母から貰ったもの
来月、母が1週間ほど入院することになった。母は身体が丈夫なほうではなく、私が幼い頃から何度となく入院していた。
たしか私が10歳の時だった。引っ越して間もない頃、入院中の母は子供たちが寂しくないようにと病床でそれぞれにあみぐるみを編んでくれた。まず下の弟に、次に上の弟。父から手渡された2人のあみぐるみを見て羨ましいとともに悲しくもなった。私はいつも最後だ。
「おねえちゃんだから、しっかり弟達の面倒をみてね」
わかってる、わかってるけど、しっかりってなんだろう。あの頃、他所のお母さんからも「おねえちゃんはしっかりしてるね」と言われるたびに、しっかりしなくちゃと身体がこわばるのを感じていた。
母にはよく叱られた。だけど、私がある事に巻き込まれた時はただただ黙って傍にいてくれた。知らない場所で知らない大人達が優しく話しかけてはくれたけど、答えたくない事を話すのはとても嫌だった。母は慰めるでもなく叱ることもなく黙ってずっと傍についていてくれた。
そんな母が来月の入院で「1週間だと作って貰ったマスク、少し足りないみたいなの」「そっかあ、なんとかしないとね」私は使い捨てマスクを買って渡そうかと思っていたけれど、それなら母が自分で買うよね、、あっ、これは入院で不安な母が私の作ったマスクが欲しいのだなと気づいて、「じゃあ、まだ布あるから新しく何枚か作ろうか?」「いいの!?作ってくれる?」嬉しそうな母の声を聞いて私も嬉しくなった。
ただの布のマスクだけれど、きっと母にはお守りになるんだと思う。あの時母の編んでくれたあみぐるみがお守りだった私のように。
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