令和6年10月3日 一般質問
1 令和6年台風第5号及び令和6年8月15日から9月2日までの大雨による災害について
(1) 災害復旧への取組について
まず、8月の台風5号と大雨による災害について伺います。
盛岡地方気象台によると台風5号と盛岡市を中心とした大雨で久慈・下戸鎖481.5ミリ、盛岡市薮川231.5ミリなどを観測し、県内5箇所で48時間降水量が過去最大となりました。盛岡では8月27日の大雨で1924年の観測開始以来最大の1時間降水量68ミリを記録しました。毎年のように過去最大の降水量を記録するようになっています。
そして農林水産関係や公共土木施設などの被害額は110億円余りに上り、国では、宮古市と岩泉町を局地激甚災害に指定する方針とのことです。
公共土木施設の災害復旧について、国庫補助対象以外の経費も生じるやに聞いていますが、県と市町村の被災箇所が隣臨接する場合は、市町村とともにどのように取り組んでいくのか伺います。また、台風、豪雨災害によって繰り返し被害を受けている箇所もあることから改良復旧が容易にできるようにするべきと考えますが、併せて所見を伺います。
答弁
まず、災害復旧の取組について二つのお尋ねでありますが、
公共土木施設の災害復旧事業の申請にあたっては、激甚災害に指定された災害や地すべり、橋梁など特定の復旧工法等の箇所を除き、測量設計に係る経費は国庫補助対象外であり、市町村にとっても負担になっているものと認識しております。
また、県と市町村の被災箇所が隣接する場合については、例えば、河川施設と道路施設のいずれか効用の大きい施設に係る災害復旧事業として申請するほか、市町村管理の被災箇所が、県の管理区間の復旧事業の取り付け範囲と判断できる場合は、県が市町村管理区間も含めて申請するなどの調整を行っております。
併せて、復旧工事の実施においても、早期の復旧に向けて発注計画の調整等、連携を図っていきます。
次に、繰り返し被害を受けている箇所に係る災害復旧については、原形復旧を基本としつつ、施設の材質や形状、構造などの質的な改良を施すほか、被害の状況に応じて、抜本的な改良も可能となる改良復旧事業の導入など、国の制度を活用しながら、再度災害防止に取り組んでいるところでございます。
引き続き、被災市町村の災害復旧に係る技術的助言を行いながら連携を図るとともに、国への制度の柔軟な対応について機会を捉えて要望してまいります。
(2) これまでの河川の洪水対策の効果と課題について
平成28年台風10号や令和元年台風19号による災害を経験した岩手県においては、これまで水位周知河川の指定拡大など、流域のあらゆる関係者が協働して行う「流域治水」の考え方のもと、ハードソフトの両面から複合的な取り組みをしてきたと認識しています。これまでの取り組みが、今回の台風5号、8月の大雨に対して、どのような効果につながったのか、また、今後の課題等について伺います。
答弁
次に、これまでの河川の洪水対策の効果と課題についてでありますが、県が指定する水位周知河川においては、避難判断水位に達するおそれがある場合には、県から市町村へのホットラインにより、迅速な避難を促しています。
平成28年台風第10号で被災した岩泉町小本川においては、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」予算等を活用した河道掘削や築堤などの治水対策の進捗により、平成28年の降雨と同規模の総雨量を記録しましたが、河川事業を導入した区間では、住宅等の浸水被害はありませんでした。また、久慈市の滝ダムでは、事前放流と洪水調節により、下流の河川の氾濫を防ぐとともに、水防活動や避難行動の時間を確保したところです。
近年、気候変動の影響により水災害が激甚化・頻発化する中で、県では、「流域治水」の考え方の下、ハード対策とソフト施策を効果的に組み合わせた防災、減災対策に取り組んでおり、これらの対策を推進するため、十分な予算の確保等の課題があります。
引き続き、必要な予算の確保を国に働きかけながら、「流域治水」の考え方を踏まえた防災、減災対策に取り組んでいきます。
2 道路整備について
(1) 国道455号の本復旧について
8月27日の大雨災害による盛岡市薮川の国道455号の通行止めは、15日間続きました。迂回路もありましたが砂利道も含まれていたため敬遠する方も多く、また、タイヤがパンクしたという方もいました。そして、JRバスに関しても、14日間全便運休となり、病院に通われる方にも大きな影響がありました。国道455号は岩泉、田野畑、普代の方々にとっては、県都盛岡に通じるまさに命の道でありますが、本復旧に向けてどのように取り組んでいくのか伺います。
答弁
国道455号では、8月27日からの豪雨に伴い、盛岡市上米内から薮川間の約33キロメートルが全面通行止めとなり、このうち、薮川地区は9月11日まで全面通行止めを継続したところです。
薮川地区では、舗装面や法面の異常が発生し、道路法面の急激な崩落が発生するおそれがあり全面通行止めを継続しておりましたが、現地では計測機器で法面の監視を続け、急激な崩落のおそれが無いことを確認したことから、大型土のうや警報装置の設置などの安全対策を実施して、片側交互通行としたところです。
現在は、現地の監視を継続するとともに、災害査定に向けて復旧工法の検討を進めており、一日も早く全面開放できるよう取り組んでまいります。
(2) 道路通行止めの情報の周知について
国道455号のような主要路線が長期間通行止めになることはなるべく避けなければいけませんが、今回は、平成28年台風10号災害の13日間よりも長い15日間の通行止めとなりました。道路を使う住民の方、市町村に、状況をよりしっかりと伝える工夫が必要であると感じますが所感を伺います。
答弁
県が管理する道路において、全面通行止めなどの規制が発生した場合、市町村等の関係機関にはFAXで通知を行い、道路利用者には、道路情報板での表示や現地への看板設置のほか、ホームページやSNSにより情報提供を行っています。
今回の大雨災害では、国道455号の通行止めの影響が大きいと判断し、通常の周知に加え、岩泉町の情報提供システムも活用し、通行止めの箇所や迂回路等について町民に周知したところです。
一方、国道455号が重要な路線であることから、今回は、より詳細かつ適時な情報提供を関係市町村から求められたものです。
今後は、地元市町村が必要とする適時な情報や提供方法について確認するなど、平時から市町村との連携を強化してまいります。
(3) 国道340号の改良について
次に、国道340号押角トンネル前後の道路改良について伺います。
今回の国道455号の不通を受けて、国道340号経由で盛岡に向かう方も多くいました。また、令和元年台風19号災害の際にも迂回路として340号が使われました。これまで何度も質問を繰り返してきましたが、改めて今年4月に起点から終点まで実延長213.5キロを実際に走ってきました。陸前高田市の国道45号気仙大橋西交差点が起点であり、そこから八戸市の塩町の国道45号交差点まで9市町村を通ります。改めて訴えている押角トンネル前後の約13キロ以外は2車線が確保されていることを確認しました。また、9市町村を走って、気づいたことは、それぞれの地域でのバイパス化やトンネル化など長年取り組んできた事業がつながり、広域での整備効果が発揮されている道路ということです。また、複数の路線が重なる道路でもあるので、災害時の多重性の確保にも極めて重要な路線です。
これだけ毎年のように台風、豪雨災害を受けている岩手県において、道路整備は、県民の命を守る事業でもあると考えます。予算があるからやれる、やれないではなく、ここまで整備したものはしっかりと繋げると聞きたいのですが、改めて国道340号押角トンネル前後の未事業化区間約10キロ全体の整備方針について伺います。
答弁
次に、国道340号の改良についてでありますが、国道340号は、北上高地を縦断する唯一の緊急輸送道路として、防災面においても重要な役割を担う路線であることから、県ではこれまで宮古市と岩泉町間の押角峠工区などの整備を進めてきたところです。
押角峠トンネル前後の未改良区間約13キロメートルについては、幅員が狭く、急カーブが連続していることから、整備が必要な区間と認識しており、早期の整備効果の発現が期待できる宮古市「和井内~押角工区」、岩泉町「浅内工区」として、併せて約3キロメートルの区間を事業化し、整備を進めているところです。
未事業化区間約10キロメートルについては、まずは、事業中工区の早期効果発現が図られるよう、整備に注力したうえで、引き続き、災害に強い道路ネットワークの構築に取り組んでいきます。
3 人口減少対策について
次に、人口減少問題に関し、地方創生の取り組み10年について伺います
本年は、地方創生の取り組みが本格的に始まって10年の節目です。今年6月には政府が検証報告書を出しました。地方への移住者の増加など一定の成果はあったが、人口減少や東京一極集中の流れを変えるには至らなかったと総括しています。
今後は、少子化対策や産業創出、自治体へのきめ細やかな支援に取り組むとともに、諸外国の少子化対策も参考に国民と問題意識を共有していくとのことです。
都道府県の2040年の推計人口を、2013年時点の推計、2023年時点の推計を比較すると、47都道府県のうち数字が改善した、増加もしくは、減少が緩和したのは30都道府県で、岩手県を含む東北、四国、九州の17県で推計値が悪化しています。
県内に目を向けると33市町村の中で実に27市町村において推計値がより少なく、減少スピードが加速しています。改めてこの10年間の岩手県の人口減少対策について、その取組と成果をどう考えているのか。国と県で考えるべきこと、県と市町村で考えるべきことをどう整理して総括するのか伺います。
答弁
人口減少対策についてでありますが、県では、平成27年度に策定した「岩手県ふるさと振興総合戦略」などに基づき施策を展開してきたところであり、これまで
・ 自動車・半導体関連産業の集積や県外からの移住・定住者数の増加、
・ 待機児童数の減少や仕事と育児の両立に向けた環境の整備
などの進展が見られるところです。
一方、東京都の有効求人倍率が本県を上回る中で社会減が継続するとともに、新型コロナウイルス感染症や物価高騰などの世界的な危機に見舞われる中、本県の合計特殊出生率が過去最低の1.16まで低下し、また、コロナ禍を経て、再び人口の東京一極集中が加速しています。
こうしたことから、第2期政策推進プランでは、人口減少対策に最優先で取り組んでいるところであり、
・ 全国トップレベルの子ども・子育て環境の実現に向けた各ライフステージに応じた総合的な施策の拡充に加え、
・ 若年層の県内就職やU・Iターンの促進による移住・定住施策の強化
などを図っています。
人口減少対策については、東京一極集中の是正に向けた対策や、保育の無償化など全国一律での対応が必要なものは、国の責任において取り組むべきものであります。
8月の全国知事会議において、新たに人口戦略対策本部が設置されたところであり、県として、こうした動きと連動しながら国に働きかけています。
また、地域の子ども子育て施策は、住民に最も身近な地方自治体である市町村が果たす役割が大きく、県は市町村を支援するとともに、U・Iターンの促進に向けた取組や、雇用・労働環境の整備など、広域での取組が効果的なものについては、県において、市町村等と連携しながら進めるなど、県のもつ専門的、広域的な機能を果たしていくことが重要であると考えています。
さらに、県内市町村それぞれで異なる人口減少の要因もあることから、今年度は、人口の少ない小規模町村に対し、地域課題の分析や少子化対策の立案等について、専門家等と連携した伴走型支援をモデル的に実施しているところであり、より一層、重層的な体制で市町村と緊密な連携を図りながら、人口減少対策に取り組んでいきます。
1 人口減少対策について 再質問
人口減少対策をはじめとする県の政策の方向性は、「いわて県民計画」に定められ、その計画期間は2028年までとされています。一方、国の第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の計画期間は2027年までとされ、計画期間のサイクルがずれている状況です。
前回の一般質問でも質問しましたが、社会減の推計についても、市町村の総合戦略と2万人ほどずれていることや、首長の選挙などがあった際に、計画期間のサイクルがずれることがあると聞いています。
県は人口減少対策に注力するとしていますが、少なくとも国、県、市町村の計画の上では、意識合わせをしているとは言えないのではないでしょうか。次期人口ビジョンの策定については、東北のブロック単位で考えることや、県内33市町村と意識合わせをすることが重要であると考えますが、県独自に策定することを含めて、見解を伺います。
答弁
人口ビジョンの策定についてでありますが、県の人口ビジョン、岩手県ふるさと振興総合戦略につきましては、国の長期ビジョンや総合戦略などを踏まえ、その内容を勘案しながら、策定、または改訂しているものでございます。
これらの目標達成に向けては、県と市町村が連携、協働することが重要であります。人口ビジョンや総合計画の策定及び改訂に当たり、市町村と意見交換を重ねてきたほか、これまでの成果や課題、市町村の意見等を踏まえ、より具体的で実効性のある施策を盛り込んできたところです。
また、北海道東北地方知事会や東北の企画担当部長会議において、人口減少対策をテーマに意見交換を行っています。
次期人口ビジョン、総合戦略の策定に当たっても、より一層市町村等と緊密な連携を図り、目標や課題などを十分に共有しながら進めたいと考えています。
4 幸福度について
次に、幸福度について伺います。
先日、二戸市において地元の皆様からの意見を伺うタウンミーティングを自民党県連青年局で開催しました。県北・沿岸振興本部の基本方針について、今年度の取組を私から説明させていただき、参加者からご意見をいただきました。産業技術短大の設置にあたっては、就業先もセットで考えなければ効果が薄いことや、県立高校の建て替え、また、ゾーンプロジェクトについて実効性が見えないなど、非常に厳しい意見を頂きました。
達増県政の政策の柱である幸福度、特に主観的な幸福度に関して、この県北・沿岸振興本部の資料では県北、沿岸とも幸福と感じる割合が、達増県政の4期目の始まる直前、平成31年と比較していずれも上昇しているということを成果として書かれています。しかし、令和5年においては、沿岸・県北とも幸福と感じる方の割合は下がり、令和3年は市町村民所得も沿岸・県北で下がりました。幸福という切り口でソートをかけるとかえって政策の見直しなどに時間がかかるように思います。
改めて幸福度を導入することによって岩手県の政策は県民にとってどうよくなったのか説明をいただきたいと思います。また、いわゆるプラチナ社会などについても、県北の皆様に説明しましたが、全く理解が進んでいるようには思えませんでした。10年間の県民計画が始まり6年が経ちますが、知事は、幸福度をはじめとして、ゾーンプロジェクトなどの考え方が県民に広がっているとお考えか認識を伺います。またそのために認識や考え方が違う方に対して接点を持って理解を促すように取り組まれているのか伺います。
答弁
まず、幸福とゾーンプロジェクトについてでありますが、いわて県民計画(2019~2028)の基本目標に「お互いに幸福を守り育てる希望郷いわて」を掲げている背景には、藤原清衡公の「中尊寺建立供養願文」の理念や宮沢賢治の世界観が、岩手の風土や県民性として、広く浸透しているということがあります。
最近では、県内の市町村や企業・団体においても、幸福・ウェルビーイングに注目する取組が進んでいます。例えば、「半導体well-being」な街-研究会の立上げや、盛岡市の「インパクトスタートアップ宣言」など、幸福・ウェルビーイングを重視する流れが広がっています。
幸福に関する県の事業としては、県民意識調査を毎年度実施し、幸福実感等について、これまでに延べ4万5千人を対象にご回答をお願いしているほか、幸福のトレンドや幸福関連指標を含む県の施策等を紹介するいわて幸福白書の作成や、県民参加型の幸福ワークショップの開催、広報誌いわてグラフで幸福を守り育てるための取組の紹介などを行っています。
県の政策との関係については、主観的幸福感に関連する12の領域を基にした10の政策分野と、政策分野ごとの幸福関連指標を設定して、幸福を守り育てる施策を展開しているところであります。
これにより、県民一人ひとりに寄り添った施策立案や推進が可能になるとともに、毎年度、「いわて幸福関連指標」の達成状況に加え、県民意識調査で把握した県民の実感を反映した総合評価を実施し、施策のブラッシュアップや見直しにつなげています。
また、「北上川バレー」・「三陸防災復興」・「北いわて産業・社会革新」の3つのゾーンプロジェクトについては、それぞれ関係する市町村や大学・企業・団体と連携して、岩手の新しい時代を切り拓いていく分野横断的、先導的な施策を推進しています。例えば、
・ 北上川バレープロジェクトでは、半導体・自動車関連産業を中心に令和元年から令和5年で89社が新規立地しています。
・ 三陸防災復興ゾーンプロジェクトでは、東日本大震災津波伝承館の来館者が100万人を突破し、防災学習の場としての定着化が進んでいます。
・ 北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクトでは、未利用資源を活用したバイオ炭の農地施用の社会実装や、ハスクレイを活用した地域熱循環システム構築研究が進む
など、幅広い県民の参画により、着実に成果が現れています。
ゾーンプロジェクトで目指す姿の実現に向けては、大学や市町村、企業、地域等、多様な主体と連携した取組が重要です。
・ いわてネクストジェネレーションフォーラムで若者に北上川バレー地域の将来像を描いてもらう取組や、
・ 昨年開催した三陸復興防災会議2023での三陸地域の魅力発信、
・ 北いわて産業・社会革新コンソーシアムでの産学官連携の推進
など、各ゾーンでビジョンの共有や意見交換が行われており、今後もこうした動きをさらに広げて、各ゾーンの特徴を生かした持続可能な地域社会の構築につなげていきたいと考えます。
5 脱炭素社会の構築について
次に、脱炭素社会の構築について伺います。
常任委員会等で県内の脱炭素先行地域に選ばれた宮古市、久慈市、紫波町の話を伺いました。それぞれ野心的な取り組みであり、自治体としての魅力向上、成長戦略としてカーボンニュートラルに取り組んでいるとの印象を受けます。
また、岩泉町においては、すでにマイナスカーボンの状況にあり、基準年度の2013年度は107%削減、2030年度は150%削減、2050年度は200%削減を目指すとのことです。
また、先日、環境福祉委員会で宮城県の再生可能エネルギー地域共生促進税について、話を伺いました。自治体が独自で設ける「法定外普通税」で、課税対象は森林開発面積が0.5ヘクタールを超える太陽光や風力等の発電施設で営業利益の20%程度に相当する額を徴収するというものです。ただし、課税による税収増を目指すものではなく、非課税の「適地」に再エネ施設を誘導する目的とのことです。つまり事業者は地域と意思疎通を図り、合意や理解を得ることで非課税の認定を受ける形になります。震災後に太陽光発電を中心とした再エネ施設が急増し、景観や環境影響などを懸念する地域住民と事業者の対立が相次ぎ、制度化したと伺いました。
我が岩手県では2030年までの10年間で県内の風力発電の電力量をおよそ4倍に引き上げる計画を出しています。
その中で今年3月、陸上風力発電事業に係る環境影響評価ガイドラインが出され、いわゆるレッドゾーン、イエローゾーンが示されました。先に触れたように今後の成長戦略として再生可能エネルギー、風力発電等をより導入しようと考えている自治体にはどう映ったのか、また、事業予定地の一部がレッドゾーンにかかることが判明した事業者からは、県からイヌワシ対策を求められ、負担が大きくなったとも聞いています。
これでは、岩手県は再エネに後ろ向きと捉えられかねません。宮城県の条例が地元との合意という前提を確保しているのに比べ、岩手県の場合、強制力はないが、レッドゾーン等を地図上に示していることで事業可能性を狭めているのではないか危惧します。
県は、レッドゾーン等を示した以上、市町村による地球温暖化対策推進法に基づく再エネ促進区域の設定を支援すべきとも考えますが、県の見解を伺います。
答弁
まず、脱炭素社会の構築についてでありますが、
環境と共生した再生可能エネルギーの導入を促進していく上で、地球温暖化対策推進法に基づく再エネ促進区域の設定は、重要な取組の一つと考えています。
このため県では、市町村が、地域の再エネ導入ポテンシャルを最大限活用しつつ、環境保全に配慮して促進区域を設定できるよう、令和5年3月に、促進区域を定めるに当たって考慮を要する事項等を示した「促進区域の設定に関する岩手県基準」を策定したところです。
このほか、県単独補助事業により、市町村の地球温暖化対策実行計画の策定を支援する中で、促進区域の設定を促し、助言等を行っているほか、県市町村GX推進会議において、他県市町村での区域設定事例を紹介するなどしており、引き続き、こうした取組により、市町村の実情に応じた区域設定を促進していきます。
また、令和7年度以降、県と市町村が共同で促進区域を設定することが可能となることから、今後、市町村との意見交換等を進めていくなど、共同設定の在り方も検討しながら、県内で促進区域の設定が積極的に進められるよう取り組んでいきます。
6 環境学習について
(1) 自然環境保育の取組への支援について
自然環境を生かす取り組みとして、先日、普代村から県へ自然環境保育に取り組む施設への支援制度の創設について要望がありました。普代村では、令和2年度に移住者誘致施策による、自然環境を生かした保育を村の持続可能な仕事モデルとして構築し、令和3年4月から県内初となる「森のようちえん」、民間型認可外保育施設「つちのこ保育園」を開園しました。子育て環境の充実はもちろんですが、子育て世代の移住者誘致の促進と、保育スタッフとしての地域おこし協力隊などの定住・定着に向けた就業先ともなっているとのことです。豊かな自然環境を生かした地域の売りとなり得る取り組みであると考えますし、知事も市町村要望において長野県の取り組みを引き合いに出し、触れておられましたが、県としてどう支援していくのか伺います。
答弁
まず、自然保育の取組についてでありますが、いわゆる「森のようちえん」など、自然環境や地域資源を活用した体験活動を重視する「自然保育」は、生命、自然についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培ううえで、有効な取組の一つであると考えています。
議員御紹介の、普代村の「つちのこ保育園」については、県では、これまで、業務のICT化に対する補助により運営を支援しているほか、保育料の無償化により保護者の経済的負担の軽減を図っているところであります。
また、本年度は、新たに、いわての森林づくり県民税を活用して、園が行う、子どもが森で遊ぶ機会を提供するための森林整備や、森での自然遊びイベントの開催などの活動を支援しているところであります。
県としては、こうした補助の活用や、長野県などにおける先進事例の紹介等により、豊かな自然環境を活かした「自然保育」など、地域における特色ある保育の取組を支援してまいります。
(2) 環境学習の環境の整備について
また、岩手ではいわて森のゼミナール事業などの森林林業に関する理解を深める事業や、小学校などでの水生生物調査の支援など、環境学習に力を入れてきました。先の森のようちえんを含めて小学校、中学校その先まで環境学習を継続して学ぶことができるようになれば、そして、そこにSDGsや脱炭素とも連動させながら最後は大学のような学術機関にまで繋がれば、大きく地域をアピールできるものになるのではと期待しています。さらに、県北において、そのような環境学習の循環の拠点ができれば再生可能エネルギーの話とも合わせて、いわゆるプラチナ社会にも通じる話となると考えます。
以上のことから、年齢問わず生涯を通じて環境学習ができる環境を作ることが重要と考えますが、県の所感を伺います。
答弁
次に、環境学習の環境の整備についてでありますが、本県の多様で優れた自然環境を保全し、次世代に引き継いでいくためには、県民等を対象に環境学習の機会を提供し、持続可能な社会づくりの担い手の育成につなげていくことが重要と認識しています。
このため県では、小学生に地球温暖化対策の重要性を伝える知事出前授業や、全国2位の参加者数を誇る水生生物調査参加団体への支援などを実施しているほか、環境学習交流センターを核に、体験学習等の開催や環境アドバイザーの派遣、SNSによる情報発信などにより、幅広い世代を対象とした環境学習の機会の提供に取り組んでいるところです。
今後とも、幅広い世代のニーズを踏まえるほか、大学や企業、団体等との連携も進め、環境学習の内容の充実を図っていくとともに、森林など様々なフィールドを活用し、子どもから大人まで、県民一人ひとりが身近な環境や環境問題への関心を高め、学び、体験することができる環境づくりにも取り組んでいきます。
7 地域おこし協力隊について
都市部から地方に一定期間移住し、活性化に取り組む「地域おこし協力隊」が岩手県内で増えています。私も地元の行事などで活躍している方にお会いすることが多く、地元紙での特集記事の中で、ある方が「岩泉は頑張れば夢を叶えられる場所」とのコメントもありました。また、岩泉町では協力隊の方同士での結婚によって5人の赤ちゃんが生まれたとのことです。
令和5年度の協力隊の活動人員は266名で、隊員の定住率は64.3%となっています。課題としては、任期終了後の定住率の向上、ミスマッチによる任期途中の退任などが挙げられています。
私は、やはり、夢を持って、こんなことがやりたいと思ってきていただいた方々が3年でご飯が食べられるようになるかというと非常に難しい部分はあると感じています。そして、慣れない地域での生活による負担もなるべく軽減するように、地元の方々とコミュニケーションをとることにプラスして協力隊のネットワークを強くすることも大事と考えます。また、自治体によっては、募集するけど応募がないという課題もあります。
これだけ多くの方々が、岩手に夢を持ってきていただいているものを繋げていくこと、北上での半導体産業のクラスターを作るように大学やNPOなど関係する方々としっかりとしたネットワークを作り、盛り上げていくことが重要と考えますが、県の所感を伺います。
答弁
地域おこし協力隊についてでありますが、隊員が増加する中、議員御指摘のように様々な課題も生じてきたことから、本県では、地域おこし協力隊経験者を構成員とする一般社団法人いわて地域おこし協力隊ネットワークを令和4年1月に設立し、県内全域の協力隊員及び受入市町村の支援体制を構築しているところです。
これまで、隊員向け相談窓口の設置、任期終了後の起業・就業に向けたセミナーなどを開催するほか、受入市町村向けの研修会において、優良事例の共有や担当者間での意見交換等を実施し、隊員と受入市町村双方の支援を継続的に行ってまいりました。
今後におきましても、隊員や受入市町村の課題把握に努め、研修会の充実や各種交流機会の創出などを通じ、岩手に来ていただく地域おこし協力隊の方々が不安なく、希望を持って活動できるよう、いわて地域おこし協力隊ネットワークを中核とし、様々な関係団体との連携を強化しながら環境整備に取り組んでまいります。
8 地域医療について
(1) 産後ケアについて
自民党会派の政策チームで今年度、周産期医療体制調査検討プロジェクトチームを立ち上げました。これまで、県医師会、産婦人科医会等との懇談会、「まんまるママいわて」での産後ケアに関する勉強会を行いました。意見交換の中では岩手県の全ての妊婦が平等に産後ケアを受けられるように、県立病院でも産後ケアを受けられる体制を整備することについての話もでたところです。
助産師の確保や適切な報酬体系の構築、県と市町村の役割分担など、サービス提供体制の整備が喫緊の課題となっています。産後ケアは、虐待やメンタルヘルスの問題にも対応できるセーフティネットとしての役割も期待され、県内各地の実情に応じた対応が求められていますが、産後ケアの施設を今後どう整備していくのか、また、市町村との連携について、県の考えを伺います。
答弁
本県の周産期医療において、分娩機能が集約化される中、身近な地域できめ細かなサービスを受けられる環境の整備という点で、産後ケアの推進は重要であると考えているところです。
産後ケア施設の整備に当たっては、設備及び助産師等専門人材の確保などの課題があることから、市町村の意向や他県の状況等も参考にしながら、検討する必要があると考えております。
また、宿泊型も含めたきめ細かい産後ケアを受けられる環境の構築に当たっては、施設整備だけで実現できるものではなく、母子保健法上の事業実施主体である市町村において、継続的な事業化がなされることにより、持続的に運営が可能となるものと考えております。
そのため、県としては、医療機関や民間事業者との調整、地域の既存施設の活用や助産師等の人材の確保などの、市町村における産後ケアの提供体制の構築を支援することが重要との考えのもと、市町村の意向を踏まえながら、地域の関係者等とも議論を進め、地域の実情に応じた産後ケアの充実が図られるよう、市町村の取組を支援していきます。
(2) いわてリハビリテーションサテライトの整備について
県は、今年5月からリハビリテーションのあり方検討会を立ち上げ、現状課題を分析のうえ、関係機関と対応を検討しているものと承知しています。
今年2月に環境福祉委員会で雫石のリハビリテーションセンターに伺いました。令和5年度の専門医の圏域別の配置を見ると沿岸圏域には1人もいないことや、療法士も少ないことなどを確認しました。
先日の宮古地域県立病院運営協議会でも発言がありましたし、具体的に宮古市の市町村要望にも入っています。検討会での検討状況について伺います。
答弁
県では、本県のリハビリテーションのあり方について、本年5月にリハビリテーション関係者で構成する検討会を設置し、「現状と課題」「専門医、専門職の確保・育成」「リハビリテーション医療体制」に係る検討を進めてきたところです。
検討会では、リハビリテーションを提供している医療機関は内陸部に集中していること、脳梗塞等の脳血管疾患や骨折等の運動器疾患などのリハビリテーション治療のため沿岸から盛岡へ受療する患者が多いこと、特に沿岸南部の患者が多い傾向となっていることなどから、沿岸地域におけるリハビリテーション医療の充実が必要との意見をいただいているところです。
また、リハビリテーション科専門医や理学療法士・作業療法士などの専門職の確保のほか、医療従事者の教育・研修を行う体制が必要とのご意見もいただいているところです。
今後においても、必要とされるリハビリテーション機能や規模等について、既存の病院施設の活用なども含め、引き続き、専門家の意見を聞きながら検討を進めてまいります。
9 中小企業小規模事業者振興について
(1) 商工業小規模事業経営支援事業費補助について
岩手県では、大企業が0.2%、中小企業が13.9%、小規模事業者が85.9%を占めています。
本県事業者は、東日本大震災津波や度重なる台風災害、そしてコロナ禍といった多くの試練に直面してきました。これらの困難を乗り越えるため、商工会や商工会議所などが各種施策の活用支援を展開してきたところです。特に、震災や災害からの復興支援に加え、現在は、物価上昇、人手不足など、ますます厳しくなる経営環境に対応するため、各種施策の推進が重要となっています。事業者が各種施策を活用し、事業継続や雇用確保を図ることは、人口減少社会での本県経済の維持においては重要だと考えます。
さらに、各種施策を中小・小規模企業に浸透させるには、事業者に身近な商工会・商工会議所の伴走支援が重要な役割を果たしており、特に経営革新計画の認定数では、商工会の支援によって東北で最も高い実績を上げております。
一方、商工業小規模事業経営支援事業費補助において、人件費補助金の俸給単価は、経営指導員で東北平均の87.9%、経営支援員では、73.8%にとどまり、職員1人当たりの補助も他の東北各県と比べ格段に低い状況が続いています。
そのため、指導員等の給与水準の引き上げがままならず、既に小規模事業者支援に携わる人材の確保が困難になりつつあります。
この状況が続きますと、中小・小規模企業に対する支援が滞り、本県経済を支える小規模事業者がさらに厳しい状況に陥ることが懸念されます。このため、商工業小規模事業経営支援事業費補助の増額が早急に必要と考えますが、県の所見を伺います。
答弁
県内事業者を取り巻く経営環境が厳しい中で、事業計画の策定や経営改善、事業承継など、商工会をはじめとする商工指導団体による伴走支援の果たす役割は今後更に重要となっていくと考えております。
このような考え方のもと、今後頻発する自然災害の影響を受ける事業者への支援、また、生産性の向上による利益率の向上や、経営革新計画の策定に取り組む事業者への支援などを進めていくうえで、経営指導員等の給与水準の引上げを早急に検討する必要があることから、待遇面を含めた商工指導団体の体制強化について、関係部等と調整を進めてまいります。
また、国に対する予算要望はもとより、全国知事会や国の審議会など、様々な場面におきまして、商工指導団体の体制強化の重要性、また必要性を引き続き強く要望してまいります。
(2) 商工会・商工会議所の今後の機能について
また、小規模企業振興基本法が成立し、成長発展のみならず事業の持続的発展を原理原則として位置付けるようになり、商工会・商工会議所も大変な状況にあります。地場企業を育てるために、今後、これら支援機関にどのような機能を求めるのか伺います。
答弁
物価高騰等により厳しい経営環境が続いている中、適切な価格転嫁や人材確保、生産性向上による賃上げへの対応など、県内の中小企業者は多くの課題に直面しており、まずは、こうした課題解決に向けた伴走支援を展開する必要があると考えております。
また、商工会連合会では、毎年「いわてビジネスイノベーションアワード」を開催し、例えば、田野畑村商工会が飲食店の後継者とともに、補助金活用や村外からの利用者拡大などを成功させた伴走支援による事業承継の優良事例や、また、複数のITツールの組合せにより無人で自転車修理を受付ける新サービスの構築などに取り組んだ企業の優良事例などを表彰しております。
こうした取組事例を広く情報共有・普及拡大するとともに、ベテラン経営指導員が有する支援ノウハウを広域的に若手職員に継承していくことで、県内の商工指導団体の経営支援能力が一層向上し、県内中小企業の成長に資するものと考えております。
2 中小企業小規模事業者振興について 再質問
令和4年から始まった中小企業事業再生・再チャレンジ支援事業に関して来年度はどう考えているのか伺います。
答弁
中小企業事業再生・再チャレンジ支援事業についてでありますが、
この事業は、御指摘ございましたとおり、コロナ禍におきまして、中小企業の事業継続を何とか図るために、商工指導団体の相談体制、あるいは商工指導団体からの専門家派遣、そういうことができるように交付金を使って実施してきたものでございます。
今現在も、ゼロゼロ融資の返済が本格化していくとか、あるいは中小企業は更に賃上げするための生産性向上、こういったものをしっかりとやっていかなければいけないわけですが、これは1年で終わるというわけではございませんので、中長期的な時間のかかる取組だと思っております。
そうした中におきまして、先ほど答弁申し上げているとおり、商工指導団体の果たす役割が非常に重要でありまして、恒常的な支援体制の整備が重要であると考えておりますので、先ほど答弁申し上げました商工業小規模事業経営支援事業費補助と併せまして、今後事業内容を検討してまいります。
10 三陸DMOセンター等について
(1) 三陸DMOセンターの体制強化について
5月に復興特別委員会で公益財団法人さんりく基金DMO事業部、三陸DMOセンターに伺いました。委員からは三陸DMOセンターの予算や、広域での企画力、販売力などについて質疑がありました。改めてさんりく基金の体制を見ると、副知事をトップに役職者の大部分が県の兼務職員であり、三陸DMOセンターに関しては盛岡駐在が、観光・プロモーション室長以下5名となっており、実質的に宮古のDMOセンター専任で動けるのは2名のみです。評議員や理事及び監事に名だたる方々の名前が入っていますが、限られた人員で成果を出すのは非常に難しいと感じました。
今後、三陸の観光地域づくりを推進するためには、三陸DMOセンターの体制強化が必要と考えますが、県の所感を伺います。
答弁
三陸DMOセンターは、宮古市において、センター長と旅行会社勤務経験を有する職員1名の計2名が従事しているほか、県との兼務職員である商工労働観光部観光・プロモーション室長がDMO事業部長として、また、観光・プロモーション室の担当課長及び室員5名が事務局員等として配置されており、県庁で現地機能を支える体制としております。
現在、DMOセンターの役割や機能を更に発展させるものとして、まちづくり会社の設立に向けた検討を進めておりますが、その基礎となるDMOセンターの取組を強化していく必要があると考えておりまして、さんりく基金全体の運営を含め、これまでの成果や課題を十分検証したうえで、事業執行のための適切な組織体制について検討して参ります。
(2) データ活用の促進について
また、3月の予算特別委員会で、観光におけるデータ活用を県が旗振り役となって進めるとの答弁をいただいていますが、いわて観光DMPの活用状況と今後の取組について伺います。
答弁
令和6年8月時点における利用機関数が53機関、その内訳は、市町村27、市町村観光協会15、DMO7、県関係機関4となっております。
現在、観光庁や日本政府観光局の宿泊統計や旅行・観光消費動向などのオープンデータの追加を進めるとともに、広く観光関連事業者を対象に「いわて観光マーケティング実践塾2024」を開催し、地域のマーケティング人材の育成を進めているところです。
今後、各利用機関の分析ニーズ等に応じたデータの提供方法への対応など、さらに利用機関を増やしていく活用方法の検討を行いつつ、利用の有償化に向けた対応も進めていくこととしております。
11 水産業の振興について
近年、本県のサケ、サンマなどの主要魚種の水揚量は激減し、大不漁と呼ばれる状況にあります。
特に、サケは、沿岸地域の経済を支える重要な水産資源であり、かつて、平成8年度には約7万トンの漁獲を記録しましたが、その後は、2万トン台にまで減少、さらに、震災後は海洋環境の変化などによると思われますが減少を続け、令和5年度には、ついに、漁獲量は134トンと昭和38年以来の最低の大不漁となっています。
また、今期のサケ回帰予報を見ると、昨年とほぼ同水準の漁獲量が予想されているなど、沿岸の基幹産業である水産業は苦境に立たされています。
一方、近年、これまで岩手県ではあまり水揚げされなかった南方系の魚種が増えているとのことで、漁業者はもちろん、水産加工業者などの関係者においては、このような増加している魚種の有効利用に活路を見出すことも考えていく必要があると思います。
近年、県では海洋環境の変化により、どのような魚種が漁獲されているのでしょうか、また、増加している魚種の有効利用に向けて、県としてどのように取り組むのか伺います。
答弁
近年の海洋環境の変化等により、本県では、マイワシやブリ、シイラ、タチウオなどの暖かい海に住む魚種の水揚量が増加しています。
これらの魚種は、県内の消費者にとって馴染みが薄く、安価で県外へ出荷される場合が多いことから、県内での認知度を高め、単価の向上や加工原料としての活用を図っていく必要があると考えています。
このため、県では、加工原料としての成分分析を行い、水産加工業者を対象に、成分特性や加工方法等を学ぶセミナーを開催しています。
また、水揚量が増加している魚種等を対象とした新たな販路や物流のビジネスモデルの構築に向け、国内外の飲食店等のニーズ調査や販路開拓、魚種の特性を生かした加工品や調理の手間を省いた簡便商材の開発等に取り組んでいます。
今後は、増加している魚種の有効利用に向け、生産分野と流通・加工分野との連携を更に深めていくこととしており、海洋環境の変化に対応した水産業が展開されるよう積極的に取り組んでいきます。
11 水産業の振興について 再質問
海洋環境の変化などによる海水温の上昇は、コンブ等大型海藻類にも大きな影響を与えており、近年、冬場の海水温が高めに推移し、ウニ等が活発に活動することから、この時期に発芽したコンブ等大型海藻類の芽を食べ尽くすことで磯焼けが発生していると言われています。
藻場は、水産生物の成長や産卵場などの多面的な機能を持つほか、アワビやウニの餌場となることから、アワビ資源の減少やウニの身入りの低下が大きな課題となっています。
このため、県では、藻場の再生に取り組むこととしておりましたが、これまでの取り組み内容と、どのような成果があったのか、また今後どのように取り組んでいくのか伺います。
答弁
藻場再生についてでありますが、
県では、アワビ・ウニ等の資源の回復・増大に向け、ウニの間引きや、海中林の設置などのソフト対策と、ブロック等の投入による藻場造成のハード対策を、一体的に進めています。
これまで、県内5地区で海中林の設置等を支援するとともに、宮古市田老地区など4地区の10漁場において、地元漁業者と連携したウニの間引きと、ブロック投入等による藻場造成に取り組んでおり、今年度は新たに、宮古市重茂地区の3漁場で、ブロック等の投入に必要な漁場環境の調査等を進めています。
昨年度、宮古市田老地区等で投入したブロックには、コンブ等の海藻の繁茂が確認されており、今年度、ブロック投入が完了する2漁場を生かしながら、藻場の再生に向け、取組地区の更なる拡大を図ることとしています。
このため、国に対し、必要となる予算を安定的かつ十分に措置するよう要望するとともに、藻場造成に必要な予算の確保や重点化を図りながら、藻場の再生が着実に図られるよう、関係機関・団体と一丸となって取り組んでいきます。
12 森林・林業の振興について
(1) 森林の公益的機能の維持増進について
今年から森林環境税の課税が開始されます。個人住民税の均等割の枠組みを用いて、一人年額1,000円が課税されます。
森林環境譲与税は森林経営管理制度を踏まえ、市町村による森林整備等に必要な地方財源の安定的確保のため、いわての森林づくり県民税は公益的機能の維持増進及び持続的な発揮のために実施する森林環境保全に関する施策のために、制度が設けられました。県民負担は、森林環境税が6億円程度、県民税が7億5,400万円、県・市町村の収入は森林環境譲与税が19億100万円、県民税が市町村への徴収取扱費を除き7億2,100万円です。
私が強く訴えたいのは、森林環境税の考え方です。県民税のスタート時に言われていたことでもありますが、森林の整備、公益的機能維持は日本国として取り組むべきであり、国民一人一人が等しく負担をして、それを持って財源を森林面積で配分すること、つまりは森林の持つ公益的機能の理解を共有することが重要であり、それはすなわちローカル地域が都市部に貢献していることを理解してもらうことであります。
県民税は、第4期終了後のあり方を検討しているとのことですが、譲与税と県民税の両方を活用するなど、森林の公益的機能の維持増進等の取組をさらに面的に広げるべきと考えますが、県の見解を伺います。
答弁
「いわての森林づくり県民税」は、本県の豊かな森林環境を次の世代に良好な状態で引き継いでいくことを目的に、公益的機能の高い森林へ誘導する間伐などに活用しており、これまで、公益上重要な伐採跡地への植栽など取組を拡充しながら進めてきたところです。
また、「森林環境譲与税」は、林業経営の効率化と森林管理の適正化を一体的に促進することを目的とし、市町村では、森林所有者への経営意向調査などに活用しており、県では、市町村による取組が円滑に進むよう、専門職員の配置による技術的な助言などを行っています。
このように、県では、県民税と譲与税を活用した取組が県内全域に広がるよう、市町村等と緊密に連携して取り組んでおり、第4期終了後の県民税の検討状況も踏まえながら、今後においても、本県の豊かな森林の公益的機能の維持、増進が図られるよう取り組んでいきます。
(2) 県庁舎の木質化について
県庁舎の木質化について伺います
令和3年10月に公共建築物等木材利用促進法の改正がありました。脱炭素社会の実現に貢献するため、木材利用促進の対象を公共建築物から民間を含む建築物一般に拡大したものです。また、県は、議会発議での岩手県県産材等利用促進条例に呼応し、岩手県県産木材等利用促進基本計画及び行動計画を策定しました。県の公共施設における県産木材の率先利用や普及啓発などの施策を推進しています。そして、公共建築物の木造率は令和元年度、2年度と岩手県が第1位でした。雫石のグランドセイコースタジオや、道の駅田野畑など惚れ惚れする建築物が県内各地にあります。
さて、昨今、県庁舎のあり方の検討状況について、巨額の負担を伴うものであり、慎重な議論がされています。
新たな岩手県のシンボルにどのようなメッセージを込めるか。脱炭素に果敢に取り組む象徴的な建物を造る、林業に関わる方が誇りを持てるような建物を造る、域内経済循環に資する建物を造る、これらを踏まえ100年先を見据えた誇りを持てる建物を造る。そのためにどう準備をして組み上げればいいか、可能性を検討すべきと考えますが知事の考えを伺います。
答弁
次に、県庁舎の木質化についてでありますが、現在、専門家からなる有識者懇談会で議論いただく中で、脱炭素化と併せて、県庁舎の木質化の視点も重要であるとの意見をいただいております。
公共施設の木質化は、二酸化炭素を建築物に長期間貯留させることで地球温暖化防止に貢献し、また、県産木材の利用を通じて、地域の林業及び木材産業の振興や本県経済の活性化につながります。
「いわて県産木材等利用推進本部」を設置し、私自身が本部長として県立高校や駐在所、県営住宅等への県産木材の率先利用を進めてきたところです。本州一の森林面積を有する森林・林業県である本県は、昨年開催した全国植樹祭のレガシーとして、健全で豊かな森林を次の世代へ引き継ぎ、林業の持続的な発展や森林に対する県民の理解を深めていくことが重要であり、これらの理念を、県庁舎整備に反映するため、来年度から策定を開始する整備基本構想・基本計画の中で、他県の先進事例も参考にしつつ、具体的に検討してまいります。
13 沿岸部の産業発展戦略の策定について
三陸沿岸道路を軸とした、沿岸部の産業発展戦略の策定について、伺います。
7月末に自民党青年局の復興支援事業チームイレブンが来県し、北は北海道から、南は沖縄まで、全国各地から国会議員、地方議員の方々、60名を超える仲間に岩手県に視察に来ていただきました。盛岡駅をスタートし、浄土ヶ浜、田老観光ホテル、東日本大震災復興記念公園と新たにできた道路を通り、駆け足で案内をさせていただきました。また、バスの車内ではこれまでの復興の取組について県が作成した資料をもとに魂をこめて皆様に説明をさせていただきました。
改めて全国から多くの支援をいただいたことに報いるためには、この先の三陸の発展を沿岸市町村と岩手県とで将来ビジョンを共有し、それを内外に発信しながら取り組んでいくことが大事です。以前も質問させていただきましたが、三陸沿岸ゾーンプロジェクトに関して中長期であるが故に目標、指標を設定しないのはなかなか理解されません。改めて、震災後にできた三陸沿岸道路を背骨としてそれに連なる事業、キーワードとして、観光、(三陸DMOを核とした入込客増のための連携)、物流、(港湾活用、フェリー航路休止休線もありましたが道路ができたことによる効率化)、今大変な状況にある水産業、それぞれの分野で最大限に三陸沿岸道路を活用した合理的連携をして取り組んでいくべきであり、きっかけとして自治体も力を入れる道の駅、(特産品の開発と適切な競争)、などから広げていくべきと考えます。統計値を切りはりする計画ではなく、県として市町村をはじめとする方々と目標を一緒に作ることは大きな動きになると思いますが知事の所感を伺います。
答弁
次に、沿岸部の産業振興に係る総合的な戦略の策定についてでありますが、議員御指摘のとおり、三陸沿岸道路の全線開通による効果は非常に大きく、大幅な移動時間の短縮や輸送コストの軽減が図られています。
県では、いわて県民計画(2019~2028)のアクションプランである「第2期復興推進プラン」に基づき、
・ 新たに整備された交通ネットワークを活用した物流体制の構築や魅力ある観光地づくりの推進
・ 基幹産業である水産業の再生
・ 中小企業の経営力の強化
など、地域資源を活用した産業振興や交流人口の拡大に取り組んでおり、毎年度、施策の評価を行い個別の事業の実績や成果を検証しながら取組を進めています。
「三陸防災復興ゾーンプロジェクト」については、
防災ツーリズムや港湾の利用促進、クルーズ船寄港誘致、近年の主要魚種の不漁問題等に対応した新たな水産物の販路・物流モデルの構築、海業のビジネスモデルの構築支援等に取り組んでおり、それらの事業の多くについては、目標も指標も掲げているところです。
これらのプランやプロジェクトは、東日本大震災津波復興委員会や地域連携懇談会、三陸振興協議会等、有識者、関係団体等で構成されるそれぞれの会議体において、その推進や評価の審議等がなされておりますが、今後の沿岸部の産業振興に係る総合的な戦略や施策の在り方についても、こうした場を通じ、御意見を頂き必要な対応を検討していきたいと考えます。
13 沿岸部の産業発展戦略の策定について 再質問
沿岸部の産業が厳しい状況にあることから、自治体や商工団体も含めて、今までやっていないことをやることによってモチベーションを上げていく空気ができると良いと思いますが、知事の見解を伺う。
答弁
まず、沿岸部の産業発展戦略の策定については、今の再質問の中で、県と市町村の連携が重要であるということと、道の駅の活用が重要であるということをおっしゃられたと思いますが、それはその通りだと思います。
そして、何か新しいことをやって、このモチベーションを盛り上げたいということもその通りだと思います。
先ほど、岩崎議員はむしろ毎年同じことを続けることで、経済効果をということがありましたけれども、同じことを続ける継続も大事ですし、また、新しいことを行っていくということもそれぞれ大事なんだと思います。
県、市町村の連携、そして道の駅の活用は、既にやっていることをそれぞれ担当の部長も答弁可能かとは思いますが、それを細かく今ご質問する趣旨ではないと思います。
この戦略という次元で、そうした県と市町村の連携、道の駅の活用を取り入れていくということ、これは非常に重要だと思いますのでやっていきたいと思います。
14 知事の政治姿勢について
(1) 市町村要望について
昨年から知事は14年ぶりに市町村要望に出席されています。今年は2年目となります。昨年の一般質問では、コロナ禍や物価高騰による地域の実情や人口減少対策等について、市町村長の生の声を直接聞くことができ、よい機会であったと、市町村からの要望内容については、新型コロナ対策や主要魚種の不漁対策など、その時々の時勢に沿って変遷しているものもあれば、道路整備など継続的なものがあり、市町村の課題に沿った要望が出されているものと考えております、との答弁がありました。
市町村長に聞くとやはり決裁権者である知事にお話することができることはありがたいとの声があったところです。過去の答弁では地域事情に精通する職員が対応する方が合理的であるとの理由で振興局長に任せていました。2年目の市町村要望に関して今年はどのように感じられたのか、また、市町村からの要望に対して知事がリーダーシップをとって対応を検討するように指示したものはあったのか伺います。
答弁
今年度は、全ての市町村要望に出席し、物価高騰や人口減少対策等の喫緊の共通課題やそれぞれの特有の課題について、市町村長や市町村職員の生の声を直接聞けたほか、私も自分の考えを様々述べることができ、有意義であったと考えています。
市町村によっては、要望事項を説明する際に動画を活用するなど様々工夫を凝らすようになってきており、説明の手法についても、質的な充実が図られてきたと感じています。
また、要望内容については、日常的に地域の実情やニーズを把握し、それぞれの地域課題に精通している広域振興局長から、私を含めた幹部職員に報告を行い、全庁的な情報共有や議論を経て、翌年度の予算編成につなげています。
今後においても、県と市町村が連携して様々な政策課題等の解決に取り組んでいくため、より良い市町村要望のあり方について検討して参ります。
(2) マニフェストプラス39の工程表について
次に、マニフェストプラス39の工程表について伺います。
前回の一般質問ではマニフェストプラス39の各項目について、財源の問題や既存の施策との関連等を全庁で検討しているところであり、市町村を初め、関係団体とも連携、調整を進めながら、その具体化を図ってまいりますとの答弁でした。今年度の予算では39の項目について一定程度示されたところですが、まだ、いつ何をするのかというものは見えてきていません。市町村要望においても首長からマニフェストプラス39に関する要望、期待も直接お聞きになられたでしょうし、本日の私の質問の中にも具体的な項目もありました。私は、政治家の仕事は日程を決めることと教えられたこともあります。知事任期は387日が経過しました。残りは1073日となります。マニフェストプラス39の実現に向けた工程表を示していただきたいが知事の所見を伺います。
答弁
次に、マニフェストプラス39についてでありますが、先ほどの岩崎友一議員へのご質問でご答弁申し上げたとおり、マニフェストプラス39の各項目に掲げた内容については、既に実施しているものや、予算を措置して事業に着手しているもの、検討会やワーキンググループなどで具体的な検討を進めているものなど、それぞれ実行に移しています。
既に実施しているものとして、例えば、
・ 項目1「子育て支援策の展開と拡充」では、全国トップクラスの子育て支援策の展開、
・ 項目2「子どもの居場所・遊び場づくり」では、大船渡市のこども家庭センター「DACCO」や、オープン間近の遠野市のとぴあ子ども木の空間木製遊具の設置、
・ 項目10「中小企業の振興」では、賃上げ環境整備支援の実施、
・ 項目11「地域の産業を担う人材の育成・確保」では、いわてグリーン農業アカデミーの設置、
・ 項目31「自然災害への対応と社会資本の長寿命化」では、基幹河川の改修や日常的・応急的な道路の維持・修繕、
・ 項目32「持続可能な地域交通の確保」では、乗合バス運転士を確保する取組への補助
を実施しており、さらには、項目3、4、6、12から23、25、26、29、33から39に掲げる内容についても、順次実施しています。
また、事業に着手しているものとして、
・ 項目9「福祉と生活を支える一元的な相談支援体制の構築」における、福祉総合相談センターと県民生活センターの一体的整備
などがあります。
さらに、検討会やワーキンググループなどで具体的な検討を進めているものとしては、
・ 項目5「持続可能で希望ある医療体制の構築」、
・ 項目7「リハビリテーションセンターのサテライト施設の整備」、
・ 項目8「スポーツ医科学センターの建設と活用の検討」、
・ 項目24「中山の園の整備」、
・ 項目28「三陸振興を総合的にプロデュースする「まちづくり会社」の設立」、
・ 項目30「道路ネットワークの整備」
などがあります。
このように、マニフェストプラス39にお示しした内容を進めているところであります。
14 知事の政治姿勢について 再質問
(2) マニフェストプラス39の工程表について
マニフェストプラス39の工程表について、どのくらい時間がかかるのか。
答弁
マニフェストプラス39の工程表について、どのくらいの年月がかかるのかということですけども、それぞれの項目1から39まで担当が説明できますけれども、それを求めているわけではないと思います。
先ほど岩崎議員にも答弁しましたけれども、これは庁議で決議を行い、県として組織的に決定した答弁であり、39の項目が具体的にどうなっているかということについては、それぞれの担当部長が答えられるように打ち合わせもしております。
岩崎議員、佐々木議員も言及された、そもそも実行するつもりがあるのかということについては、やっているということをお答えできると思います。
マニフェストプラス39の中で、例えば箱物の場所や内容など、まだ決めていないようなことに関しては、どのくらい時間をかけて作業を進めていくかも含めて、県民的な議論の中で決めていくべきものと考えておりますので、県民とともに県の行政組織としてベストを尽くす形で、できるだけ早く実行するということが基本ではありますが、同時に、民主的な手続きを踏まえ、専門的な意見や関連する一般の県民の皆さんの意見もいただきながら、進めてまいります。
これらの原理原則を踏まえ、さらに具体的に個別の項目に関し、さらなる質問があれば、担当の部局長から答えさせます。