小さな会社の起業からExitまで~役立った7つのアイディア~【アイディア2.資金がない中、ビジネスモデル試行を続けるには】
こんにちは。よっしーです。
続いて、アイディアその2、
「資金がない中、ビジネスモデル試行を続けるには」です。
起業した会社は、「WEBを使ってBtoB営業プロセスを変革する」というキャッチフレーズでスタートしました。前職では、ホームページのディレクションも数多くしましたが、顧客の業種はまちまちでした。新会社では、ターゲット顧客をBtoB企業に絞り、以下のようにビジネスモデルを設計しました。
営業プロセスを見える化するWEB型サービスの提供 ビジネスモデル
●顧客 :BtoB企業
●提供サービス:営業プロセスを見える化するWEB型サービスの提供
●提供する価値:引合数の増加、成約率の向上
●どのように :パッケージシステムを外部業者にて開発、当社ブランド
で提供する方式
「営業プロセスを見える化するWEB型サービスの提供」は今でいう、営業プロセスのDX化で、いい目の付け所だったと思います。ただ、パッケージシステムとして本格的に開発するとなると、数千万円は必要です。資本金300万円の当社ではかなりの負担です。しかも、開発しても売れるとは限りません。売れなかったら、その瞬間に倒産です。
顧客からホームページを受注し日銭を稼ぎながら、例えばコンバージョン率(WEBにアクセスしたユーザー中資料請求に至った率)を測定できる機能を開発し、それをパッケージの機能としてストックするという方式で進めました。何社かの顧客には、ホームページの納入と一緒に部分的に導入しましたが、製品として市場に出すには、さらに相当のまとまった資金と工数が必要なためペンディング状態でした。
そして、その後、リーマンショックが起き、企業からの注文が劇的に落ちた為、それどころではなくなりました。アイディアと、自社の体制、資金力、自ら取れるリスクのアンバランスにより失敗した例ですが、小さく実施していたせいで致命傷にはならずにすみました。資金の追加投入をしていたら、その後のリーマンショック時に、終わっていたでしょう。
そこで次にターゲットとして目をつけたのが、大学でした。リサーチする中で、多くの大学が一般の社会人やシニアを対象にした「公開講座」を実施していることを知りました。いわゆる生涯学習と言われるものです。分野は、語学やビジネススキル、資格講座の他に、源氏物語等の文学、古事記・日本書記などの歴史、宇宙や科学、ピアノ実習等、それぞれの大学が得意分野の講座を一般向けに開催しているのです。個人的にも、受けてみたいと思う講座も沢山ありました。
当時、どの大学でどのような公開講座を開催しているかを調べるには、個々の大学のホームページを一つ一つ見る必要がありました。そこで、大学公開講座のポータルサイトを作ろうという次の事業のアイディアが湧きました。
大学公開講座のポータルサイト ビジネスモデル
●顧客 : 大学の公開講座開催部門
●提供サービス: 大学公開講座ポータルサイトでの講座紹介
●提供する価値:資料請求者の獲得、講座受講者の増加
●どのように : ポータルサイトへの掲載料で収益を得る。
当初は無料掲載から始め、有料掲載に切り替えていく。
プロトタイプを作成し、候補となる大学へFAX-DMを送り、電話でアポを取った訪問、アポなし訪問を繰り返し、10校程度の公開講座の掲載からスタートしました。当初は無料掲載からスタートし、有料掲載に切り替える予定です。
比較的順調に掲載校数は増え、1年後には30校程度に増えました。しかし、2年ほど運営してハタと気づきました。いつまでたっても有料掲載をしてくれる大学が現れないのです。当初、5000円/月の掲載料で、30校集まれば、15万円/月の売上。システムの運営経費くらいは賄える予定でした。ところが、有料掲載は3校のみ。年間売上10万円にも足りません。
折角ポータルサイトを立ち上げたのだから、なんとか有料メニューを作りたいと社内会議を繰り返して、アイディアとして出たのが公開講座管理システムの提供です。
当時、規模の大きい大学では、年間300講座とか500講座とかの公開講座を実施していましたが、多くはエクセルやアクセスで受講生管理を行っており、申込受付は電話・郵送・FAXのみで、ホームページからの申込受付を行っている大学は僅かでした。データの一元管理はできておらず、作業は非効率、受講生への対応は旧態依然としたものでした。スタッフが公開講座ポータルサイトの紹介で大学を回る中での生の情報です。
公開講座管理システムの提供 ビジネスモデル
●顧客 : 大学の公開講座開催部門
●提供サービス: 公開講座管理システム
●提供する価値: 作業の効率化、集客増
●どのように : ホームページからの受付と電話受付を一元管理できる。
将来的には公開講座ポータルサイトと自動的に連携する。
外部業者にて開発、当社ブランドにて提供する。
(ただし、第一号ユーザーが決まってから開発する。)
とは言え、開発資金はありません。まずはチラシを作って各大学に配り、第一号ユーザー候補が決まってから開発に着手しようということで、チラシを作成しました。そして別件で某大学を訪問した際にスタッフが持つチラシを見つけ、先方から「こういう仕組みが欲しかった。ぜひ提案してほしい」との声が上がりました。その日、スタッフは顔を真っ青にして、「大変です。提案をしなくてはいけません。」とオフィスに戻ってきました。
早速、開発業者を決めなければなりません。実質は受託開発だけど、そこで開発した機能を汎用化することを前提に開発してくれる会社が理想です。できれば、1校目からそのパッケージ価格で仕切っていただければ最高です。結論を言いますと、そのような会社が見つかり、共同開発のパッケージシステムとして上市することができました。
その後の紆余曲折がありましたが、この製品がその後の当社の収益の柱となり、30大学に導入することができ、ニッチな分野ではありますがシェアNo.1となることができました。
この話は、チラシ1枚で700万円のパッケージシステムを受注したという、社内伝説になりました。
このように、資金は何度も枯渇しそうになりましたが、3度目の試行でようやく儲かるビジネスモデルに辿りつくことができました。振り返ってみると、一定のヒントがあるように思います。
1つめは、事業のアイディアはあくまで仮説であり、市場に出してみないと儲かるかどうかはわからないということ。
2つめは、それだからこそ市場に出す前に、1つの事業アイディアに全資金を投入してはならないということ。
3つめは、試作品・プロトタイプをできるだけ廉価に作り、市場の反応を見ること。
80対20の法則というものがあります。「完全なものを作るのに100の費用がかかるとすると、80%のものであれば20の費用でできる」とうこと。80%のプロトタイプであれば、同じ資金で5回のチャレンジができるのです。
(参考)
ビジネスモデルを考える上で、何度も、このシートに書き込みをしました。
シンプルなシートです。