【新歌推介】 moon tang 《房屋供應問題》:手狭になる部屋、窮屈になる関係 【香港音楽】
香港の女性シンガーソングライター、moon tangの最新シングル『房屋供應問題』(住宅供給問題)。
moon tangは、英語の自作曲を歌うインディーズ歌手として活動をはじめ、とりわけ当時のボーイフレンドだった人気若手R&BシンガーのGareth T.と共演した2021年6月の『honest』などで注目を集めた。
2022年にはGarethの所属レーベルでもある香港ワーナーと契約し、英語曲『Lately』でメジャーデビュー。
広東語の楽曲は、今年5月発表の『戀人絮語』につづき、今作が2作目。
今作のタイトル『房屋供應問題』は、訳せば「住宅供給問題」となる。
土地が手狭で人口密度が高い香港が慢性的に抱えてきた社会問題だ。
ポップソングのタイトルとしては意外なものかもしれないが、香港の若者にとっては、恋愛とも密接に関わる身近な問題でもある。
住宅供給が不足し、不動産価格が高騰する香港においては、若者が部屋を手に入れるのは難しい。
親との同居が長く続けば、恋人とのプライベート空間の確保にも難儀する。関係が深まって同棲や結婚という段階を考えようにも、まず二人で住む家をどうするのかという問題に直面する。
そしてなんとかフラットの一室を手に入れられたとしても、それは二人だけで暮らすにも狭すぎるような超狭小住宅だったりする。
黃偉文が作詞した本作の歌詞では、手狭になっていく物理的な空間と、それと比例するように狭量になっていく恋人の心、その中で次第に窮屈になっていく二人の関係性が巧みに重ねられている。
(ちなみにmoon tangはつい先日Garethとの破局を公表したばかりである)
ミュージックビデオは、IKEAの全面協力のもと、香港内のIKEAの店舗で撮影されているようだ。
冒頭、IKEAの店員に扮したmoon tangが客の返品を処理している。
返品された商品の中には、花と蝶ネクタイが縫い付けられたオランウータンのぬいぐるみがあった。すでに購入後に手が加えられた商品なので、返品は受け付けられないと伝えると、客は「じゃあ君にあげるよ」と言う。
最初は「ですが会社の規則で…」と断ろうとした彼女だったが、結局この家を失ったオランウータンのぬいぐるみを引き取り、連れて帰ることにする。
ちなみにこの冒頭の返品を希望する客、どことなくファッションセンスが、元彼のGarethに似ているように見えるのだが気のせいだろうか…。
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