うらたろう再読・レビュー①

最近中山敦支のうらたろうを再読したのだが、剰りにも最高だったので筆を執る次第。試し読みは下のリンクから。

粗筋
源平合戦で平家が逆転勝利したパラレルワールド、六波羅時代。不治の病に冒されるヒロインの平千代が、不死の体を持つ伝説の鬼人、温羅太郎と出会う。生きたい者と逝きたい者が、不老不死伝説のある黄泉比良坂を目指して一緒に旅をしていく(第一幕)。

正直ヤンジャン本誌で追ってた時は「悪い意味で打ち切り臭が凄いな」と思いながら読んでいた。が、改めて読み返してみると、エピソード毎の完成度が高く、何故打ち切りになったのか? と手のひらを返して疑問に思った(色んな事情がある可能性もあるので簡単に言えないが)。第二幕後半からの展開は捲っているものの、描きたかったであろうテーマは一貫して表現し切ってたと感じた。

過去の中山作品で顕著だった、画力不足やキュビズムの多用は今作では見られないので、中山作品デビューに向いてる…… といいたい所だが、最後(第二幕 回生編)にエグい展開があるので耐性が無いとかなりキツい物となっている。同作者の作品であるトラウマイスタやねじまきカギューから入るのがまだ無難かな。

中山敦支は死生観をテーマに漫画を描きがちだが、最初から最後迄一貫した物語を描いたのはうらたろうが初ではないか。

読み返してみると、温羅太郎が滅茶苦茶可愛いなと思った。

単行本二巻の初の扉絵では、上のツイートの2枚目が使われていた。画力もセンスも並の漫画家のそれではない。

黄泉比良坂の夜空は、ゴッホの星月夜のオマージュである。

一つだけ惜しかったことを語る。第一幕の刺客の一人、伏丸について。中山敦支が手癖で描いたのがとても分かり易いキャラであり、男女共に人気が出そうなキャラだった。しかし再登場フラグを立てて退場したもののそれが最後の出番となってしまった。復讐心を持っており、戦闘面での伸び代もあっただけに残念である。まあ伏丸及び第一幕で目立っていた他の人物も第二幕での出番があった者は殆ど居なかったが。

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