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ストーカー大作戦


『見ぃ~つけたァあ!!!』



あなたは過去に好きなナニカを

追いかけたことはあるだろうか。

追いかける形は色々とあり

告白して振られたのにその後も同行を観察し

対象が恋人を作ると同棲先を特定したり

自転車こいでる後ろ姿だけで

可愛い雰囲気が出ている女子高生を

1駅分くらい付いていったり

SNSで複数垢を使いこなしFF内になって

リスト管理で監視したり。

今回はそれらとはちょっと違うお話。

学生の頃の夜と言えば某牛丼屋でアルバイトしているか

ゲームしているか友人と心霊スポットへ行っているかだった僕。

この日は愛知県で有名な心霊スポット豊田市にある伊勢神トンネルへ行っていた。

明治30年に開通した古いトンネルだが当時の開通工事で人柱を埋めたという噂があった。

現代でその話を聞いて興味本位で訪れた人たちがトンネルから帰還すると

亡くなった旦那さんの家族の母親と子供が亡霊として現れたり

子供の手跡が窓ガラスに残っていたりと、まことしやかに囁かれていた。

しかし学生ひまひま探検隊には何も起こらなかったーー。

「じゃァ戻りますかッ」

そう切り出したのは毎回車を出してくれている運転手。

とても行動力があり真面目だが二十歳前後の顔とは見られないため

あだ名がおっさんと呼ばれる。(以下Oと略)

時々、事が上手く進まないとトチ狂った猿のように両手で後頭部を

ぐしゃぐしゃと掻きむしる癖がある。

仲間内での行事では大体彼の車で移動していた。

今回の訪問ではOと僕ともう一人の友人F(以下Fと略)の計3人だった。

豊田市から車を走らせて一時間ほどで僕たちが住んでいる近くまで来た。

三人とも県外からこの愛知県にアパートを借りている一人暮らし組だ。

Oと僕は車で五分ほどで行き来出来る距離でお互いの家でよく飲んだり遊んだりしている。

Fの家は少し離れていて最寄りコンビニまで僕たちの家からだと車で十五分以上はかかる。

その為Fを先に送っていくことに。

「あのセボンにっ、自転車置いてあるでっ、そこでええよ?」

独特の訛りで話すのはF。

彼は秘密主義者だ。

僕たちとの友人関係も4年目となるのに多くを語ってはくれない。

だが付き合いは良い。断り切れない性格なのかもしれない。

今回もOと僕が暇を持て余していると零時を超えているのに集合してくれた。

「そろそろ着くでェ」

「ってかここから近いんだよね!?家教えてよ~」

Oの報告に続いて僕が問いかけた。

「いやぁ、また今度ねっ」

「じゃ今からFの家で朝飯たべよッ!」

Oも僕もFの家を知らないため一年くらい前から気になり

何かしらで家に上げさせてもらえないかと思っていた。

心霊スポットから戻ってきた頃には朝五時を回り空が明るくなっていた。

「いやぁ今日はもう朝やしっ寝かせてえなっ」

いかにも眠そうなトーンでゆっくりと断られた。

その後も教えてくれよ~のやり取りはあったが

中々教えてくれず誤魔化すので諦めて帰ることに。

「わかったよ~ッじゃ今日はお疲れ~ッ」

「次は東尋坊行こうぜ~!!」

Fとコンビニの駐車場で別れを告げて

バタンッとドアが閉まってからOと僕は顔を合わせる。

にやぁとお互い薄笑いをしてから『追跡しますか!!!』

考えていることは同じだった。

僕たち一人暮らし組みは誕生日会やら忘・新年会などでの飲み会は

部屋を開放し提供しているというのにFだけは非協力的だ。

家に迎えに行くと言っているのにわざわざ自転車を使って

最寄りコンビニに駐車している。コンビニに無断で悪いだろう。

こういうイベントがあるたび、毎回自転車を置いている。

隠されると見つけたくなる性だろうか。

Oと僕は打ち合わせ無しに一先ずは車を出し駐車場から離れた。

Fから見てすんなり帰ったと思わせる為だ。

百メートルほど走り来た道とは違う道で先ほどのコンビニ近くまで戻る。

このコンビニの構造は一般的なもので正面の広い面に自動ドアがあり

その左の面はレジ、壁を超えた外側は店のゴミなどを置く倉庫に三台の駐車場。

自動ドアの右側は雑誌が陳列されていて、右の面は飲料コーナー。

壁を越えた外側は何も置かれていない駐車場スペース。

僕らは駐車場に入らず左面の倉庫が見える位置に店から離れて路上停車する。

Fと挨拶をして別れたのは入口目の前の駐車スペースだったので

警戒して車が出すぎないよう探すことに。

僕が駐車場の端からターゲットを探していたが

「いないぞ!?」

「ッち、まさか、、、気づかれたかッ?」

右手はハンドルを握り片手は後頭部に手を当てながらOが舌打ちをする。

「あ!!奴の自転車がある!!」

彼が乗っている白い折り畳み自転車は倉庫の目の前にまだ置いてあった。

外から見える範囲でコンビニ店内を探す。

「いました大佐ッ!あやつ立ち読みをしていますッ」

「こりゃ長期戦か・・・」

いつの間にか大佐呼ばわりされてしまったがこういう時のOのノリはピカイチだ。

「今日は月曜日・・・ジャンポだな」

「Fはエースが好きだからなぁマンピース読んでいるに違いねぇッ」

ーー。

車内でFが何の雑誌を読んでいるのか予想話をしていると

通勤組みの車も増えてくる時間帯になってきた為、一度場所を移動。

Fの自転車が見えるコンビニ右面から今度は観察。

雑誌スペースに目をやるも姿は見当たらず移動を始めたか?

「あ、飲み物を買って出てきました大佐ッ」

コンビニから出てくると自転車の近くの縁石に腰を下ろし一服しだす。

ーー。

十数分は待機していただろうか、一向に動きが無い。

再び他の車の邪魔になったので移動。

流石に不審車として通報されてしまう可能性もあるため

今度はちゃんとした駐車スペースに停めた。

最初からこのようにしておけば良かったのだと後々気づく。

コンビニまでは歩いて五十メートル程だ。

この場所では車から動向が分からないため

Oは車で待機、僕は遊動部隊として車から降りて足で探りに。

この初手が今後の作戦に影響を与える!!気を引き締めていけ!!

勝手に自らの心に誓い鼓舞していくスタイル。

目標までは長い直線コースで対向車線がある道路

歩道には街路樹が並んでいる。

朝六時に赤いTシャツを来た男性が電信柱に隠れながら

木陰に姿を隠し、コンビニの自転車が見える位置まで

そろりそろりと近づいていく。

俯瞰して見ると相当怪しい人間だが

自分はこの時点でFの姿を確認することに意識が集中しすぎていて

あまり周りを見れていなかった。

唯一気を付けていることは早朝散歩らしい通行人が

歩いてくるのが分かったら同じように歩きある程度歩いたら

足を止めてターゲットに近づくようにしていることだ。

周りが見えていない割には

この場所なら車停めてコンビニも見渡せるだろうという位置も発見している。

暫くしてFが見える位置まで来たので曲がり角が丁度民家の

垣根になっていたのでそこに隠れながら観察することに。

目立つ赤い服は完全に隠れ、枝と葉の隙間から

自分の目はスコープ付きと言い聞かせながら索敵していた。

!!

東に二十!!背丈は百七十センチ程、中肉、天パ交じりのショートヘア、

よく見かける白と黒のラグランTシャツにグレーの短パン姿。

遠くからでも分かるデコの出具合とややプクっとした唇。

間違いないFだ!!あいつまだ座って飲んでくつろいでる!!

いつでも追撃の準備が出来るようこの隙にOと合流しよう。

今来た道は目立ちすぎるため、

帰路ルートを脳内計算し、周りの葉がざわつく勢いで戻った。

すぐにOと合流し二人で体勢を立て直す。

「まだFは座って飲んでたよ!!」

「あの垣根がある茶色の家の曲がり角に良い停車スペースがあったよ!!」

「グッジョブ大佐ッ!すぐ移動しようッ」

先ほどの垣根からOが待機していた所までは走っても二分程だったが

車で移動するとなると一方通行がこの辺り多いことに気付く。

一時停止もきちんと止まりやや時間はかかったがお勧めの停車スペースへ到着。

Fがいつ出発しても良いようにエンジンはかけたまま

サイドブレーキで待機状態にしているO。

僕は助手席からFが座っている方向に目をやり監視をすると・・・

「まずいFがいない!!」

「んん!?しかもあいつの自転車ごと消えてるぞ!?」

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