俳優さんの演技力
※366日間チャレンジ、237日目。
テレビや映画、舞台などで俳優さんの演技に感動することが多いと思うけれど、私の中では、舞台を見ている時が、一番、俳優さんの演技に圧倒されることが多い気がする。
肉体から放たれる、得体の知れない大きなエネルギーに包まれて、ものすごく引き込まれる・・・みたいなことが起こるのが、私にとって、舞台である。
嘘や誤魔化しがきかない、目の前で展開される生身のお芝居。
テレビや映画も好きだけれど、舞台には、独特の緊張感と空気感があって大好きだ。
今から27年くらい前、文学座の若手俳優さんたちの公演を見に行ったことがある。
2人芝居の短い作品が4つくらいの、発表会っぽい公演だったと思う。
そのどれもが、もし自分がそれを演じなければいけないとしたらとてつもなく緊張しそうな、難しい題材を、サラーっと演じていらっしゃるのが本当にすごかった。
セリフを喋りながら、きっちりセリフの間で、髪の毛を結い上げるとか(一体どれだけ練習したらそんな神技ができるようになるやら)、無言でただご飯を食べているとか(しかもちゃぶ台の前に正座で座りながら)、本当に、一切の誤魔化しがきかない、ストレートに生身で勝負するお芝居ばかりだった。
その中で、戦前みたいなちょっと昔の日本の、結婚したばかりの若い二人の何気ない日常の様子(それこそ、ただ無言でご飯を食べる)を描いた作品の俳優さんたちが、本当にすごかった(特に男性の俳優さんが)。
ただ黙ってご飯を食べている、ただそれだけなのに、新婚の嬉しさ、幸せ感が、ぶわぁーっと伝わってきて、その静かなシーン(BGMとかもない)を見ながら、涙が溢れて仕方がなかった。
また別の舞台では、確か明治座でやっていた『あかんたれ』だったと思うのだけど、浅茅陽子さんが、(これまた)ご飯を食べるシーン。
セリフを喋りながら、山盛りのご飯をあっという間に平らげていくのだが、客席から拍手が湧き起こるくらいの見事な食べっぷりだった。
あと忘れられないのは、歌舞伎座で観た、海老蔵時代の十三代目團十郎白猿さんの助六。
いやー水も滴るいい男ってのは、ああいうの言うんでしょうね。
彼の顔から首にかけてのエリアが、まるで陽炎が立っているかのように、ゆらーんとゆらめいて見えましたからね・・・ものっすごい色気。
演技力云々以前に、俳優さんとしての圧倒的な色気とオーラに、すっかり度肝を抜かれたのでした(なぜか急に敬体)。
役者に魂を持って行かれて身を持ち崩してしまった昔の大奥の女性たちって、こういう、誰も抗えない圧倒的な色気を持つ役者の魔性みたいなものにやられたんだろうなあ・・・と感じた出来事だった。