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UNION WORKS オリジナルシューズ

「タイムマシンがあれば…」と悔やむことは人間誰しもあるだろう。
それは人生で誤った選択をしてしまったとか、そういった後悔からくるものが多いかと思う。
そして残念ながら、そういった人は同じような過ちをその後にするであろうから、無駄に終わるだろうと予想できる。

しかし、革靴マニアは違う。
1980年代に遡れば、今では高嶺の花になってしまったあんな靴やこんな靴が1/5程度の価格で買えてしまう場合も少なくない。
今では20万円や30万円もするJohn LobbやEdward Greenの靴は、日本に入ってきた当初は5万円程度だったと聞く。
皮革の高騰で価格は年々上がり、下がってゆくことはないだろう。
これでは、同じ過ちを繰り返すことはあり得ない。
愚かな大衆とは違うのである。

とはいえ、僕の場合はそこまで極端なものではない。
僕が遡って買いたいと思っているのは、2016年頃に販売され、2018年頃に販売が終わってしまった靴だ。
…それは何か。

シューリペア界の雄、UNION WORKSがかつて販売していた英国製オリジナルシューズである。

このキャップトゥはよくChurch’sと間違われる
こちらは実は革質が良くないのだが、楽だし何せ足に馴染む

他にも、セミブローグやダブルモンクストラップ、タッセルローファーなどがラインナップされていた。
買っておけばよかった、と悔やまれる。

これらは定価5万円弱で、セールにかかっていたタイミングで買った。
キャップトゥの方は3万円弱、サイドエラスティックの方は2.5万円程度だったと記憶している。
革靴入門で有名なScotch GrainやJalan Sriwijaya、Union Imperialより断然安い。
ちなみにシューツリーが1つ9千円なので、シューツリー程度でも大きな買い物となった。

「5万円以下で本格的な靴を」というテーマで作られた靴なので、先述のような値上げの波に揉まれて継続不可能になってしまい、すぐに販売終了となってしまったようだ。
まるで幻の靴だ。

どちらもオリジナルのレザーソールは穴が空くまで履いたので、ダイナイトソールに交換してもらった。
色気がなく質実剛健な感じが、とにかく英国的で気に入っている。
仕事で履くのに、これ以上のものはない。
その気に入りようは、未だにUNION WORKSのブログをブックマークに入れては眺めているほどだ。
ディテールやエイジングに関しては、僕の拙い文章や写真よりも本家のあんな記事こんな記事を参考にしてほしい。

ちなみに、この靴は「英国製」以外に情報が公開されていない。
「CHEANEY製ではないか?」と囁かれている事もあるメーカーだが、ライニングに書かれている木型の番号から容易にメーカーを特定可能である。
答えは、NPSだ。

実際、同じ木型でほぼ同じデザインの靴が販売されているのが確認できる。

しかも安い

販売時期によってはガラスレザーではないスムースレザーが展開されていた筈だ。
おそらくUNION WORKSのものは革が別注で、グレードの高いものが使われているとか、それくらいの違いだろう。

となると、僕の今回の記事の書き出しは矛盾してしまう。
今でも手に入るではないか、と。
しかも定価で比較すれば安いし、セールだとAmazonで1万円台で売られていたことすらある。

理由は単純明快、サイズがないのだ。

UNION WORKSのものはUK5からUK9までのハーフサイズ刻みの展開だった。
それに対してNPSのプロパーではUK6からのワンサイズ刻みの展開だ。
僕のサイズはUK5h、つまり英国製の靴としては小さすぎるために手に入れることができない。

僕は英国紳士よろしく、少しでも小さなサイズの靴にギュウギュウに足を詰め込む履き方をしているので、おそらくUK6でも合うだろう。
しかしUK5hの、僕の足のカタチに変形してしまったあの履き心地を知ってしまうと、もう他のサイズは試したくない。

足のカタチに変形しているが、これが履き心地がいいのだ

こんなに気に入っていても2度と手に入らないと思うと、破れてもツギハギだらけにしながら履いてやろうと思う。
履く度に「40年ほど、70歳まで履きたい」と考える。

しかし、それを思う度「そんなに生きたくない」「そんなに働きたくない」と気付くのであった。

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