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日本初!LNG燃料フェリー「さんふらわあ」環境に配慮し新たな観光需要を生み出すブルーエコノミー
こんにちは、笹川平和財団の活動をレポートするquod編集部です。
このnoteでは、笹川平和財団の取り組みを通して「環境問題」「国際問題」といった、なんだか聞くだけで難しそうなテーマを、できるだけ分かりやすく、そして興味を持ってもらえるように紹介していきます。
これまで“海のSDGs”と言われる「ブルーエコノミー」や、そのブルーエコノミーの取り組みを加速させる「Jブルークレジット」について紹介してきました。
第三話では、ブルーエコノミーとも関連する日本初のLNG(液化天然ガス)燃料フェリー「さんふらわあ くれない」について紹介します。
■瀬戸内海で広がる“海のSDGs”「ブルーエコノミー」
海の環境に配慮しながら、経済を成長させる「ブルーエコノミー」。
「SPFブルーエコノミープロジェクト」は国内外で進む最先端のブルーエコノミーの現場に、笹川平和財団の角南篤理事長が訪れ、今後の可能性や課題を探る企画です。
第3弾は、観光や海上輸送の面でブルーエコノミーに貢献している、日本初のLNG燃料フェリー「さんふらわあ くれない」に乗り込み、その実力を徹底取材しました。
YouTube動画には盛り込みきれなかった部分を含めた今回のプロジェクトの全容をレポートします。
(quod編集部)
■LNG燃料フェリーが加速させるブルーエコノミー!
2023年7月、笹川平和財団の角南篤理事長と、フリーアナウンサーの瀬戸あさ美さんが訪れたのは、大阪南港(大阪市)に停泊中の“最新鋭フェリー”「さんふらわあ くれない」です。
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この船の最大の特徴は、LNGを燃料として走る点にあります。
2023年に、国内初のLNG燃料フェリーとして就航。同じ構造を持つ「さんふらわあ むらさき」との二隻体制で、大阪—別府(大分県)間を運航しています。
全長199・9メートル、幅28メートル。総トン数は約1万7100トンで、これまでの船の1.8倍の大きさを誇ります。
株式会社フェリーさんふらわあ(10月1日付で商船三井さんふらわあに社名変更)の尾石実さんが、角南理事長と瀬戸さんの案内役を引き受けてくれました。
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◇LNG燃料フェリー どう環境に優しい?
瀬戸:さっそくですが、LNG燃料フェリーは環境負荷が小さいということなんですが、具体的にはどういったメリットがあるのですか?
尾石:温室効果ガスの排出量を大幅に削減しております。二酸化炭素 (CO2)の排出量を約25%、窒素酸化物(NOx)を約85%、従来より削減しました。さらに、硫黄酸化物(SOx)排出量は、ほぼゼロです。
瀬戸:すごいですね!目で見てわかる特徴というのは何かありますか?
尾石:従来の船でしたら、ファンネル(煙突)から黒煙がもくもく上がるのですが、この船の場合、ほぼ水蒸気しか出てきませんので、いわば“透明な煙”という形になります。
角南:昔は小学生が夏休みの宿題なんかで絵を描くときに、船といえば煙突から出る黒い煙を描くのが当たり前でしたけど、これからは、煙突から出る煙は描かなくなるんですね。これは画期的です!
◇LNG燃料フェリー ブルーエコノミーとの関わりは?
環境面で優れた性能を発揮するLNG燃料フェリーですが、それでは、海の環境に配慮しながら経済を成長させる「ブルーエコノミー」とはどのような関係性にあるのでしょうか?
前回訪れた大阪府阪南市では、アマモの再生・保全活動と同時に、牡蠣の養殖などが始まっていて、「水産業」が経済成長の原動力となっていました。
でも、海に関連する経済活動といえば、水産業だけではありません。
たとえば海上輸送や観光、洋上風力発電など多岐にわたります。
このLNG燃料フェリーは、「観光」「海上輸送」という2つの面で、経済を力強く動かしているのです。
このうち、観光面での貢献がよくわかるのが、LNG燃料フェリーを活用して行われる「昼の瀬戸内海カジュアルクルーズ」。
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「さんふらわあ」は関西—九州間の「移動手段」としての役割を主に担っているため、普段の運航は深夜から早朝にかけてなのですが、環境に優しいLNG燃料フェリーを活用し、昼の瀬戸内海の景色を楽しむことを打ち出したこのカジュアルクルーズは、環境意識の高い乗客たちを多く惹きつけて大人気となっていました。
女性客:環境に優しい船で旅行を楽しめるのがすごく良いです!
男性客:政府が2050年のカーボンニュートラル達成を掲げる中、フェリーさんふらわあの取り組みに共感します。
◇LNG燃料フェリーの構造は?
尾石さんが、まず2人を連れていってくれた場所は、LNG燃料タンクが搭載されている船の後部です。
尾石:この先にエンジンとLNG燃料タンクがあります。ただ、甲板からはあえて見えない造りにしています。特にタンクは、なんとなくお客様に安全性への不安を与えてしまう可能性があるものですから、目隠しさせていただいています。
LNG船の「安全」の確保は当然ですが、船の中で過ごす乗客に「安心」を与える、細やかな配慮がなされていました。
ちなみに、船尾に積まれたLNG燃料タンクへの補給が行われるのは、大分県の別府港に停泊しているとき。
九州電力のグループ会社が保有するタンクローリー4台から、ホースをつたって同時に供給される仕組みです(Truck to Ship方式)。
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◇LNG燃料フェリーの中へ
角南理事長と瀬戸さんの2人は、許可を得て今度は船の内部を探索します。
角南理事長が真っ先に向かったのは・・・なぜか大浴場。
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角南:やっぱり、さんふらわあといえばお風呂ですから(笑)。これはすごい!瀬戸内海の景色を見ながらお風呂につかれば、疲れも吹き飛びますね。
さらに、客室にも潜入!
8階フロアにある客室は、全室スイートルーム。
部屋から瀬戸内海の絶景を堪能できるよう、バルコニーもついていました。
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また、以前のフェリーでは「雑魚寝」のスペースがありましたが、「さんふらわあ くれない」「さんふらわあ むらさき」の2隻からは、相部屋でもベッドで寝られる仕様に変わっています。
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そして・・・今回、特別な許可を得て、入らせてもらったのが、最新鋭のLNG燃料フェリーを動かす「操舵室」です。
巨大なコンパスがある一方で、船の進行方向を決める「操舵」は、意外にも、車のハンドルより一回り小さくなっていました。
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■最新鋭フェリーの探索を終えて・・・
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尾石:私が入社した当時のフェリーと比べると、LNG燃料フェリーは大幅に変わっています。今回、こうして来ていただいたことに、私どもとしては、とても嬉しく思っているんですが、どういう感想をお持ちになりましたか。
瀬戸:これまでフェリー自体にあまり乗る機会がなかったんですが、最新鋭のものは、こんな風になってるんだと驚きました。ブルーエコノミーにも貢献できますし、プライベートでも是非乗ってみたいと思いました。
角南:これはもうフェリーというか、クルーズ船ですね!楽しみながら移動できるのは最高です。瀬戸内で育った僕としては、フェリーというと島と島、本州と島の間を移動するだけの手段でしたが、今は、クルーズのようにも楽しめる。ブルーエコノミーの視点でも、素晴らしい取り組みではないかと思いました!
■ ■ ■
■「日本初のLNG燃料フェリー」の学び
→「さんふらわあ くれない/むらさき」
2023年に就航した日本初のLNGを燃料として運航するフェリー。
出港時以外、黒煙は出さず、ほぼ水蒸気の透明な煙しか排出しない。
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→「LNG燃料フェリーの環境への効果」
二酸化炭素 (CO2)の排出量を約25%、窒素酸化物(NOx)を約85%、従来より削減。硫黄酸化物(SOx)排出量は、ほぼゼロ。
さらに、関西〜九州間の物流トラックの海上輸送も担い、トラックから排出される温室効果ガスを減らすことにも寄与している。
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次回は、LNG燃料フェリーの導入を決断した 株式会社フェリーさんふらわあの赤坂光次郎社長(撮影当時)が登場!
※2023年10月1日付で「フェリーさんふらわあ」は「商船三井さんふらわあ」へ社名を変更し、赤坂光次郎社長は副会長執行役員に就任。
角南理事長とともに、世界に向けての発信を目指す「瀬戸内ブルーエコノミー構想」について話し合います。お楽しみに!