情報の共通テストの受験体験サイトを作ってみた
3年後の2025年度大学入学共通テストから、新教科「情報」が実施され、国立大学では原則受験必須となる。
試作問題が大学入試センターから公開されているので、ウェブから受験体験できるサイトを作ってみた。
是非チャレンジして未来の受験生気分をお楽しみください。
※2022/1/17追記: JANOG関係者にチェックを入れないとアカウント作成できない不具合を修正しました。JANOG関係者じゃなくてもアカウントを自由に作ってくださいませ。
なぜ作ったか?
2023年1月25日〜27日に山梨県富士吉田市でJANOG51 Meetingが開催される。
以下のセッションが企画されているんだけど、
実際に試験問題を体験できるサイトがあれば盛り上がるよねー、とか登壇者の水越さんが言うんだよね。
渋谷で麻雀しながらそんな話をしてたら作ることになったよ。
受験結果や感想については、このセッションで活用させていただこうと思ってる。
デジャブ?
実は12年前にも同じようなセッションがあったんだよ。
この時も高校の情報の授業の中間テストを体験できるウェブサイトを作ったのよね。
その時の問題は鹿野先生から横流ししてもらった。
268人が登録、170人完走、平均点72点、という感じで、それなりに盛り上がったんだよね。
まあ今回も同じことやるならすぐできるよね、と思ったんだ。
システム構成
構成等は12年前とほぼ一緒でバージョンだけ新しくしてる感じ。
VM: さくらのVPS(SSD 50GB,CPU 2Core,Memory 1GB)
OS: Ubuntu 22.04.1 LTS
ドメイン取得: Value Domain
DNSサーバ: さくらのDNS
監視: Datadog
Moodle Version: 4.1
Web software: nginx 1.18.0 (aptでインストール)
DB software: MySQL 8.0.31 (aptでインストール)
PHP software: PHP 8.1.2-1 (aptでインストール)
MoodleはDockerイメージも提供されてるし、aptでも入るんだけど、今回も最新のものをGitで拾ってきてインストールした。
Dockerを使わなかった理由は以下。
再利用するときには便利だけど、今回はセットアップは1回だけ
レイヤーが増えるとトラブルシュートが面倒になる
レイヤーが増えると必要なリソースが増える
aptでインストールしてない理由は以下。
12年前、aptでインストールしたmoodleがうまく動かず、結局最新版を入れなおした
最新版を使ってみたかった
公式ドキュメントに、Debianパッケージを使うより手動でインストールするほうが優れてるよ、と書いてあった
Webサーバは、前回は Apache を使ってたけど、今回はnginx にしている。
前回は Apache の KeepAlive の設定を On にしたままサイトをオープンしちゃって、公開直後にセッションがいっぱいになってアクセス不能になる、という失態があったのよね。
今回は大丈夫だといいなあ。
監視は前回は Mackerel を使ったけど、今回は Datadog にしてみた。
クラウド監視サービスは本当に便利だよね。
メールはSPFだけしか実装していない。
DKIM、DMARCはさぼった。
ユーザー登録のメールがSPAM扱いされるかもしれないので、登録時には迷惑メールフォルダも探してみてね。
ちなみにIPv6でもちゃんとサービスを提供しているよ。
問題の提供元
大学入試センターが試作問題を公開しているので、これを元に問題作成した。
令和7年度試験の試作問題
https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r7ikou/r7mondai.html
ただ、これ、ライセンスが良くわからない。
そこで大人プレイが上手な水越さんが大学入試センターとやりとりして以下の対応をしてくれたよ。
利用申請書の送付依頼
利用申請書に必要事項を記載して送付
今回のハマリどころ
Moodleの機能増えすぎ
12年前はバージョン 2.0 で、今回は 4.1 ということもあり、機能がものすごく多くなっていた。
機能が増えるとその分設定しなきゃいけない項目も増える。
この設定って何?、みたいな確認に時間も取られちゃう。
すげー、すげー、と思いつつ時間がかなり溶けたよ。
OAuth2対応
2箇所設定する必要があるんだけど、その設定がわかりにくかった。
ドキュメントに書いてあるんだけどバージョンが変わると設定画面もちょっと変わるんだよね。
そしてサービスプロバイダー側の設定もわかりやすくはない。
今回はGoogle認証だけ対応することにして、Facebook等の他の認証はあきらめてしまった。
Moodleで実装しにくい問題
入試センターの問題はマークシートで回答するように作られている。
単純に選択問題だけなら、Moodleで入力するのは楽なんだけど、以下のようなものは実装がちょっと難しいのよ。
2つ選択して、1つだけ当たったら部分点を与える
2つ選択して、完全正解のときだけを与える
数字を直接入力させる
表の中に入る図を複数選択
Moodleの選択問題は、1つ選択か複数選択しか選べなくて、2つだけ選択、みたいなことはできない。
(ひょっとするとやり方があるのかもしれないけど)
なので、今回の実装では、配点に関しては、入試センターの言うとおりにはなっていないところがいくつかある。
全問正解すればちゃんと満点は取れるのであんまり気にしないでね。
素直にコピペできないPDF
コピペすると崩れるPDFは本当に困る。
PDFじゃなくて元データを公開してくれれば良いだけなのに、なぜかお役所系の人々はPDFが大好きなんだよね。
データの再利用、という発想がないのかしら?
そういう発想がないのでライセンスとかが良くわからない状態なのかしら。
情報の試験や授業について思ったこと
試験をやってみるとわかるんだけど、かなり難しい。
現役のエンジニアでも満点を取るのは厳しいんじゃないかな。
人をふるい落とす入試の問題としては良くできてるなあ、とは思う。
でも、この入試って何のために実施するの?、情報の授業って何のためにやるの?、って考えると、微妙に腑に落ちないところがある。
単純に知識の有無を判断したい、というのであれば、ひっかけっぽい設問は不要な気もする。
免許センターの試験なんかもそうだけど、無駄に日本語力を要求するような問題って、本当に必要なのかしらね。
あとマークシートもやめたほうが良いんじゃないかな。
マークミスは防げないし、作る手間も結構大変そうだし、一斉試験も大変だよねえ。
タブレット等を使って、何回も気軽に受験できるような仕組みにしたほうが良いんじゃないかな。
そして勉強しなきゃいけない範囲がとにかく広いて量も多い。
これを詰めこみで覚えるのは地獄だよ。楽しくない。
技術とか科学とかの勉強は本当は楽しいものだし、楽しいから勝手に勉強する、という風に持っていけないと、教えるほうも教わる方もツラすぎる。
まあ、日本の教育行政自体が迷走してるのかもね。
いろいろな話を聞いたりする感じだと、反抗せず批判せず従順で要領良く言われたことを完璧にこなす、という人材を今も作りたがってるのかなあ、という気がしている。
それって20世紀頭の工業化社会の時代は多分正しかったのかな。
でももう21世紀だよ。
勝手に自分で判断して自分がやりたいことを実現していく、みたいな人材がもっともっと育って欲しいよね。
判断のためには教養が必要だし、実現のためには知識が必要、そのために教育する、みたいな大前提を全然目にしない。
最低限生きていくための知識をインプットするのが義務教育だとするなら、大人の義務教育も積極的にやらないとダメよねえ。
スマホやパソコンがうまく使えない大人はまだまだ沢山いるしね。
情報の教育を効率的に行なう方法
情報を授業を行なうのは、とても大変で、教員が不足しているという話も聞く。
困っていることは、技術で解決するのがスマートだよね。
EdTechという分野が盛り上がってる。
私が仕事をお手伝いしているライフイズテックもEdTechの会社で、学校向けのサービスを提供している。
こういうのを導入するのは現実的な選択肢だと思うんだ。(ステマ)
試験対策用の学習ドリルの提供のプレスなんかも出てた。
JANOG向けにも、こういうののデモサイトを提供できれば良かったのかもしれないけど、みんな忙しそうで、気軽にデモサイト作ってー、とは言いにくかったんだよね。
人手不足だ。
もし興味があれば、ということで採用情報も貼っておくね。
このサイトの運営費用について
今のところ完全に個人の持ち出しで運営してる。
VPS費用: 9,680円/12ヶ月
ドメイン費用: 1,309円/1年
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合計 10,989円/1年
このぐらいの費用は確定申告時に経費で落とせば良いかな、と思ったけど note で投げ銭できそうよね。
なので、以下のページだけ有料にしてみた。
投げ銭したくてウズウズしている人は購入よろしく。
特に有用なコンテンツはないけどね。
試験の結果
(2023-02-04追記)
たくさんの方に体験してもらった結果についてもノートにまとめました。
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