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『深川あやかし屋敷奇譚』「化け猫こわい」へのご感想をいただきました☆
おはようございます。当地は今日も冷え込んでおり、またもや雪がちらついておりました。なかなか春がきませんね。日本各地でもさらに積雪が予想されるとのこと、どうぞ安全にお過ごしください。
潮田クロさまより『深川あやかし屋敷奇譚』第三話「化け猫こわい」へのご感想をお寄せいただいたので、またもやご紹介いたしたく♪
葱に目をおつけになり伏線を考察してくださったのですが…すみません、本作の葱にはなんの暗喩もメタファーもなく、ただのみそ汁の実なのでありました(トホホ)。
京極作品ほどの深みに到達したいものですが…!(ものすごく無理そう!←諦めが早い)
このお話、「有馬の猫騒動」などと呼ばれる怪談が下敷きになっています。曰く、久留米藩8代藩主、有馬中務太夫頼貴の頃、殿様が宴会を開いている最中に子猫を追って犬が乱入し、場は大混乱に陥った。その時、関屋という奥女中が犬を退治し、見事お殿様を守ったのだという。いたく感銘を受けた殿様が関屋に褒美を取らせようとすると、関屋は子猫を所望した。関屋の献身と欲のなさに心を動かされた殿様は、彼女を側室に望む。だが、それを面白く思わぬ奥女中たちは関屋(のちお滝と名を改める)をいじめ抜き、彼女は自ら命を絶ってしまう。
これに怒り狂った関屋の女中と猫は復讐をはじめ、猫は化け猫となって有馬家中の者たちを次々血祭りに上げていく。だが最後には、お抱え力士小野川喜三郎らにより退治されるのであった…という怪談話です。
改稿前にはこの怪談を引用している部分も存在したのですが、よくよく調べてみたところ、このお話が定着したのは明治13年に上演された「有松染相撲浴衣」という歌舞伎・浄瑠璃によるところが大きいと判明。元々いくつか存在した怪談を混ぜ合わせる形で成立したと思われますが、現在まで伝わる完成形となったのはこの頃。従って引用できないという結論に至り、有馬の猫騒動のオマージュということにいたしました(←後付け!!)。
作中では明言していませんが、おみょうや長岡らはとある大名家家中です。彼らはその上屋敷に住んでいるという設定です。
猫が妖怪変化となるというお話自体はずっと以前から日本各地に存在しまして、「猫又」などはその代表格としてよく知られているかと思います。ただし猫が化け猫となって人に祟るという伝奇を一般化させたのは、四世鶴屋南北が文政10年に書いた『獨道中五十三驛』であろうと言われています。以降恐ろしい化け猫、というイメージが人々に定着し、有馬の化け猫騒動などを生み出す素地となったというわけです。
ちなみに、奥女中のおみょうですが、「猫」には「みょう」の読みがありまして、これを名前に使用しております。
化け猫は果たして善なるものか災いなすものか、本当の「化け猫」は誰なのか。これまた話をコロコロ転がして、恐ろしきは人を化け猫に変える妄執と怨念というオチにつなげてみました。
…が、この第三話はどちらかというと閑話休題的な感覚で当初から書いていまして、ミステリの要素はそれほど強くはありません。一応トリックの解明や犯人探しはありますが、おみょうとお凛や仙之助とのやり取りをメインに書きました。依頼人(と猫)が屋敷に住み込むパターンは珍しいので新鮮でございました。
それでは、血も凍る化け猫の祟り(…というほどたぶん怖くないかと思いますが!)とミステリ、お楽しみいただけたら幸いです♪
潮田さま、楽しく勉強になるご感想をまことにありがとうございます!!
ちなみに、もう下がるだろうなと思っていたら、Amazonにてまたベストセラーになっておりました。もうバッジは剥がれていますがありがたやー☆
お手に取っていただき心より感謝申し上げます!
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潮田クロさまのnoteはこちら♪小説もエッセイも素晴らしいのでぜひどうぞ!