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実質失敗。それでも得たもの
11月6日オーストラリアに到着。
南オーストラリア州はアデレード。
僕はこの地にサッカー選手としてプロ契約を求めにきた。
...
振り返ること去年の4月。
日本から飛び出してニュージーランドに到着した。
初めての海外サッカー。
初めての海外での生活がスタートした。
ニュージーランドに来てから感じた海外のスポーツに対する盛り上がりとそれに見合うお金の掛け方。
サッカーのレベルで言えば日本よりも劣るがサッカーの文化というよりスポーツが文化であることの可能性を多方面で感じた。
しかしニュージーランドではリーグ規定もありサッカーだけで生計を立てれるようなお金を頂くことはできなかった。
だから仕事をして生活するために毎日ヒイヒイ言いながらサッカーをしてた。
平日は6時に起きてマカロン工場に出勤し、長い時は17時まで働いて。
練習がある日は家に着くのは22時前後。ない日はジムにいっていたし、お金がないから毎日弁当を作って次の日に備えてたので両日共に寝るのは遅い。
ニュージーランドでの生活は睡眠時間も理想的ではない上、日々の生活で「もうこんな時間、もうこんな時間」と目の前のことで精一杯。とにかく時間に余裕がなかった。
そんな余裕がなく辛い時に
"3年前に決めた海外に行きたいという気持ちは何だったのか"と、胸に手を当てて考えた。
海外でサッカーだけで生活をしている日本人を見て刺激を受けたことがきっかけだったし、将来に繋がるような刺激的な経験をするために海外に来たんだと。
今のままじゃ物足りない。
サッカーだけで生活したいし。
違う国にも行ってみたい。
そんな原点に立ち返った時、本来日本に帰る予定だった12月頃を取りやめ延ばし、もう一年海外でプレーすることを決めた。
そしてニュージーランドのようなトップリーグがアマチュア志向なリーグではなく、プロ契約ができるようなリーグがある国に行くことも決めた。
そして色んな人に相談した結果、そのターゲットはオーストラリア2部相当のNPL(ナショナルプレミアリーグ)にした。プロ契約を求めて。
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そして自分自身ニュージーランドではエージェントにそこそこなお金を払ってチームを紹介してもらったが...
これは誰でも無償でできることだなと正直感じていた。
現に僕の後輩がニュージーランドに来た時には
僕がエージェントにやってもらったことを
渡航してたった2ヶ月しか滞在していない僕が
問題なく全てやってあげることができた。勿論、無償で。
最初はアデレードにいたニュージーランドでのチームメイトに紹介して貰おうと思ったけれど、
そんな不満を感じていたため、自分で切り開こうと思った。
半年ぽっきりの英語力と自分のサッカーの実力、裸一貫で。
でも、
結果から言うと思ったようには物事は進まなかった。
11月中旬にアデレードに到着してから2チームを渡り歩いた。
1チーム目はWhite City FC。
Facebookのメッセンジャーで片っ端からNPLのチームにPVやCVを送って連絡を取って唯一返信をくれたチーム。
練習参加したものの2週間経った頃に
「君は身長が小さい。そして外国人枠なんだけれど12月頃にならないとわからない。おそらく埋まってる。」
と言われて契約の話は無くなる。
2チーム目のAdelaide City FC。
本当にこのチームに入りたい一心だった。
普通じゃ練習参加すらできない敷居の高いチームに現地で得た繋がりから参加することができた。
昨年のNPL3連覇、カップ戦は総なめ、オーストラリア全土でBest16に入るほどの実力があるチーム。
トライアル期間の相場は2週間。気づけば2ヶ月も長居してしまっている現状に不安は少なからずあったが、仮にNoと言われる結果は考えたくなかったというか考えられないくらいにこのチームに入りたかったし、他のプランを全く考えてなかった。
しかし、リーグ全体の移籍や契約が締め切られるウィンドウの期日の4日前にメッセージが来た。
Good morning unfortunately there is not enough points to bring you in to the tea.
おはよう。君をチームに入れるポイントが十分にない。
このメッセージを早朝に見て。
「え、どうしよう」という心情よりも、
「あ、終わった」が勝ってしまうくらいメンタルが崩壊した。
トップチームのプレシーズンマッチも途中からだが出場できていたし、
チームメイトとも仲良くなって、スタッフたちとの絡みも日々増えていた。
「もう直ぐで契約ができるんだろうな」と練習や試合での手応えで感じていた。
だが結果はNoだったし、2ヶ月もあって認めさせることができなかったのは完全に実力不足。
評価が身長の高さなのだとすれば、高さ以外の信頼を得ることができなかった。
移籍ウィンドウが閉まる直前だった為、物理的にプレーをすること自体厳しくなった現状と、心理的に自信を失くしたことでRetire(引退)を数日間で何回も考えた。
しかしそんなどん底の自分に手を差し伸べたのは2ヶ月間時間を共にしたAdelaide City FCの面々だった。
相談に乗ってくれた元Aリーガーの絶対的守護神Dakodaを始め、ゴールキーパーコーチのAli、知らない人はいない南オーストラリア州のレジェンドにしてNo.10のBucco。
そして他にもこの現状に何人もの現地の日本人がチームを探してくれた。
さらにはフットサルのチームメイトにも至る所に連絡を取ってもらった。
自分の周りの人々が「助けるよ!」と言ってくれる瞬間瞬間が、どん底に落ちている僕を再起させてくれた。
自分は弱いけれど周りの人達に本当に恵まれてると何度も実感した。
そしてあるチームからオファーが来た。
チームの名はMount Barker United FC
BuccoがTwitterで投稿したツイートがヒットし、契約が叶った。
Any local SA clubs who require a GK, hit me up. Got an import available who’s looking to play any 3 divisions with small wage. @nplsa_hub @FSALeagues
— Nicholas Bucco (@nic_bucco) February 3, 2023
このチームが所属しているのは本来プレーしたかったNPLからは2つカテゴリを下げたリーグ。さらには昨年そのリーグでは下から数えて2番目のチームだった。
「NPL以外ではプレーしない」と言い張っていた自分だったが、
困っている自分のために必死に探してくれている周りの人達を見て心境も変わり、
迷わずサインをした。
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様々な人あっての契約だが、Buccoには本当に感謝している。Thanks Bucco.
この契約の話がなければ日本に帰っていた。それくらい追い詰められたギリギリの契約だった。
結果的に言うと長居したチームに振り回されたが悔いはなかった。
声がかからない。どこにも行けない。となっていたら
「終わった、俺はここまでの選手だ」と潔く帰れた自信もある。
でも奇跡的に仲良くなった選手がここまで繋いでくれたという事実。
この事実と周りの人達の協力が「まだお前は終わっちゃいけない」というメッセージにも見えた。
実質失敗。それでも得たもの。
自分の力で切り開くと豪語して挑戦したオーストラリアでの2ヶ月は実質失敗に終わった。
それでも得たもの。それは勿論。
人との繋がり。
この契約は間違いなく繋がりから生まれた産物であるし、
自分は常に人との繋がりで生かされてる。
アデレードに来てからも知り合って直ぐの現地の日本人が沢山サポートしてくれた。
お金がない時に仕事を紹介してくれた。
バックパッカースでとんでもない一週間を過ごしたのち家を紹介してくれた。
自力でアポを取った1チーム目がダメだったから相談したら普通じゃ参加できないチームに参加できるように繋いでくれた。
これまでしてもらった僕からしたら大きな恩。(もしかしたら相手側は片手間でしてくれたことでそんなに大きく感じて欲しくないのかもしれない...笑笑)
そんな大きな恩を今日を困っている人々に返していきたい。
そう感じざるを得ない2ヶ月だった。
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話は戻るが実質失敗。
でも、めちゃくちゃワクワクしてます。
勝利し続ければサッカーの収入だけで生活できる。
カテゴリはどうあれ、契約内容は文句無し。(いや、もう少しもらいたかった。笑笑)
そしてここ最近ずっと考えていた選手としての在り方。
今回の出来事である程度固まりました。
今シーズンをもって僕は現役サッカー選手としては引退します。
豪2部の上位のチームで手応えを感じて、通用している気になっていたけれど僕は積み重ねが甘いし、サッカー選手としての限界を感じれた。
そして自分の性格はもう自分でわかってるんだけれど、
弱いチームに行ってぬるま湯に浸かってぬるくなる自分が怖かったんだと思う。
少しでも強いチームに行ってサブでも良いから成長したいと思う自分がいた。
色んな事があった末の今シーズンの契約はそんな現役引退を決めた自分自身に負けを勝ちにする力があるのかというチャレンジ。
今回の失敗はそんなチャレンジに出会うための巡り合わせだったんだと思います。
そんなワクワクするチャレンジと共に攻守ともにチームに貢献する。リーグでNo. 1になる。実現させます必ず。
最後の選手としての一年。
後悔がないように愚直に。謙虚に。
自分に指を刺して。頑張ります。
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そして結果を出し続けて本来戦いたかったリーグのチームから6ヶ月以内にオファーが来るよう頑張ります。
長文失礼しました。
ここまで読んでくれている人はどうか僕のことを陰ながらでも応援していただけたら幸いです。
そして契約して2週間後に行われた先週末の開幕戦の結果報告もアップしました。
この記事ほど長ったらしくないので良かったら併せて覗いてみてください。
Hideyasu Sasaki