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#38 ダルムシュタットの役所と教会を『ブラタモリ』

先日、現在住んでいるドイツ、ヘッセン州ダルムシュタットの市役所で住民登録をしてきました。日本でいう「転入届」ですね。今日はそんなダルムシュタットの役所と教会を『ブラタモリ』します😎


閉まっているけど大丈夫⁈

ドイツの役所では、手続きのために事前に予約を取る必要がある場合が多いです。先日住民登録をした時は、大学の留学生センターが代わりに予約を取っておいてくれたので、指定された日時に市役所へ行くだけで、手続きができました。

ダルムシュタットの街の中心、ルイゼンプラッツのオベリスクの目の前にあるショッピングセンター。その3階に市役所の出張所があります。今日は出張所は閉庁日ですが、9月にダルムシュタット工科大学に着任する海外からの研究員向けに特別に開庁される日とのことでした。特定の大学の研究者のために役所を臨時に開けてくれるなんて、なんて親切な……理由は後で分かりました。

大学から注意されていたことは、

本来は閉庁日なので、行っても閉まっているように見えるはずです。
でも大丈夫、時間になれば係員が出てきて中に入れてくれます。

分かるような分からないような注意事項
フロアごと暗いと上がる気にならなかった

実際の様子は上の写真の通り。「閉まっているように見える」どころか、フロア全体の照明が落ちている!これではエスカレーターでフロアに上がるのにも勇気が必要でした。何人かすでに来ている人がいるので、おそるおそる聞いてみます。

英語で普通に話せる幸せ

すみません、住民登録にいらっしゃったんですか?
工科大学の研究者の方ですよね?

研究者っぽい人に声をかける

予想通りで、化学が専門だという彼とひとしきり話しました。大学のキャンパスの移転計画について、ダルムシュタットの住宅事情について……流暢な英語を話す人でした。スーパーや(僕の行く価格帯の)レストランでは英語はどうにか通じるものの、あくまで「用件を伝える程度」であることが多いので、今日は久しぶりに普通の会話ができて感動しました。その後も生物学が専門という別の研究者の方と話し、実は同じゲストハウスに住んでいることが後で分かりました。

僕:我々のために臨時開庁してくれるなんて、親切ですよね。
彼:工科大学はこの街で2番目に大きな雇用主だからね〜
僕:なるほど。1番はもちろん、メルクですね?
彼:その通り!

別の人との会話、いろいろ学ぶところあり

ダルムシュタットは実は企業城下町で、化学・医薬品メーカーのメルクの本拠地です。メルクの設立は1668年で現存する化学・医薬品企業として世界最古!という伝統を持つ企業です(ちなみに2番目に古いのは日本の田辺三菱製薬で、創業は1678年)。

医療職の方は、メルクというと「メルクマニュアル(MSDマニュアル)」の発行元でもある、米国メルク・アンド・カンパニー(MSD)の名前をご存知の方が多いと思いますが、始まりは実はドイツでした。所有していた海外拠点が第二次世界大戦の敗戦によって連合国に接収され、米国で独立企業となった経緯があります。
 街ではメルクに次いで工科大学が大きな組織で、だから市役所出張所を臨時開庁してくれる……自分が住む街の意外な一面を知りました。

市役所での住民登録を終え、「せっかくだから、いつもと違う道で帰ろうか」と思って、ルイゼンプラッツを大学と反対側に歩き始めました。


聖ルードヴィヒ教会

ドイツといえば1517年の宗教革命が起きた地。カトリックの教会が多くあり、ローマ教皇も輩出しながら、プロテスタントを産んだ地でもあるわけです。ダルムシュタットにも、神道で言うところの「氏神様」のような教会があるはずで、それはどこにあるのかな、と疑問に思っていました。その答えは、地図を見ずとも「ブラタモリ」的に探せば簡単に見つかりました。

聖ルードヴィヒ教会(カトリック)丘の頂上にある

ブラタモリの肝?

NHKの人気番組『ブラタモリ』はご存知の方も多いと思います。ではみなさんはこの番組の真髄をどこに見ますか?僕はタモリさんがよく注目する「街の高低差」、つまり自然地理的な特徴から、当時の人々がまちづくりの時に何を考えたかを紐解いていく過程だと思います。
 よく見ると、街の中央広場であるルイゼンプラッツは、坂の下のいわゆる「おわんの底」部分に位置しています。1944年、第二次世界大戦終戦間際の大空襲でダルムシュタットの街は大きな被害を受けましたが、当時の写真を見つけました。この写真でも、中央のオベリスク部分がおわんの底であることが分かります。いわば、「人間の中心」とでもいったところでしょうか。

大空襲後のルイゼンプラッツ 写真は米軍による
中央のオベリスク(塔)付近が今も街の交通の中心
(ウィキペディア日本語版より → 写真をクリック)

一方、この写真で右上の方向に通りが伸びており、この通りが上り坂になっているのも分かるかと思います。現在のこの通りが次の写真です。

日本式に言えば「表参道」
聖ルードヴィヒ教会に向かって、真っ直ぐ登りの道
オベリスクと十字架の中心は写真の通りぴったり合っている

そして、この坂の頂上に、聖ルードヴィヒ教会があります。丘の頂上にある教会は、いわば「神様の居場所」という感じです。この教会は1822〜1827年築とあるので、ちょうど200年経っています。丘の頂上に教会が、丘の底辺に街の中心があるというのは、典型的な街の設計だと思います。その二箇所をつなぐ道はさながら「表参道」です。教会の内部をご紹介します。

聖堂正面 十字架の上にイエス像が描かれているので、カトリックと分かる
ドーム型のカトリック教会は比較的珍しい
キリスト教に太陽神はいないが、天窓はやはり太陽を思わせる
パイプオルガン〜オルガン音楽のコンサートも開かれるとのこと
各国語の教会案内
左上からフランス語、ポーランド語、ロシア語、イタリア語、英語、スペイン語、ドイツ語

教会税は免除かな?

最後にドイツの面白い税金について。ドイツには、「教会税」という税金があり、教会の運営維持費用は献金ではなく税金によって賄われています。ウィキペディアによると、ドイツのカトリック教会の教会税による収入は日本円で年間50億ユーロ(2023年8月の為替レートなら、7,500億円)にも上るそうです。住民登録では、自分の宗教が課税対象になる場合はきちんと登録し、教会税の課税あるいは免除がデータとして管理されます。

係員:宗教は何ですか?
 僕:Japanese traditional religion.
  (日本古来のものです)
係員:So, not Catholic or Evangelical church, right?
  (では、カトリックあるいはプロテスタント福音派ではないですね?)
 僕:その通りです。
  (この「その通り」は英語では “No” となる)

住民登録での確認事項

晴れて教会税は免除となりました。ちなみに、ダルムシュタットには有名なロシア正教の教会もあるのですが、ロシア正教は教会税制度を利用していません。ということは、ロシア正教の信者は課税されず、同時に教会の維持費は自前(=献金による)ということなのだと思います。

瞑想はタダにして

ドイツのカトリック教会は、日曜日のミサやクリスマス礼拝に参加できるのは、教会税を払っている人のみとしています。何でもルールで決めたいドイツらしい決まりですね。
 それでも、教会行事のない時間帯に、聖堂で静かに座って瞑想するのは信仰を問わず基本的にすべての教会が認めていることのはず。立教大学時代にも、考えがまとまらない時、気持ちが乱れた時には池袋チャペル、新座チャペルで瞑想していました。ダルムシュタットの教会でもそんな時間を大切にしたいと思います。瞑想はタダですよね?

市内にある福音派教会、ロシア正教教会も回を改めてご紹介したいと思います。
今日もお読みくださって、ありがとうございました⛪️
(2023年8月18日)

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ささきとおる🇳🇱50歳からの海外博士挑戦
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