中通クルーズあとがき
2024年5月3日から5日までの三日間全4公演で行われた、ササキとゴトウpresentsオムニバスコントシアター第二弾「中通クルーズ」ご乗船いただきありがとうございました。
また、乗船は出来なかったけど気に掛けて応援してくれてた方々もありがとうございました。
中通クルーズの脚本と演出を担当したササキです。
前回の中通ヒルズの時も書いたと思うのですが、あとがきという事で思ったことを書いていこうと思います。
(ネタバレとかそういう事言う方は気を付けて読んで下さい。もう千秋楽を迎えた舞台なのでネタバレもクソもないと思ってますが。)
まず結論から言うと無事にある程度満足のいくカタチで千秋楽を迎えることが出来てホッとしています。
良かった悪かったは見てくれたお客様が決めることですが、成功か失敗かで言うと全力でチャレンジした事に失敗はないと思っているので絶対に成功なワケで。
じゃあ成功か大成功かしかないのであれば、このプロジェクトを影に日向に支えてくれたスタッフさんやキャストのみんなの為に大成功でした!と声を大にして言ってあげたい気持ちです。
いや、自分でも満足いくものが作れたと思うし、みんなもそれに応えてくれたので自分的にも大成功だったと思いたいんですけどね!
一応主催として、浮かれてないぞって雰囲気は出していきたいじゃない。一応。
と言うのも、実際、全4公演あるウチの最初の2公演がコント的に「ややウケ」だった箇所が目立ってしまい演出としてはスゴクスゴク悔しかったんです。
お笑いって言うのはお客さんのを乗せてなんぼな訳で、それをコント初挑戦のメンバーがいくら稽古場で稽古したからって言っても一発目からお客さんを乗せてコントするなんてハッキリ言って不可能な訳です。
場数をこなす事でしか上がらないスキルな訳ですから。
それが誰でも出来たら我々芸人の商売あがったりだし。
このプロジェクトが1回目ならそれでも良かったと思うんです。
中通ヒルズならそれも「みんな頑張ってるな!」が通用した。
でも今回は第二弾。
前回の中通ヒルズの千秋楽が目に焼きついているお客様や噂を聞きつけてやってきたお客様にはある程度の“基準点”が設けられてしまっている。
感想の枕詞に「前回と比べて」とか「噂に聞いてたけど」とかがどうしても付いてしまう。
その重圧を背負ったまま上がったハードルをコント初挑戦のメンバーに1回目から越えろなんて本当厳しいですよお客様ってのは。ええ。
だから悔しかった。
初日は本当に悔しかった。
舞台裏に戻るなりオレに向かって真っ直ぐな目で優香ちゃんが「私、もっとウケたいです。」と言ってきた時、本当に胸が苦しくなりました。
無力だオレは。
やれることは全部やったみたいな気になって本当に情けない。
いや、それも違うかも知れない。
やれることは全部やったしキャストも努力してた。
その上で足りなかったから悔しかった。
演出家は舞台の幕が上がったら何もしてあげることが出来ない。
2日目昼公演。
まだ空気が掴みきれていないメンバーが試行錯誤する中、元わらび座の看板ミュージカル俳優小樽部さんが自分のマイクにリバーブを掛けてミュージカル曲を熱唱する、通称スーパー小樽部タイムを発動。
主催と音響スタッフにのみ打ち合せしてキャスト陣には内緒だったので、舞台袖のザワつきが凄かった。
舞台での実績やキャリアで言うと一番のベテランになる小樽部さんが一番貪欲に目立ちにいく。
オレは感動しましたよ。ホント。
「何をお行儀よく空気探ってんだ?客の空気ってのはこうやって強引にでも掴みに行くもんだぞ!」
まるで他の後輩キャストにそう背中で語っているかのようでした。
ま、本人は単純に目立ちたかっただけかも知れませんが。
何だか全体の空気が変わったような気がしました。
そして2日目夜公演。
全員が空気をモノにしてようやく初日が出た印象。
ずっと鬼門だった優香ちゃんと若松の焚き火のシーンでもようやく笑いが起こるようになって一安心。
そのままの勢いで流れ込むように千秋楽へ。
千秋楽の出来は本当に良かった。
全ての演技が噛み合ってお客さんの空気も良く、舞台の上でみんなの表情がキラキラと輝いている様でした。
今回は脚本としてもかなりチャレンジしていました。
一本一本のコントとしてのクオリティは保ちつつ全体の流れをハッピーエンドに向かわせる。
あまりに逸脱したキャラクターやボケを入れてしまうと噛み合わなくなってしまうし、場合によっては一気にチープになってしまう。
物語としてのクオリティからも逃げたくない。
仮に笑いが起きなかったとしてもストーリーだけでもチケット代が取れるものでなくてはいけない。
その上で笑いからは絶対に逃げない。
もしそんなものが自分に作れたのなら、確実に自信になるし、自分の幅が広がるはずだ。
そんな思いでの執筆作業。
本当に苦しかったし、自分の限界というか壁みたいなものに思いっきりぶつかった。
自分の引き出しの少なさ、人間的な薄さ、見分の狭さ、向き合えば向き合うほど見えてくる自分の才能の無さ。
「小さい頃は神様がいて、不思議に夢を叶えてくれた」けど、大人になったらそうはいかない。自分で叶えていくしかない。
ホントに怖い話ですよ。
つまり本番中には演出家として、本番に向かうまでには脚本家として自分の限界と無力さを感じた。
それでも最後に乗り越えられたのは今回のメンバーがいたからだと思っている。
コント的なオチ台詞「そんな事もあろうかと、お茶とお菓子用意しておきました」ってのが浮かんだ時、サンマルクカフェで一人でガッツポーズした事を覚えている。
同時にスゴく胸がドキドキして来たのも覚えている。
それはきっと自分で"書いた"ってより、たまたまオレが"書かせてもらった"って感覚の方が近いからだと思う。
「え、コレオレが書いたって事にしてもらっていいんですか?」「そっか、じゃあ良いモノに仕上げないと。……やば!良いモノに仕上げないとじゃん!怖!」って感じ。
芝居的な締め台詞「ホンモノ役者は立つ舞台を選ばない」なんて、完全にモエさんと尾樽部さんの背中に書いてあったセリフを書き起こしただけだし。
「面白いモノ作って金稼いで何が悪い」ってのだって、モエさんからの台詞に何か返さないとと思って胸からこぼれ落ちた言葉を豪速球で投げつけただけだった。
みんながみんな限界をなんとか越えれたから出来た舞台だったと思う。
それはそれぞれが自分のポジションに全力で向き合えたからだ。
モエさんはオレが書き上げる台本を信じてプロモーションに制作に走り回ってくれた。
オレはモエさんを信じてひたすら"創る"事に集中出来た。
キャストは僕らの期待に応えようと努力して、その努力の成果を思いっきり発揮してもらおうとスタッフがサポートする。
みんなが自分の役割にプロ意識を持って挑める環境は本当に幸せな事だ。
なんか幸せで2日目夜公演のラストコント前辺りと言う変なタイミングで涙が込み上げて来た。
変なタイミング過ぎてすぐに冷静になったけど、そのくらい幸せを感じる数日間だった。
ココからはメンバーへのメッセージも書きたいなーと思っていたけど、それは追記していくことにします。
さて!来年どうするかね?
去年の中通ヒルズ、今年の中通クルーズと年々上がっていくハードルから我々は逃げる事は出来ません。越えるしかないんです。
でもきっと来年出会う新しい仲間と刺激が我々を高く飛ばせてくれると信じています。
オレは一人では何にも出来ない自信がある!!
また来年。もしくは近い内に。