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崖から飛び降りて飛行機を作り上げていることを自覚し、急成長するプロダクト作りの戦略を愚直・フォーカスしてやれという話

シリコンバレーの起業家がメンターとして慕うリードホフマンがスタンフォードで行った授業を題材にした本、ブリッツスケーリングを読んだので、学びをここにまとめる

ブリッツスケーリングとは、総力を挙げて成長に集中する電撃戦。

成長しながらチームや企業を運営するための戦略と技術のセットが、ブリッツスケーリングだ。

先が読めない環境で成長するには、効率なんて考えるより、とにかくスピードが重要だ。これまでは「リスクがありすぎる」「常識外れ」と言われるような方法も、必要なら採用する。ブリッツスケーリングという武器を手にした者だけが、不確実性の困難を切り抜け、圧倒的に成長して世界と未来を変えられる。

本書は、リンクトイン創業者でありシリコンバレーで若手起業家に「ヨーダ」のように慕われるリード・ホフマンが、スタンフォード大学で教えたブリッツスケーリング講座をもとにしている。

◆ビル・ゲイツ、エアビーアンドビーCEOも大絶賛!

「スタートアップがみんな待ち望んでいた本」―ブライアン・チェスキー エアビーアンドビー創業者兼CEO

「驚異的な急成長を成し遂げた企業の事例と手法を解説しており、その重要性はいくら強調しても足りない」―ビル・ゲイツ


ブリッツスケーリングとは

ブリッツスケーリングとは、企業が急速に成長するための戦略であり、特にスタートアップにおいて重要です。
この戦略は、スピードを重視し、効率よりも市場でのリーダーシップを得ることを目指します。

ポイント1:ビジネスモデルのイノベーションが重要

言われてみると当たり前ですが、市場や課金体系などによって、ブリッツスケールの有無が制限されます。

そのため、そもそものビジネスモデルのレベルからしっかりブリッツスケールを意識した設計が必要になります。

【成長を最大化する4つの成長要因】

1.市場規模

2.ディストリビューション(手法:既存NWの利用、バイラル性)
Airbnbはクレイグスリストへのクロス投稿APIを作成し、既存NWを利用した

3.粗利益率の高さ
- 粗利益率の高さが次のスケール・開発へのガソリンになる
- (詳細は後述)ブリッツスケールは一回では完了しない。何回も繰り返し巻き起こす必要があり、それに取り組む企業体力のために粗利益率が必要。

4.ネットワーク効果
- 経済学者の用語だと「需要側のスケールメリット」または「正の外部性」
- ユーザー数・利用料の増加がネットワークの効用を増大させるなら、そのサービスはプラスのネットワーク効果が働いていると言える

【成長の最大化を阻む2つの要因】

阻害要因1.プロダクトとマーケットの不適合

これは「スタートアップを成功させるために最も重要な要因」でもある。
例え、どんなに社内メンバーや環境、運用フローが整っていようと、PMFしていないと崖から真っ逆さまに転落していく。

少し話は逸れるが、この本に書いてある

スタートアップは崖から飛び降りて真っ逆さまに落ちながら、飛行機を組み立てて、飛ぶのを目指しているようなもの

と言う表現がとても心に響いた。

そんな全く余裕がない状況で、綺麗なコードを書く、交流会に参加する、意味のないかもしれない本を読むとかやってられない。

とにかく、飛ぶ飛行機を完成させる(プロダクトを完成させ、売上を離陸させる)こと。

じゃないと、綺麗なコードも社内運用も、どうせ落ちて全て何もかも無くなるのだ。

阻害要因2.事業スケーリング

スケールできるビジネスモデルであても、業務を現にスケールできないなら意味がない。

多くの起業家は「爆発的に成長できるビジネスモデルを考え出すことこそ高度な課題だ」と考えているが、オペレーションの拡張性を軽視しがちなので注意。

いくつかの検証済みのビジネスモデル

実際に上記の要素を兼ね備えブリッツスケーリングすることが実証済みのビジネスモデルの具体例がある。

ソフトウェア、プラットフォーム、フリーミアム、マーケットプレイス、サブスクリプション、デジタルグッズ販売、ニュースフィード

ポイント2:戦略とイノベーション

ブリッツスケールは驚くほどの成長と市場支配をもたらす戦略のイノベーションでもある。

持続的な競争優位性をもたらす"ファーストスケーラー"と"学習曲線"

ブリッツスケールを使って、持続的な競争優位性を勝ち取るには、"ファーストスケーラー"か"学習曲線"の観点が必要だ。

ファーストスケーラーになれれば、ネットワーク効果を引き起こせる。
しかし、他の企業がすでにファーストスケーラーの優位性を持っている場合は成功しない。

また、ネットワーク効果や顧客の囲い込みの要素がプロダクトにないのであれば、多額の費用をかけてファーストスケーラーになっても、持続的のある競争優位性は保てないビジネスモデルなので、修正が必要。

学習曲線は、競合よりも早く多くのことを学習し、それでサービスをインクリメントし続けること。この曲線が持続的にかつどんどん急勾配になっていくのであれば(例えば、NetflixのAI学習での提案精度の向上とか)、持続的に競争優位性が保てると言える。

今のブリッツスケール戦略を辞め、新たなブリッツスケール戦略を立てるタイミング:成長が鈍化した時

ブリッツスケールは一度の達成だけではゴールしない。連続して実現する必要がある。

一度そのビジネスモデルや価値提供でブリッツスケールしても、ほぼ100%それだけで完全に巨大企業になれるわけではありません。

いつかそのビジネスモデル、価値訴求、質に見合ったレベルまで売り上げやムーブメントが上がっていき、徐々に天井に近づくにつれ鈍化すると筆者はいいます。

【今のブリッツスケール戦略に収まりきらなくなってる前兆】
成長速度の低下(市場や他のライバルに比べて)
ユニットエコノミクス(顧客あたりの粗利益)の悪化
従業員一人当たりの生産性の低下
管理コストの増加

一般の会社では、そこで、マーケティングがとか社長を変えてとかという話になってしまい、結局少しの成長の有無を見ることになってしまいます。

しかし、本来この状況は、スケールと今の提供価値が見合ってきた事が根本の原因です。

ですので、行うべきは、更なるブリッツスケール!
つまり、ビジネスモデルと価値の向上なのです!

一度成長した企業は、無意識にそれに思考が引っ張られてしまいますが、まだまだ我々はベンチャーであり、初期の頃のようにとにかく改善を繰り返すことを忘れては行けないのです。

そう。とてもシンプルで、とにかく改善、インクリメントを繰り返すこと

ブリッツスケーリングを実現する、直感に反する9つの法則

1.カオスを受け入れる

進んでカオスを受け入れることは、不確実性の存在を認めて対策を講じることになる。そして、そこで重要なのが、過ちを修正する能力を備えているという自信を持つこと。

落ちている状態で飛行機を組み立てているのだ。
つまり、カオスであるその状況にビビったりゆっくり分析や計画している暇も余裕はない。
(年間計画とか売上予測とか。)

不確実なまま走ることが優先。
ほとんどの問題は実行によってのみ解決できる。

2.役に立つ人ではなく、たったいま役に立つ人を雇う

現在の成長ステージに最適な組織・人員であることが大事。

3.「悪い」マネジメントを容認する

組織がうまく回っているよりもスピードの方が重要。
安定のための「良い」マネジメントは成長フェーズに適さない。

4.恥ずかしいプロダクトを公開せよ

本当に重要な問題はプロダクトが世に出てから判明することが多いし、その時点で重要な機能が全て見えていることなどない。
とにかく、早くリリースしてユーザーの行動から「本当の声」を聞こう。

5.火は燃えるがままにせよ

スタートアップは、基本的に失敗する。
リソースが限られた制限時間ありの勝負のため、問題は色々発生するが、どの問題が最も解決しないといけない問題かを見極めて集中的に対応すべき。
緊急性と効率、問題間の依存関係を見極めて解くべき問題に集中する。多くの場合は問題は次の優先順位で対応すべき。

ディストリビューション:ユーザーがいないと話にならない
プロダクト:獲得したユーザーがリテンションしないと意味が無い
収益モデル:VCから詰められたら1晩で考えればよい。
オペレーション:ここでようやく、スケールアップのために何をすべきか。
競合:どうやって守りを固めるか。
次に来るのは何か?:これも守りの一種

6.スケールしないことをする

スピードを優先する。
そのために、スケーラブルではないコードを書き、品質管理のツールやプロセスをスケールするのは後回し。
だって、スケールするようなことをしていて検証が遅れて、売れなければどうせそれらが必要な未来は一生来ないのだから。

7.顧客を無視せよ

「自分の仕事が遅れない限り、どんなカスタマーサービスでも提供する。」がブリッツスケーリング中の基本方針となる。
ブリッツスケーリング中にユーザー同士のフォーラムでの解消やメールのみでの対応に限定する会社は多いし、それでユーザーから見放されるプロダクトであってはならない。

8.資金はあり余るほど調達せよ

計画錯誤(ベストケースのシナリオに基づいて計画を立て、その結果を想定すること)はよく起きる。そのため、余分な資金があったほうが良い。18か月分の助走資金が無ければVCとの次ラウンドの交渉もうまくいかない。
ただし、資金を投じてよいのは次の成長ステージのクリティカルパス上のみだ。それ以外は待たせておけばよい。

9.カルチャーを進化させろ

カオスや燃えていることを受け入れても、カルチャーは絶対無視しない。
カルチャーとは「物事をみんなで実行するための方法」のこと。
そして、カルチャーは「何を価値とするか」を明確に定義すべきだ。
カルチャーが「積極的で的を絞った行動」を促す。ブリッツスケールには全社員のこの行動が必須だ。

個人的なまとめ

  • 崖から飛び降りて、飛行機を組み立てているのだから、もっと「ユーザーが良いと思うプロダクト作り」にフォーカスしよう。

    • 他のことに時間や思考をかけてしまっている。

    • もっと具体的に言うと、フィードバックの収集とプロダクトのインクリメントの2点を徹底的に、とにかく早いサイクルで

  • ネットワーク効果・バイラル性が今のビジネスモデルに考慮できていないので、考慮する必要がある

  • 今のカオスの状況を受容しよう。売上予測したり、今後の選択肢を考える暇があれば、とにかく飛行機を組み立てて、どうにか飛ばすんだ。予測したって作れない、自分で売上を作り上げるんだ。


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