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「除くクレーム」とは?

「除くクレーム」について勉強する機会があったので、その内容を簡単にまとめておきます。


「除くクレーム」とは?

「除くクレーム」とは、請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、請求項に係る発明に包含される一部の事項のみをその請求項に記載した事項から除外することを明示した請求項をいう。
(特許・実用新案審査基準 第Ⅳ部第2章 新規事項を追加する補正 3.3.1(4)参照)

新規事項追加(17条の2第3項)について

除外した後の「除くクレーム」が、新たな技術的事項を導入するものでなければ許される。
(特許・実用新案審査基準 第Ⅳ部第2章 新規事項を追加する補正 3.3.1(4))。

  • 請求項に係る発明が引用発明と重なるために、新規性等(29条1項3号、29条の2または39条)が否定されるおそれがある場合に、その重なりのみを除く補正は許される。引用発明の内容となっている特定の事項を除外することによって、補正前の明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものとはいえず、新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかであるため。

  • 請求項に係る発明が、「ヒト」を包含しているために、第29条1項柱書の要件を満たさない、または32条の不特許事由に該当する場合において、「ヒト」のみを除く補正は、当初明細書等にヒトを対象外とすることが記載されていなかったとしても許される。「ヒト」を発明対象から除外することによって、補正前の明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものとはいえず、新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかであるため。

明確性要件(36条6項2号)について

  • 否定的表現(「〜を除く」、「〜でない」等)があっても、①除かれる前の発明の範囲と、②除かれる範囲とが明確であれば、発明の範囲は明確であるとされる。(特許・実用新案審査基準 第Ⅱ部第2章第3節 明確性要件 2.2(5))

  • 一方で、「『除く』部分が請求項に係る発明の大きな部分を占めたり、多数にわたる場合には、一の請求項から一の発明が明確に把握できないことがある」として、審査官に留意するようにも述べている(第Ⅳ部第2章 新規事項を追加する補正 3.3.1(4))。

請求項に否定的表現があっても、否定的表現によって除かれるものが不明確な場合(例えば、「引用文献1に記載される発明を除く。」)は、その表現を含む請求項に係る発明の範囲は不明確となる。
しかし、請求項に否定的表現があっても、その表現によって除かれる前の発明の範囲が明確であり、かつ、その表現によって除かれる部分の範囲が明確であれば、通常、その請求項に係る発明の範囲は明確である。

特許・実用新案審査基準 第Ⅱ部第2章第3節 明確性要件 2.2(5) 

また、「除く」部分が請求項に係る発明の大きな部分を占めたり、多数にわたる場合には、一の請求項から一の発明が明確に把握できないことがあるので、審査官は留意する(「第II部第2章第3節 明確性要件」の2.1(1)参照)。

特許・実用新案審査基準 第Ⅳ部第2章 新規事項を追加する補正 3.3.1(4)

進歩性について

  • 審査基準においては、「除くクレーム」とすることにより特許を受けることができる発明は、「引用文献と技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有するが、たまたま引用発明と重なるような発明」であり、引用発明と技術的思想としては顕著に異なる発明ではない場合に、進歩性欠如の拒絶理由が解消されることは「ほとんどないと考えられる」としている。

参考文献

  • 特許・実用新案 審査基準

  • 淺見節子「『除くクレーム』のあるべき姿とは ーフッ素化合物の組生物事件を題材としてー」知財管理 vol.75 No.1 pp.5-18 (2025)

  • 日本弁理士会令和4年度特許委員会第2部会第1チーム「除くクレームの有用性についての検討」パテント vol.77 No.5 pp.45-60 (2024)

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