わるもののうた

  ボカロの曲が好きだといって、囲まれて笑われてた
 僕を笑ったそいつらが、今は流行りのボカロをうたう

  落書きを書いてるだけで、腐女子だって陰口叩かれた
  高校で彼女らはBLに嵌って 腐女子だってのを誇ってる

  好んだインディーズバンドは、暗いって陰口叩かれた。

  陰口叩いた友達が、大手になったそのバンドの曲をカラオケで熱唱してる。

  一曲だけ好きになった大手の曲を歌ったら
  趣味が薄っぺらなんだと笑われた そのバンドに騒いでたやつだった

  当たり前に棚上げして 軽やかに笑ってる
  蒸し返したならそれは ねちっこいやつだと笑われる
 
  他人のすきを貶めたいとたまに思う
  僕がされたことをやり返したいと熱がこもる
 
  握った拳を引きはがす、足元の影に目を落とす

  腐女子って罵られてた子が、キモオタがって友達の影口を言う
  空気を読まずに騒ぐ子を、昔空気を読めなかった僕が煩いと怒る

  辛かったはずのことばかり、繰り返してるのはなんでだ
  好きなだけじゃダメなのか、あいしているだけではたりないか

  アイツよりすごいよと、踏みにじりながら褒めるのは、もういい加減にしたいんだ
  誰かを踏みつけなければ、僕らが生きていけないとしても
 
  食物連鎖ですらない 憎悪の連鎖はもう疲れた
  足元にすがる黒い影が、僕のことを罵っている

  お前だって同じだったくせに、そ知らぬ顔でなにしてる
  分かってるからがならないでくれ。眠れないのはもう嫌だ。  

  群衆に埋もれてしまうために、好きなものは全部捨てた
  誰にも殴られないために、愛してたものもみな捨てた

  その代わりに得たものは、薄っぺらいと笑われる僕だけ
  誰も愛しちゃいないんでしょと、指をさされてなじられて
  カラオケでさえ今僕は、好きな曲を歌えない

  他人の顔をうかがうな 自分のやりたい事をしろ
  わかってる わかってるから もう怒鳴り声は聞きたくない
  ただそのためだけのどりょくも 貴方の気に障るのか
 
  頼むから静かにしてくれよ、どうか優しくしてくれ
  辛かったねと言ってくれ、憐れんでくれ、泣かせてくれ
  誰かを踏みつけにしないと、立てないぐらいに壊れてた
  なるものかと必死に拒んだ、いつかの誰かになり下がった

  逃げ出したくて泣きたいけれど、嫌いなものを愛するのはムリだ
  僕にできるただ一つは、ただ精一杯に口を閉じること
  誰かを呪うよりは、無関心でいるほうが、まだせめてもマシだから
  耳をふさいで手を閉じる。

  言葉をしゃべるそのたびに、喋った言葉が薄汚れる。
  無条件で愛せるほど、僕は正しく強くもない、自分の心を護るので
  精一杯のこの両手を、醜いとなじられても、僕は決して何も言えない
  正々堂々悪くないと、言えるだけの自分を持ってない

  なんでお前に罵られるのだ、僕にしたことを忘れたか、
  叫びたいけど言う資格はない、薄汚れた喉が烙印なら
 
  せめて僕は、歌を歌う
  言えない言葉を土にうずめ、葦へと変えてざざなりの雨の向こうになげうって
  傷だらけの心で歌う、とっくに罪人だけれど、せめてどうかと祈り歌う
 
  貴方よどうか汚れないで、僕のようにはならないで
  もうとっくに薄汚れた、この喉で今も歌う。



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