ステイゴールド = キャッチザゴールド = レクレドール = プリンセスゴールド = ギュリル (Family#1-t)
血統
1994 Stay Gold
2000 Catch the Gold
2001 Les Clefs d'Or
2002 Princess Gold
2003 Gyllir
父 1986 Sunday Silence ⁃ USA
父父 1969 Halo ⁃ USA
父母 1975 Wishing Well ⁃ USA
母 1988 Golden Sash
母父 1967 Dictus ⁃ FR
母母 1979 Dyna Sash
五代クロスなし
父系
今更何を書く必要はないであろう名馬にして大種牡馬 Sunday Silence[サンデーサイレンス]。馬体は細身で両後脚が湾曲していて激気性。大病を患いセリでは売れず交通事故にまで遭う。数え切れないほどの危機を乗り越えて競走馬となります。
血統や馬体、2歳時の成績など比較される何もかもが対照的だったライバル Easy Goer と競った米国三冠にブリーダーズカップ・クラシック。年度代表馬を獲得し種牡馬入りした後においても二頭に対する評価差は変わりませんでした。だからこそ日本にやってきてくれた側面があり、しかしこの決断が苦難続きだった彼の運命を動かします。産駒がデビューしたその瞬間から今もなお揺らぐことのない最上の名声を勝ち取りました。
Halo
父 Halo は Nearco 直系かつ母母 Almahmoud。彼のデビュー時にはすでに名種牡馬への道を歩み始めていた Northern Dancer の従兄弟にあたります。
3代父 Turn-to は様々な名牝の血を保持していますが、母 Source Sucree の Pharos および〈父 Spearmint 母父 St. Simon〉な Plucky Liege によって Nearco を強調した血統構成。Plucky Liege は《Sir Gallahad = Bull Dog》全兄弟の母でもある名繁殖。このサイアーラインでは Hail to Reason が4×4のクロス、Sunday Silence に至ると計6本も抱えています。
父父 Hail to Reason の母 Nothirdchance は Man o' War 3×4で米血優勢。Turn-to との関係性においては《Source Sucree ≒ Galla Colors》寄りの配合となり、Pharos 系を持ち合わせません。
現役時代の戦績もなかなか優秀だった Almahmoud の娘 Cosmah。自身は The Tetrarch 5×5*6 が目に付く程度の希薄系です。
ただし Hail to Reason との間に生まれた息子 Halo は
Sun Princess ≒ Mahmoud 4×3
Pharamond ≒ Pharos 5・5×3
Blue Larkspur 4×4
と相似が重なった緊張感ある配合型に仕上がりました。
Wishing Well
母 Wishing Well は名牝系 La Fleche から Cinna を経由しているものの数十年のあいだ勝ち星のなかった母系の生まれ。ところが彼女は遅咲きながら重賞を勝つところまで上り詰めました。この戦績がなければ Halo のシンジケートを組むことになるオーナーの元で母として迎え入れられ、彼の配合相手として選ばれることもなかったはずです。
父方は頑健に走り続ける父系で、彼女からみて三代目の祖父母たちにはインブリード馬が集結。それぞれの被りは少なくて Understanding では 5×5 程度まで薄められている超マイナー系です。ただしこれまで辿ってきた Halo の構成と並べてみれば Mahmoud と Bull Dog に Man o' War などの血脈がリンクする配合であることに気が付きます。
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Palestinian - Whisk Broom 5×3, Ajax = Adam 4×4
Mahmoudess - The Tetrarch 4×4 + Sundridge 5×5
Stymie - Man o' War 3×3, Colin ≒ Peter Pan 4×3*5, Broomstick 4*4
Pretty Jo - Voter 4×4
母母 Mountain Flower はきっぱりと Hyperion 3×4。お互いに Selene が持つ名牝を内包しているところから彼女が主導権を握っているのは明白ですが、Hillary が Black Ray の3×4でもある超インブリードで、父父 Gulf Stream にはそっと La Fleche が添えられている牝馬協奏曲な血統表でもあります。
Northern Dancer にとって Lady Angela が重要なピースであったように、強い Hyperion の影響を母母から受け継いだ点が Sunday Silence と他の Halo 後継者における大きな違いなのでしょう。〈Almahmoud + Selene〉の完成型でありアウトブリードの爆発力を備えた大種牡馬は、数多くの日本産馬に世界の舞台へと飛び立てる程の翼を授けました。
Sunday Silence × Dyna Sash
Royal Charger / Nasrullah / Northern Dancer と Hyperion
産駒たちには Mahmoud と Mumtaz Begum を経由した〈Blenheim + Mumtaz Mahal〉が 7・5*6×6*7・5。なんなら Mahmoud だけでも祖父母全般に万遍なく分布しておりますが代は少し遠くなってきました。血脈を継承する Nearco 系三大種牡馬 Royal Charger と Nasrullah、Nearcticの息子 Northern Dancer の脈略へと視点を移行してみます。
Royal Charger と Nasrullah は 3/4同血。Northern Dancer は一代遠い後継ながら Gainsborough を持つので Royal Charger により近い血統構成です。Royal Charger によって結びついた三者が、父父と母母のラインで5×4・5に配置されました。
加えて父母母 Mountain Flower と 母母父 Northern Taste の両者が Hyperion 18.75% の濃い血量を持っています。 Sunday Silence 産駒ではいくらでもある例ですが Halo によって生じる Almahmoud クロスも相まって、父と母母が構成する《Nasrullah ≒ Royal Chager ≒ Northern Dancer》+ Hyperion の親密な絡まり具合。これで五代アウトなのがまたすごい。
Dictus
この新しい流れには、母父 Dictus だけが乗ってきません。
Mahmoud は Nearco と結びつかず、辛うじて Pharos と出会ったくらいの遠回り。Hyperion はおろか Selene すら一本もないけど遠くの Gondolette ならそっとある。さすがのアウトサイダーです。牝系的には Prince Chevalier がなつかしく思い出されてしまいます。
本線以外では彼の五代母である Dorina の名前が Mountain Flower に潜んでいたり、Sir Gallahad と Bull Dog に Noor Jahan を用意していたり。さりげなく牝馬を絡ませてくる色っぽさは今回も健在です。
Man o' War + Blue Larkspur
Sunday Silence 側から見てみると、彼が持つ主要米血の中でも独自色の強い〈Man o' War と Blue Larkspur〉が悉く無視されています。英国箱入りおばあちゃんからの欧州偏重系ゴールデンサッシュですから、さすがに持ち駒が足りませんでした。 Nothirdchance パワーの活用が残念ながら持ち越しとなったのは、産駒傾向からも間違いなさそうです。
「欠けている要素」が明確だった一方で、長所を活かすことによって結果を出した産駒たち。父や母となれば相手と補い合いながら血を繋げていくのですから、次に向かうべき道筋がはっきりと見えているアドバンテージがあったのだとも考えられます。ステイゴールドのもたらした成功が、そんな理由だけで説明できる大きさではなかったとしても。
Stay Gold (1994)
白老 白老ファーム
社台レースホース
募集価格総額 3800万円
栗東 池江泰郎
逸話に事欠かない長い現役時代。当時を知る誰もが自分と重ね合わせた記憶を持ち、百人百様の言葉で綴られるステイゴールド。
二足歩行できるほどの体幹・靭やかな筋肉・強い心臓などアスリートが憧れる天賦の才を備える反面、難しい気性がレースにも出てしまう。パドックでも滅多に褒められなかった細い馬体と軽い体重でタフなローテを丈夫に走り続ける。そんな相反した姿がどれだけ多くの人に愛されるようになっていたかは「雨の土曜日」に響いた祝福が物語っています。
彼と向き合い努力を重ねる人間の叡智を時には欺き、諦めそうになる絶妙なタイミングで狙っていたかのように斜め上の答えを出す馬。海を超えた輸送と環境の変化に対応しきれなかったドバイの地で(当時最強馬として名を馳せていた)ファンタスティックライトを筆頭に並み居る強豪たちを相手としながらも勝ちきってみせた衝撃がその印象を確固たるものにしました。
最後の香港で披露した走りはまさに集大成。盛りに盛られた矯正馬具をものともせず、普段とは逆方向へラチに向かってすっ飛んでいく見事なササりっぷり。流石に無理かと絶望しかけた刹那、鞍上の機転にすんなりと手前を替えて絶望的な位置から差し切ってしまう圧巻の逆転劇でした。
種牡馬となってからも驚きは続きます。Sunday Silence 後継者の中でも突出して晩成傾向を懸念されていたはずが、何故かすんなり二歳王者を輩出。グランプリや凱旋門を賑わしはじめたと思ったら遂にはクラシック三冠馬。最高峰が見えても黄金の旅程は止まることなく、二冠馬に天皇賞馬からの障害王者ときて香港とマイルの連覇王まで生み出してしまいました。
これ以上何を望むべきではない。そうわかっていても叶うのならば「あと10年」。引退して悠々自適になってからも放牧地の侵入者を追い払い、我が物顔で周りを困らせるお爺ちゃんになって欲しかった。息子や娘の姿を見かけるたびに、やっぱりはやすぎたよって言いたくなってしまうのです。
Catch the Gold (2000)
白老 白老ファーム
サンデーレーシング
募集価格総額 3600万円
栗東 池江泰郎
由来 黄金をつかめ
1998年から1999年3月までの一年間にステイゴールドが入着を果たした(複数のG1を含む)重賞を数えれば、6年の時を経て名声を恣にしていた Sunday Silence とゴールデンサッシュを再会させることに異論はなかったでしょう。
そうして生まれたキャッチザゴールドのデビューは3歳3月までずれ込み、惜しい競馬を続けながら勝ち上がったのが5月末。実力を信じての連戦も430kgから412kgまで馬体重を減らした代償を取り戻すには1年以上を要します。少し距離を伸ばし身体も成長をみせた4歳秋から成績は上がり、通算4勝で募集価格を超える賞金を獲得しました。
母として直仔に重賞馬こそいないものの牡馬はわりと堅実、孫のタガノパッションがオークスで健闘しました。また初孫のゴールデンワトルにはフェノーメノ産駒がおり《ステイゴールド =キャッチザゴールド》2×3となる牝系配合が実現しています。
Progeny
2007 白老 牝 栗毛 トゥルーゴールド
True Gold by French Deputy ⁃ USA
社台レースホース 2800
JRA-8[0-0-0-8] NAR-1[0-0-0-1] 50.0
2008 白老 牡 栗毛 アドマイヤクーガー
Admire Cougar by Rock of Gibraltar ⁃ IRE
JRA-58[2-3-3-50] 3993.4
2009 白老 牝 鹿毛 アドマイヤシルク
Admire Silk by Symboli Kris S ⁃ USA
JRA-10[0-2-0-8] 655.0
2010 白老 牡 青鹿 タガノエンブレム
Tagano Emblem by War Emblem ⁃ USA
JRA-44[3-4-5-32] 8237.8
2011 白老 牡 黒鹿 キャロル
Carol by King Kamehameha
セレクトセール当歳 4410.0
JRA-3[0-0-0-3] 0.0
2012 白老 牡 黒鹿 ワイドリーザワン
Widely the One by King Kamehameha
セレクトセール当歳 3465.0
JRA-33[4-1-5-23] 5000.1
2013 白老 牡 黒鹿 ヒットリターンキー
Hit Return Key by Harbinger ⁃ GB
セレクトセール 1296.0
JRA-7[0-1-1-5] 480.0
2014 白老 牝 黒鹿 デルマタビダチ
Derma Tabidachi by King Kamehameha
JRA-5[0-0-0-5] 100.0
2015 白老 牝 鹿毛 ゴールデンフィジー
Golden Fizzy by King Kamehameha
JRA-24[1-1-0-22] 920.0
2016 白老 セ 鹿毛 サトノプロミネント
Satono Prominent by Novellist ⁃ IRE
セレクトセール当歳 3456.0
JRA-11[0-0-0-11] NAR-12[0-1-2-9] 266.9
2017 白老 牝 鹿毛 オメガラヴェリテ
Omega la Verite by Novellist ⁃ IRE
セレクトセール当歳 1728.0
JRA-3[0-0-0-3] 0.0
Les Clefs d'Or (2001)
白老 白老ファーム
サンデーレーシング
募集価格総額 5000万円
栗東 池江泰郎
由来 金の鍵(仏)
ひとつ年上のアドマイヤグルーヴやヘヴンリーロマンス。同期のスイープトウショウにダンスインザムード。ひとつ年下ならデアリングハートなどなど。レクレドールが走った牝馬重賞戦線は、華やかで目映く其々に語られるストーリーを持つ主役だらけの時代でした。
現役で得たふたつの勲章はローズステークスとクイーンステークス。札幌記念で牡馬と渡り合った2着。気品があって気位が高くて最後は自身の行く気次第。そんなレースを繰り返しながら決められた引退期限ぎりぎりまで大きな怪我をすることなく走り抜けた彼女。
故郷へと帰ってからはベルーフやクラージュドールなどの活躍馬を送り出し、娘たちもみな無事に母への道を歩み始めました。「人には優しくて、馬には強い。」その風格で牧場の仲間たちを率いながら、いつまでも健やかに過ごしてくれることを願います。
Progeny
2008 白老 牡 青毛 アージュドール
Age d'Or by Brian's Time ⁃ USA
サンデーレーシング 4000
JRA-6[0-0-0-6] 50.0
2009 白老 牝 鹿毛 ラルシュドール
L'Arche d'Or by Symboli Kris S ⁃ USA
サンデーレーシング 3000
JRA-19[3-2-5-9] 3327.0
2010 白老 牡 鹿毛 クラージュドール
Courage d'Or by King Kamehameha
社台レースホース 6000
JRA-21[5-3-1-12] NAR-23[2-4-2-15] 14708.3
2011 白老 牡 鹿毛 クリューサオール
Chrysaor by King Kamehameha
サンデーレーシング 5000
JRA-11[0-3-1-7] 914.0
2012 白老 牡 鹿毛 ベルーフ
Beruf by Harbinger ⁃ GB
サンデーレーシング 4000
JRA-26[3-4-1-18] 15020.9
2013 白老 牝 鹿毛 ルフォール
L'Oeuf Or by King Kamehameha
サンデーレーシング 3200
JRA-13[3-1-1-8] 3836.8
2014 白老 牡 栗毛 コリエドール
Collier d'Or by Kurofune ⁃ USA
サンデーレーシング 4000
JRA-6[2-0-0-4] 1450.0
2016 白老 牝 栗毛 グルファクシー
Gullfaxi by Harbinger ⁃ GB
G1レーシング 2400
JRA-10[2-0-0-8] 1411.0
2017 白老 牝 青鹿 バーグアンノール
Bague en Or by King Kamehameha
社台レースホース 4000
JRA-3[0-0-0-3] 70.0
2020 白老 牡 栗毛 ポルトドール
Porte d'Or by Maurice
G1レーシング 3000
Princess Gold (2002)
白老 白老ファーム
社台レースホース
募集価格総額 5000万円
栗東 池江泰郎
栗東 北出成人
由来 黄金の女王
全きょうだい中唯一の新馬勝ち。2歳の7月にデビューできて芝1200mという距離も異例中の異例だったプリンセスゴールド。計27戦、惜しいレースもあれど以降の勝ち星には恵まれませんでした。
父よりも母や母父が強く出ているように映った綺麗な栗毛で金髪のお嬢様。母となり息子ゴールデンヒーローがなかなか頑張りました。後継の娘たちに恵まれ、自身も熊本でお母さん業を続けています。
Progeny
2009 新冠 牝 鹿毛 ヤマノサッシュ
Yamano Sash by Falbrav ⁃ IRE
セレクトセール当歳 1365.0
NAR-2[0-0-0-2] 0.0
2010 白老 セ 鹿毛 ゴールデンヒーロー
Golden Hero by Symboli Kris S ⁃ USA
シルク 1800
JRA-40[5-6-4-25] 7945.0
2011 白老 牝 栗毛 ゴールデンロッド
Golden Rod by King Kamehameha
サンデーレーシング 2000
JRA-7[0-0-1-6] 301.0
2012 白老 牡 鹿毛 クレイヴソリッシュ *
Claidheamh Soluis by Symboli Kris S ⁃ USA
社台レースホース 2200
JRA-7[0-0-0-7]
2013 白老 牝 栗毛 アンジュドゥロール
Ange de l'Or by King Kamehameha
未出走
2016 白老 牝 栗毛 オートルフィーユ
Autre Fille by I'll Have Another ⁃ USA
JRA-3[0-0-0-3] NAR-7[3-2-0-2] 99.0
2017 白老 牝 黒鹿 ジュエルタワー
Jewel Tower by Kurofune ⁃ USA
社台レースホース 1200
JRA-5[1-1-0-3] 880.0
2018 三石 牡 栗毛 ベルウッドアリイ *
Bellwood Alii by Lohengrin
オータムセール 462.0
JRA-5[0-0-0-5]
2019 三石 牝 栗毛 プラティナマリア *
Platina Mallia by Epiphaneia
ヒダカ・ブリーダーズ・ユニオン 1400
2021 熊本 牝 黒鹿 馬名未登録
by Came Home ⁃ USA
2022 3.4予定
by Ares Barows
Gyllir (2003)
白老 白老ファーム
サンデーレーシング
募集価格総額 1億2000万円
栗東 池江泰郎
由来 北欧神話に登場するアース神の名馬
Sunday Silence のラストクロップ世代にして待望の牡馬。申し分のない馬格に育ち、背負う期待の大きさが伺えたギュリル。新馬戦は武豊騎手でばっちり一番人気でした。うっすらとあった懸念通りのレース下手を披露しながらも無理繰りの3着に、残った感想は「なるほど間違いなく彼の弟」。
数週空けての未勝利戦でも大きな変化はみられませんでしたが、数戦かけて慣れていけば……という楽観視を吹き飛ばしてしまう骨折の診断。畳み掛けるように競走能力喪失の報が届きます。あんなに丈夫だったステイゴールドでも骨膜炎を患ったように、成長途上のリスクは避けられないものだと理解していても辛い事実。たった2戦で悔しすぎる幕を下ろすことになりました。