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子どもの育ちとwell-being①慢性疼痛編

先日、Facebook &Instagramの同時配信ライブを行いました。(Facebookの連動が上手く行えず、実質Facebookライブはできませんでした。。ご迷惑を意おかけしました。)

なぜ急にLive配信したのか?それは3月から駄菓子屋を始めるから。
駄菓子屋を始めるにあたって、そのコンセプトというか、目的を周りの方々に共有したいという身勝手な理由なのです。

理学療法士として医療機関で働いているのになぜ駄菓子屋!?
そのストーリーを共有することで、少しでも多くの人に社会課題を認識してもらいたいという想いから配信した1時間でした。

しかし映像だけでは中々見てくれる人も少ないし、伝えたいことも全てを伝えられずにいたので、内容をnoteで文字に起こしてみようと思い、今これを綴っています。お時間のある時にお読みいただければ幸いです。

慢性的な痛みの原因とは?

僕は理学療法士として新卒からずっと外来整形外科に勤めています。
「理学療法士」と一言でいってもその環境は様々であり、急性期病院から訪問リハまで、それぞれの現場で求められるものは大きく異なります。

僕の臨床現場である「外来整形」は、主に「痛み」という主訴と付き合うことが多い。特に何年も治らないような慢性的な痛みを抱える患者さんを担当することも頻繁にあります。

慢性疼痛の要因として「侵害受容性」「神経障害性」「心理社会的」などいくつもの要因が混在して症状に影響しているため、痛みを捉える際は生物心理社会モデルを用いて患者さんの痛みを全人的に理解することが重要であると言われています。

少し専門用語を用いたので噛み砕いて説明すると、例えば打撲や切り傷、捻挫など身体の組織へのダメージで起こるのが侵害受容性疼痛。
帯状疱疹や糖尿病などの神経障害によって起こるのが神経障害性疼痛。
そして「うつ」や「不安」などの心理社会的要因が強く影響して起こるのが非器質的疼痛である。

これらは綺麗に分類できるのではなく、それぞれの要因が影響しあって患者さんの痛みの訴えとして表出されてくる。

そのため、カラダだけを診ていても改善しない症状もあります。
もっと心理社会的背景を考慮しながら関わらなければ、改善するものもしないと言うことです。

そして、その心理社会的背景というものを突っ込んでいくと、幼少期の養育環境という問題に行き着いたのであります。


疼痛と養育環境

幼少期の養育スタイル(育てられ方)が成人後の痛みに影響する可能性があるという研究報告があります。(Shibata.2020

幼少期に過保護に育てられたか?過干渉されていたか?そんなことが、成人後の慢性疼痛の発症、持続に関わるのではないかという大変興味深い報告です。

幼少期というのは脳の発達が著しい時期ですが、その時期に親子間でどのように愛着形成がなされるか?どのような環境で育つか?というのは、子どもの脳の発達に大きく影響するのです。

そこで問題になるのが虐待などの逆境体験。
虐待によって脳の発達に問題が生じることは以前のnoteでも記事にしましたが、科学的に分かってきていることなのです。(Tomoda.2016

友田先生の論文では、深刻な体罰や虐待を体験した人では、感情や思考のコントロールをしている前頭前野の容積が減少しているということや、恐怖を司る扁桃体が過活動になると書かれています。

これらの脳の領域は慢性疼痛患者さんにおいても活動異常が報告されている領域であり、虐待などの逆境体験による脳の発達への影響が、成人後の非器質的疼痛を引き起こす引き金になっている可能性が十分に考えられます。

このように、「外来整形の理学療法士」と「慢性疼痛」と「養育環境」「子育て」というのは、全て繋がっている関係深いものなのです。

僕が駄菓子屋をやろうと思った理由は、子どもとの直接的な関わりや子育て支援を通して、子どもたちに健全に育ってほしいという理由。何かの悪い因子が存在するならば、僕ら地域の大人が保護因子になってやる!と言う意思によるものです。

臨床現場で感じた問題意識に対して、自分にできる最低限の取り組みとして出たアイデアが駄菓子屋なのです。


慢性疼痛だけでない、健康格差という問題

慢性疼痛患者さんとの関わりから、こうした幼少期の環境について勉強していくうちに、さらに様々な課題を知ることになりました。

それは、幼少期の不適切な養育の問題は「痛み」だけどころか、その他の多くの疾病、生活習慣病、寿命などの「健康格差」に影響していると言うこと。

さらにそれらの養育環境という問題は「教育」や「将来の収入」そして「犯罪リスク」など多岐にわたる問題とリンクしているということです。

つまり「健康格差」と「教育格差」は似たような構図になっていると言うこと。
誰もが自らコントロールすることのできない「生まれ育った家庭環境」によって、将来の年収や健康状態までもが多大な影響を受けていると言うことです。

例えばこのグラフを見てください。

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これは幼少期に虐待を受けたことがある高齢者は、そうでない高齢者よりも医療費が3割高いと言う報告に基づいて作ったグラフです(Isumi.2020)虐待経験のある高齢者では医療費が平均13万円ほど高くなっているということ。

幼少期の虐待(養育環境)によって、その60年以上も後になる高齢期における医療費にこれだけの差が生じるのです。

なぜそのような差が生じてしまうのでしょうか?先程紹介したような、脳の発達の問題によるものなのでしょうか?それ以外にはどのような要素が絡んでいるのでしょうか?

そして、生まれ持った環境という変えられないものに対して、どんな要素は変えることができるのでしょう?格差はどのように対策していけば良いのでしょう?

答えなき難しい問題に片足を突っ込んでいます。当然答えなど分かりません。

でも少しでも可能性のあるものに、自分にできることに取り組んでいきたい。
駄菓子屋にはどんな可能性があると考えているのか?

長くなってしまったので全3回シリーズくらいに分けて綴っていこうかと思います。

①慢性疼痛と養育環境
②逆境体験と健康格差〜社会背景から健康を考える〜
③ソーシャルキャピタルと愛着形成〜駄菓子屋の可能性〜

そんな感じのシリーズにしていこうかと思います!

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