マルクス「資本主義的生産に先行する諸形態」(6)

2022年03月07日

 戦争を肯定的に言及しているので、現在のロシアによるウクライナ侵攻を正当化できるのか、と思った。
 だが、マルクスは「共同体は、他の共同体から脅かされた場合、戦争する必要がある」と言っていて、むしろ、ウクライナの立場に相当している。
 木前利秋訳では、他の訳の軍事、戦闘に対し、引き続き、戦争という訳語が使われている。
 ここでは、資本制以前の、諸々の家族という規模の共同体を説明しているので、現在のロシアやウクライナのような規模の国家間については、比喩的な示唆になるだけかもしれない。

Karl Marx
Formen, die der kapitalistischen Produktion vorhergehen

|52| Die Schwierigkeiten, die das Gemeindewesen trifft, konnen nur von andren Gemeindewesen herruhren, die entweder den Grund und Boden schon okkupiert haben oder die Gemeinde in ihrer Okkupation beunruhigen. Der Krieg ist daher die grose Gesamtaufgabe, die grose gemeinschaftliche Arbeit, die erheischt ist, sei es um die objektiven Bedingungen des lebendigen Daseins zu okkupieren, sei es um die Okkupation derselben zu beschutzen und zu verewigen. Die aus Familien bestehende Gemeinde daher zunachst kriegerisch organisiert – als Kriegs- und Heerwesen, und dies eine der Bedingungen ihres Daseins als Eigentumerin. Die Konzentration der Wohnsitze in der Stadt Grundlage dieser kriegerischen Organisation.
http://www.zeno.org/Philosophie/M/Marx,+Karl/Formen,+die+der+kapitalistischen+Produktion+vorhergehen

マルクス「資本制生産に先行する諸形態」(佐藤進訳、河出書房)
共同体が遭遇する困難は、他の共同体から、すなわち、すでに土地を占拠しているが、またはその共同体の占拠を脅かすかする他の共同体から、おこりうるだけである。それ故、戦争は大きな全体的任務、大きな共同事業となるのであって、それは、生存の客観的諸条件を占拠するためであるか、その占拠を保全し、永久化するためであるかに拘らず、必要とされるのである。それ故、家族からなる共同体は、はじめは、軍事組織、軍隊として、戦闘的に組織されるが、これはまた、共同体が所有者として定住するための諸条件の一つなのである。都市における居住地の集中は、この戦闘的組織の基礎である。

マルクス「資本主義的生産に先行する諸形態」(手島正毅訳、国民文庫)
共同団体〔Gemeindewesen〕が出会う困難は、他の共同団体からのみおこりうる。すなわち、他の共同団体が土地をすでに占拠しているか、でなければ占拠している共同体をおびやかすかするのである。だから、戦争は、それが生存の客観的諸条件を占取するためであろうと、その占取を維持し、永久化するためであろうと、必要にして重大な全体的任務であり、重大な共同的作業である。だから家族からなっている共同体は、さしあたり軍事的に編制されている――軍制および兵制として。そしてこれが共同体が所有者として生存する条件の一つなのである。住所が都市に集合するのが、この軍事組織の基礎である。

マルクス「資本制生産に先行する諸形態」(木前利秋訳、筑摩書房)
共同体組織Gemeindewesenが困難に突き当たるとしたら、困難の原因となりうるのは、あくまで他の共同体組織だけである。土地をすでに占拠したために不安の種となり、あるいは〔これから〕占拠することで不安の種となる他の共同体組織だけである。だから戦争が重大な全体の課題になる。生きて生活していく上での客観的条件を占拠するためであれ、その占拠を守って永続させるためであれ、不可欠の共同の仕事になる。だから諸々の家族からなる共同体は(軍事および兵事の集団のかたちで)さしあたり戦争を目的に組織される。そしてこれが、共同体が所有者として生き残るための条件の一つになる。居住地を都市に集中させることは、戦争を目的にした組織のための基礎である。

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