainsborough - Solario からの流れですから長距離感があります。しかし母系にいる Sundridge はクラシックなんて見向きもせずに短距離路線を突っ走り、Sunstar や Lady Josephine の父となった名馬。血統内でここを強調している Orpen を迎えたあたり、スタミナたっぷりの Apelle から反転して、ばしっとスピードを入れてみせますよ!という意気込みが伝わ(ってくるような気がす)る展開です。

Salecraft ≒ Straight Deal

Salecraft には〈Solario - Good Deal〉が共通の3/4同血弟がいます。前述の活躍をみせて種牡馬となり産駒を残した Straight Deal (1940) です。

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うっすらとながらも《Salecraft  Straight Deal》姉弟クロスを含む活躍馬を探してみると、 Shady Heights[シエイデイハイツ]経由でヒシミラクルエポカドーロ、Judge Angelucci[ジヤツジアンジエルーチ]経由のショウナンバッハなどが見つかりました。

さらにこのニアリークロスを五代内に抱えた牝系馬もいます。

またステイゴールドと相性が良いことで知られる Bago[バゴ]の父母ライン五代目にいる Doutelle は〈父 Prince Chevalier 母父 Straight Deal〉の構成です。ということで《Salecraft ≒ Straight Deal》だけではなく、Salecraft の孫娘 Sash of Honour との3/4相似で脈略しています。

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Brave Deal

Salecraft の半妹 Brave Deal (1941) が産んだ娘 Royal Deal[ローヤルデイール]は一足先に日本に渡り、シービークロスの三代母となっています。(たまに Royal Sash 持ち種牡馬 × タマモクロス持ち牝馬で Good Deal クロスなんて仔を見掛けることも )Brave Deal の別ラインにはヒコーキグモの名前もあったりしますし、ダーレー・ジャパン・ファームではボーダレスブルーロゼット姉妹が繁殖牝馬として繋養中です。

Sylko (1948)

再び Federico Tesio 氏。泣く子も黙る Nearco (1935) が登場です。
生涯無敗の名馬。父系が繁栄しまくって経由していないところを探す方が難しい。偉大です。むしろ偉大すぎるところが困りもの。それを産駒経由ではなく直接父に迎えてしまいました。彼がトップ種牡馬となった年の種付で期待値の高さが伺えます。Straight Deal が頑張って走ったおかげかな。

Nearco は St. Simon 5*4×4・5 。ようやく五代から脱出しそうになっていた St. Simon が踏みとどまりました。仕方ありません。彼は偉大中の偉大すぎて伝説を生んだ種牡馬の首長ですから。

それはそうとして久しぶりに名牝馬のクロスが出現します。この先に待つ後継馬たちの血統でも嫌というほど登場することになる超名牝です。

Canterbury Pilgrim

Canterbury Pilgrim (1893)
父 Tristan
母 Pilgrimage
彼女には Dandelion あたりでさらっと触れていた Banter 5×5があり、さらに彼女の仔《Touchstone ≒ Jocose》がかなり相似の4×4です。

エプソムオークスを制した Canterbury Pilgrim は、産み落とした三頭の牡馬のうち Chaucer と Swynford の二頭を通じて大きな影響力を手に入れます。( 残りの一頭で Swynford 全弟 Harry of Hereford も War Admiral の母母父としてお見掛けします)ちなみに Chaucer は Pocahontas 4×5 ですね。なるほど進めども進めども時空を戻されるこの感覚。

下記のように Sylko においては四代目に配された Chaucer と Swynford の組み合わせ、かの Lady Angela の血統表では三代目に並んでおります。この先に来たるべき Northern Taste との出会いに向けて万端整えていたと言っても差し支えないでしょう。

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Marjorie Castle

Sylko の半妹 Marjorie Castle (1947) は息子 Biscayne が愛セントレジャーを勝利して種牡馬に。半弟 Rolling Rock (1951) に至りましてはどうやら未出走のまま(?)種牡馬になったようですが……その先までは不明です。

Sash of Honour (1957)

イタリアの名馬に続きましては、フランスの騎士がふらりと訪れました。
父 Prince Chevalier (1943) 。

Princequillo や Prince Bio と並ぶ Prince Rose (1928) の後継者筆頭三銃士です。Prince Rose は英国産ながら(競馬が盛んではない)ベルギーの調教馬。現在に至るまで唯一無二、他国の一流馬と渡り合ったことで名声を得ました。無事に種牡馬となりステイヤーの資質を伝えて結果を出していたさなか、第二次世界大戦の波に攫われてしまいます。

孝行息子の Prince Chevalier は仏ダービー馬かつ種牡馬としても仏リーディングを獲得。辿ってみると日本二冠馬コダマや春秋グランプリ制覇の逃げ馬代表メジロパーマーの名を見つけることができます。

代表産駒となった Charlottesville は、母父が Nearco なので Sash of Honour と3/4同血です。だいぶ先の世代ですが Ballet Queen[バレークイーン]や Manfath[マンファス]を経由して知り合います。彼の四代母である Simone は Rabelais の全妹で、この同血は Dictus[デイクタス]が抱えていたりするので気になってしまう存在です。

Prince Chevalier の五代母 Saint Astra は フランスの名馬 Asterus の母母でもあり、これまた Dictus と所縁を持つ血です。 さらに Asterus は《Durban = Heldifann》でお馴染み Djeddah の母父として Teddy クロスの片棒を担いでいて、Lalun 経由で名種牡馬たちの血統表中に鎮座しています。* Djeddah は父 Djebel が Prince Rose と同じ母父 Gay Crusader なのも親近感倍増で、つまり Partholon[パーソロン]そしてメジロマックイーンにも繋がってきますが……脱線が過ぎるので一旦停止。

Sash of Honour は五代血統表で見える限りだと Sardanapale 5×5 だけ。今までから見るとだいぶ薄味にさらりと仕上がりました。英国一辺倒の囲いから少し離れて伊仏の香りを纏い、ようやく息を継げた牝系のお嬢様が日本へと旅立つ娘を産むことになるのです。

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少し気になったのは、JBISページの戦績です。
5 [2-2-0-3] との記載ですけど、どうみても足し算の結果が合いません。

Bright Silk

Sash of Honour の半姉 Bright Silk (1953) は 娘の Silken[シルケン]を通じて日本で牝系の記録が残っており、欧州では Bright Record の子孫がアイルランドで今も走っているようです。同じく半姉で凱旋門賞馬 Migoli を父に持つ Migolette (1955)[ミゴレツト]はスプリングステークス 1着で皐月賞 2着のシヨウグン(種牡馬となるも産駒出走頭数わずか 33頭)の母に。英国に残した娘から英チャンピオンステークス馬 Giacometti も輩出していますが勢いはそこまででした。

ということでここまでにしてこの頁を〆ることにします。
なんとか Royal Sash まで辿り着けそうです。


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sashes
いちいち調べながら試行錯誤して書いていることが多いです。 新たに気が付くこともあるので加筆修正はわりとすると思います。 どこまで続けられるかは気力と体力と時間次第です。