箱根の歴史に触れる旅(その2)
箱根湯本と宮ノ下に一泊ずつしたので、宮ノ下富士屋ホテルの館内見学をしてきました。明治11年創業の富士屋ホテルは、明治期以来の和洋折衷の壮麗な建造物群で知られており(最も古い本館は明治24年の建築)、本館一部や庭園は見学可能です。館内には箱根や富士屋ホテルの歴史についての展示コーナーもあって、大変面白いのです。
展示コーナーでは江戸時代からの箱根の歴史を辿ることができます。江戸時代、箱根には箱根七湯(湯本・塔之沢・堂ヶ島・宮ノ下・底倉・木賀・芦之湯)と称される7つの温泉がありましたが、明治以降の国内外観光客の増加に伴い、小涌谷、強羅、仙石原などさらに10箇所が開かれ、箱根十七湯として知られるようになりました(現在は二十湯数えられることもある)。
富士屋ホテルを創業したのは山口仙之助なる青年実業家でありました。彼は外国人専門ホテルの経営を志し、明治10年(1877)箱根を訪れて、宮之下の老舗藤屋(店主安藤勘右衛門)を買収、同時に底倉区有温泉の使用権を獲得し、翌11年富士屋ホテルと改称しました(箱根温泉公式ガイド 箱ぴた、箱ペディアを参照)。
この当時、箱根には外国人観光客を対象とする豪華ホテルが次々現れ、鎬を削っていたそうです。湯本福住、宮之下奈良屋、木賀亀屋の三軒はことにその名を轟かせていました。湯本福住旅館は箱根屈指の老舗旅館として知られ、旧館は旅館第一号の国指定重要文化財にも指定されています。
この展示コーナーの必見は、富士屋ホテル食事メニュー!創業初期から昭和までのメニューを見ることができます。当時どんな西洋料理が提供されていたのか興味があるもので、必死に撮影。
明治41年4月の献立を見てみましょう。イラストがかわいらしいですね。日本語表記ということは、日本人宿泊者用なのでしょうか。ですが手書きということから考えるとお客用ではなかったのか…?それはともかく、内容です。右側が平日、左側が土日メニューのようです。表の読み方が不明ですが、平日の場合、曜日の右側はランチ?水曜日上段はパンケーキとあるので、ディナーではなさそう。他のメニューは難解です。「月タピオカ(いや、タピオカなわけないよね…?)」、「火チヤツレツ(カツレツ?)」、「木セイゴ(スズキの若いものをセイゴと呼ぶそうですが、それだろうか…)」…謎だ。
その下の欄はディナーかな。なになに…月曜日(上段)は「牛ロース 芋サラダ、合鴨、グラッセ チーシユ(シチュー?)、兎(と判読不明文字)」、これらはコース料理なのか、はたまたメインなのか。なかなか種類が豊富です。その下の欄は飲み物?アマントってアーモンドかな。マカロンという名前もあるのがわからない。デザート?謎が謎を呼ぶ。
グラタンやマカロニ、牛ロース わさび(わさび添えかしら、美味しそう)、プデン(プディング?)など馴染み深いメニューもありますね。想像が広がります。こういうものを眺めてあれこれ考えるのは楽しい。
ところで、建築物はもちろんなのですが、宮ノ下富士屋ホテルは庭園が見事です。宿泊もしていないのに申し訳ない気分になりますが、一見の価値あり。絶妙な手の入れ方と言いましょうか、緑の配置が絵のように美しく力強い。
箱根といえば箱根細工も有名。江戸末期から一気に広まりました。箱根へ行くとついつい手に入れたくなります。今回は宮ノ下のお店にて、左上の中サイズのからくり箱を、息子が私の両親に買ってもらっていました。
だがしかし、このからくり箱…開けられない!(涙)
YouTubeを見ながら開けようと試みては挫折。自慢じゃないけど空間認識能力に乏しい私にはハードルが高いのでありました…(そういう問題でもない?)。
いいんだ観賞用だから…
というわけで、個人的にツボにはまる楽しい旅でした。箱根好きなのでここを舞台に小説を書きたいなぁ。アイデア出てこい〜
最後に番外編。
湯本ではこのオステリア、808 Monsmareがお勧め。ピザも他のメニューもびっくりするくらい美味しい。我が家のイタリア人が大喜びでした。混み合いますが回転は早いですよ。接客もとても気持ちがよかったです♪
芦ノ湖で海賊船にも乗りました。ぼーっと景色を眺めつつ、箱根町と桃源台を往復。湖面を渡る風と山の緑が心地いい。
そうそう、入生田にある県立生命の星・地球博物館へも立ち寄りました。
ここ、素晴らしい博物館なんですよ!!
書ききれないため詳しくは後日に回しますが、コレクションのクオリティと展示方法に、キュレーターのずば抜けたセンスと深い哲学とをひしひし感じます。正直、スミソニアン自然史博物館よりも好きなくらい。
コレクションの質も凄いのですが、どうしたら訪れる人に展示物の魅力が伝わるのか、知的好奇心を刺激できるのかを考え抜いた配置と構成が見事。これはもう、実際に行って感じて頂きたいです。
それと、剥製や標本、レプリカの美しさにも度肝を抜かれました。剥製やレプリカを美しいと感じたのは人生で初めて。イマジネーションを掻き立てられ、生命に対する畏敬を覚えるような素晴らしい展示でした。
私の友人家族知人、老若男女問わず、ここへ行った人はもれなく絶賛する博物館です。若い人にはぜひ見にきて体験して欲しい。お勧めです。
番外編といいつつ長くなりましたが、この辺りで。
日本では荒れ模様の天気が続いているようですが、どうぞ安全な週末をお過ごし下さい。