#89 しあわせは、シェアリング
スマートフォンのカウントダウンアプリを使っている。年末年始休暇で日本に帰るまでや、次のマラソンまでの日数が日々表示される。準備が必要なイベントの場合は多少プレッシャーも感じるにせよ、基本的には楽しみなことだけを入れるようにしている。
人生のカウントダウン
そんな中、この記事を書いている日の段階で、残り日数「18115日」を示しているものがある。それは、「自分の100歳の誕生日」、つまり大まかに「人生ここまで」となるまでの日数だ。確実に毎日減っていくこの数字を見て、日々「毎日を大切に生きよう」と思う。そのために、ここ数日で自分の人生では「やらないこと」を決めた。先の投稿「#84「ありのまま」の意味が、分かりかけた今日」で書いた「自分の境界線」だ。今日はそんな、引き算の話をしてみたい。
やりたいことの数々
子供のころから、とにかくいろいろなことに興味があった。やりたいことを全部やるには、200歳まで生きても足りない。そんな僕の興味・関心を書き出してみる。
このうち仕事に関連したのは、「英語教育」「管楽器の演奏」「AI・自然言語処理」の3つ。それ以外は仕事の外で趣味や自身のライフワークとして取り組んできた内容だ。◇印をつけた「管楽器の演奏」「音楽理論」「キャンピングカーの旅」は生きている間に必ず充実させたいと思っている。今日は上で◯をつけたものに注目する。
残りの人生から外すもの
上で ◯ 印をつけたものは、今後の人生から外すと決めた。とても残念だが、よく考えてそう決めて、それでよかったと思っている。
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動画撮影・編集は、主にフルートの仕事をしていた時に取り組んだ。ウェブサイトにフルートが製造される工程の動画を載せたいね、という話になったが、小さい会社には動画作成を外注する予算などもちろんなかった。僕が自宅から持ち込んだビデオカメラ(テープで撮影する時代)で旋盤が回っているところやロー付けの工程を撮影し、それをパソコンに取り込んで編集した。
アメリカ代理店の仲間がいい BGM をつけてくれ、動画が完成した。当時ウェブサイトに製造風景を載せていたフルートメーカーは、おそらく僕が勤めていた会社だけだったのではないかと思う。本格的に学びたい、と思うようになった。
デザインを手がけたのもフルートの会社だった。理由は同じで、外注する予算はないので、新しく作るカタログや、完成した楽器を入れて出荷する化粧箱のデザインをした(化粧箱は今も僕がデザインしたものが使われているはず)。デザインしたものは目に見える形となるので、大きな達成感を感じたのを覚えている。
でも、ここで書いた二つのこと、動画撮影・編集とデザインは、残りの18115日の人生からは外すことに決めた。きっかけは、前回の記事「#83『ひきよせの法則』と TEDxRikkyoU」で取り上げたトークで PowerPoint に埋め込むアニメーションが必要になり、納得のいくものを自分で作る時間がないと分かって、かつての同僚で当時はフリーランスでデザインをしていた友人に依頼したことだった。
生まれてはじめての外注
そのアニメーションは15分ほどのトークの最後に見せるもので、僕がそのトークに込めた想いを象徴するシーンだった。その友人は九州に住んでいたので、オンラインで30分ほど話して、僕の想いを説明した。
「理解してくれたなら、あとはプロの君にまかせる」と彼女にお願いして、出来上がってきたアニメーションを本番で使った。最後のシーンを話し終えるちょうどのタイミングで矢印がつながるように、何度もタイミングを修正してもらった力作だ!本番の動画を、もう一度引用する。
その時、「自分で全部作っていたら、こんな素敵な共同作業の時間はなかった」と気づいた。相手を信頼して想いを伝え、その上で出来上がってくるものは「あの人が作ったものなら大丈夫」と受け入れられる。自分で全部やらずに一部を依頼したおかげで、当日の感動はその友人も巻き込んで、一人でやり遂げた時よりも大きくなった。「今後もデザインは必ず頼むからね!」と約束した。
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「やらない」ことは豊かなことだ
最近、動画編集を専門になさっている note クリエイターの長橋知子さんと知り合いになった。3人のお子さんのお母さんで、エネルギーあふれる素敵な方だ。実は近々動画編集が必要になりそうなのだが、長橋さんにお願いする予定だ。関連記事を引用させて欲しい。
長橋さんにお願いすることで動画制作は共同作業、完成品も共同作品となり、自分で無理してやろうとするよりきっと素敵な経験になるはずだからだ。ずっと前から知っていた下の言葉が腹に落ちた瞬間だった。
本当に大切にしたいことは、実は全部自分でやらずに、一部を誰かにお願いすると、幸せが何倍にもなって返ってくるかもしれない。
上の矢印のアニメーションには、2万円の費用と数週間の時間をかけた。今なら、生成 AI にお願いすれば、タダで10秒で作ってくれるかもしれない。でも、僕は AI は使わない。人にお願いすることで、その人とのシェアリングが生まれ、お互いの人生が豊かになるのだから。AI に人生の豊かさは奪わせない。僕の専門は生成 AI だが、いかにしてそれをお金にするかではなく、人間の豊かさとの共存の方向性を探っている。日本では(今のところ)歓迎されない研究だ。
しあわせは、シェアリング 〜 Happiness is sharing
今日もお読みくださって、ありがとうございました🇸🇪
(2023年11月21日)