極夜行、王立宇宙軍、YMOそして三浦綾子

2019年最初の一週間に思ったこと。

セクシーなほくろのような明星

朝の早い時間、日が昇る前に走っていると、薄い三日月の右下あたりに一際明るい金星が見えた。怪しいくらいに光った明星が月に接近している様子は、口元のセクシーなほくろのように見えた。暗闇の中にいると、自然とそんな想像をしてしまう。ちょうど会社の忘年会でお薦めされた角幡唯介氏の『極夜行』を読んだ後だったから余計に。太陽の昇らない極地の旅の最中、夜空に浮かぶ天体のひとつひとつに個性を感じていく描写が印象的だった。

極地探検といえば、植村直己の『極北に駆ける』『北極圏1万2000キロ』『北極点グリーンランド単独行』を読み返したくなって本棚を探したが、一昨年に手放したばかりだった。残念。

宇宙軍がインターネット業界に思えた

飲酒の習慣を絶って早起きするようになり、朝の静かな時間に映画を見ることが増えた。Netflixで適当に選んでいるだけなのでひとつひとつの印象が薄いが、今週だと『スポットライト』『マネーショート』『ブラックミラー バンダースナッチ』『ムーンライト』そして『王立宇宙軍 オネアミスの翼』。公開は1987年。二十歳くらいの時にビデオを借りてきたときは冒頭で挫折したが、今回は最後まで見通すことができた。引き込まれたのは「宇宙軍」という設定。作品のなかにこんなセリフがある。

宇宙軍なんて聞いて笑わねー女はいねぇよ。陸を歩いたことのない陸軍がいたらオレだって笑う。

つまり作中の王立宇宙軍は、まだ宇宙に行ったことのない宇宙軍として、陸軍や海軍、あるいは市民にも嘲笑される存在としてある。そこに働く人々も、本当は陸軍や海軍に入りたかったと思っており、自分の仕事に(映画の冒頭ではまだ)誇りを持てていない。自分にはそれが、ふいに、ドットコムバブルがはじけたあとのインターネット業界のように思えた。陸軍が新聞業界で、海軍が出版業界で、宇宙軍がインターネット業界。あの時代の、モラトリアムが延長しているような、不安なような、でも同時に希望に奮い立つような、そんな気分を思い出した。

映画そのものは、ひつまぶしとリゾットとピビンパとパエリアをざっくり混ぜておにぎりにしたような味がした。制作スタッフの若い野望があちこちで喧嘩していて、アニメの醍醐味が体現されていた。そんなところも目が離せなかった。

またYMO

年始にNHKで『名盤ドキュメント「YMO“ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー”」』と『細野晴臣イエローマジックショー2』を見て、また過去に引き戻された。もう何度目だ。とか思いながらグリークシアターのライブ映像を見ながらそれから40年が経っていることに愕然とした。そしてそのまま矢野顕子の『SUPER FOLK SONG』のリマスター版をBDで見たり、大貫妙子の『SUNSHOWER』をアナログで買ったりなどした。あと年末からSpotifyで『NEUE TANZ』を聴き続けているけれど、これも本当に飽きない。しかし影響力が大きすぎてうまく言葉にできないなこれについては。

マイ三浦綾子ブーム

家庭内の話です。妻が最初にはまって、僕はそれを追いかけているところ。とりあえず年始に『道ありき』と『この土の器をも』を読了。自伝的エッセイ三部作の最初のふたつ。これが滅法おもしろい。このあと『氷点』やエッセイの続きを読むつもり。一通り読んだらまた感想を残しておこうと思う。

さて、今日から仕事はじめだ。

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