練り物の、歌い手さんを、褒めるやつ ~miyakan。/INAZMA 編~
この記事は、しがないというか、もう「さ」くらいから無い大学生の練り物笹かにかまが、尊敬する歌い手さんの歌ってみたを聴いて抑えきれなくなったクソデカ感情を文章としてまとめたやつです。
初の企画となる今回、練り物がチョイスしたのはこの楽曲ゥ!
どぅるるるる、しぱぁ~!(下手くそすぎるボイパ)
NOMELON NOLEMON / INAZMAのmiyakan。さんによる歌ってみたカバーです。
この楽曲を作られた素敵な本家様のオリジナルはこちら
この曲のサビの歌詞、非常に印象的で、聴いたことがある人なら自然と口ずさんでしまうのではないでしょうか。
びかびかどくどくちくたくしくしくめらめらぐしゃぐしゃ、胸の奥が騒ぐ。それを掻鳴らすこと、歪さを叫ぶことこそがロックンロールの正体。あたしに鳴れINAZMAよ。
この曲の歌詞で、「ロックンロールたぁ何ぞや」という本質情報が書かれておりまして、まぁそうした胸のざわめきがどんなものなのか、そしてそれを叫ぶ声とはいったいどんなものなのか、この辺が歌い手さんによって解釈や表現の仕方が分かれてきて、面白い作品になってます。
さて、まずは四の五の言わずに、miyakan。さんがこのロックンを如何様にロールなさっているのか聴いてみましょ。それでは、ラスサビの歌唱をどうぞ。
・・・・・・。
おっ・・・
おっ?わっ?あっ!ああああああああ!!!
ウワアアアアアアアッッ?!?!
(気持ち良すぎて逆に気持ち悪くなってきた人)
まぁこのように、表現力がずば抜けすぎていて油断していると正気を保つことができないってわけ。
ということで、今回は笹かにかまイチオシのこの作品のここ好きポイントを、余すことなく…、いやそれだとたぶん書き終わった頃に朝になってるので、睡眠時間を確保できるくらいに適度に余しながら、紹介していきたいと思います。余った部分は各自miyakan。さんの音源を聴いて補完すればいいんだと思います。
では早速本題に入っていくぅ。
まずは開始5秒目の最初の発声を聴いていただこう。
「ンだぁってほら、そうやって」
初手、ゴーストノート。
ゴーストノートを知らない人のために解説すると、主要となるメロディの前に小さいアクセントを加えることによって、メロディ全体をリズミカルに聴かせる手法のことですね。今回で言う「ンだぁって」の「ン」の部分がそれにあたります。
もう最初の一言目を発する前からなんかすでに技巧が光ってて眩しいです。目がチカチカするのは眠気と闘いながらPCの前でnote書いてるためだけではないかもしれない。miyakan。という男は、こういうジャブをなんの前触れもなくかましてきてリスナーを昏倒させることに定評のあるヤツなんです。くれぐれも油断しないでください。
ア~!息吸った時の勢いで裏返る声帯の音~!!
フレーズの間のブレスに注目…じゃないか注耳してください。
この「ンヒィ…」って感じのブレス、良くない???(同意を求める顔)
実際にやってみると分かるんですが、喉に一定のテンションがかかってないとこの音出ません。つまり、次の歌いだしを情熱的に歌おうとしている前準備として繰り出されたのが、このブレスなわけですよ。
歌いだす前から、このブレスの気迫でこの人がどれくらいのアツい気持ちでこの曲に向き合っているかが伝わってきます。どんだけ情熱かけてスタジオ入りしてんだコイツは。
あと、このブレスを良く聴かせるために、実は陰で一役買っている人物がいます。この歌ってみたをMIXされている、MIX師のサカモットゥーさんです。ブレスってなかなか扱いが難しくて、音量が小さすぎるとノイズゲートで雑音としてカットされてしまったり、オケに埋もれてしまったり、逆に大きすぎると耳に刺さって聴きづらくなってしまうんですわ。
おそらく、このブレスが埋もれず刺さらず、心地よく聞こえるために、陰でMIX師が暗躍している可能性が大いにありますので油断しないようにしましょう。油断すると尊さにやられて命を失います。
ちなみにクソどうでもいい話だけど、僕とサカモットゥーさんのtwitterのIDがやたら似ているので、勝手に親近感を抱いています。
忘れたいことも忘れられないわ
前半部「忘れたいことも」を地声発声、後半部「忘れられないわ」を裏声をメインにした発声に切り替えながら歌っていて素晴らしいですね。
「忘れたいこと」に少し苛立ちの籠ったニュアンスを感じます。miyakan。さんは、この曲の主人公が抱える「忘れたいこと」が、思い返すだけでむしゃくしゃとしてくる系なアレのやつだと解釈して歌ってるのかもしれません。
それとは対照的に、裏声から入る「忘れられないわ」では、物事が思い通りに進まないやるさなさだったり、切なさというのを、声の質感や表情によって巧みに演出してますよね。何でしょうね、この1秒の間で喜怒哀楽の半分を表現してしまう男は。
あと、「忘れられないわ」の語尾を「忘れられないわンあぁ~」というような感じに処理してますね。この「ン」の部分で、語尾を地声から裏声に切り替えてしゃくりあげながら切る「ヒーカップ唱法」というのをさりげなく使ってます。これ慣れてない人がやると語尾がしつこすぎて気持ち悪くなってしまうんですが、そこはさすがmiyakan。味な演出はお手の物といったところでしょうか。
ここでヒーカップ唱法で歌う良さとしては、歌詞の悲壮感を上手に醸し出せるということがあると思います。例えばここを、「忘れられないわっ」と、弾んで歌ってしまったら、この部分のリズム感が軽やかになりすぎて歌詞から漂う切なさというのが薄れてしまうかもしれません。
それから、0:16の語尾で「あぁ~あ↓」と何気なく音程を加工させて音を切るというやり口、かっこよすぎません?もはやかっこよすぎて同じ男としてムカついてきました。一回も会ったことないけど、今度会ったときにタダで済ますつもりはありません。
犯人扱い
ヒーカップ唱法を応用して、「犯人」の語頭を裏声から地声に下げてくるというテクを使ってます。かっこいいです(小並感)。あと「扱い」の語頭にエッジボイスを効かせてますね。心憎いです(急に出る語彙力)。
これ面白いのは、「犯人扱い」って言葉、単なる名詞であって感情を表す言葉ではないですよね。なのに、上のような歌い方の工夫によって、聴いてる側が「あっ、きっと今、主人公はこんな気持ちなんだ」と自然に想像できてしまう。これが表現力オバケの恐ろしいところです。
鼓膜を塞ぎあたしに問うの「を」
発声の響きを後ろに引っ張ってきてます。これによって発声に深い響きが出て、グルーヴ感につながっているのと、「鼓膜を塞ぎ」という歌詞の強いイメージと歌い方がリンクしてていい感じです。
あと「今日もプラスチックで鼓膜を塞ぎ」って歌詞いいなぁ。プラスチックの無機的な語感(まぁプラスチックは有機物なんですけど)と、鼓膜という生体的なワードの対比感が面白い。
シンプルなのにエモさ漂うコーラス
前半「何のための唄~あみだくじ?」で下ハモ、後半「教えてくれ、応えてくれ。」でオク下のユニゾンというハモリ構成になってます。これ割と歌い手あるあるなのですが、ハモリ自分で録らずにMIX師さんに生成してもらいがち、録ってもリードに較べて適当になりがちっていう業(カルマ)があるんですわ。キャッ!言っちゃった!
でも、miyakan。さんはちゃんと毎回自分でハモリ体を丁寧に録音しているんですねぇ。ちなみにソースはサカモットゥーさんの質問箱。
僕はこの回答見てから、自身の歌ってみたでもコーラスの録音にこだわり始めましたね。miyakan。に一歩近づけるならなんだってするぜ俺ァよ。ちなみにハモリこだわり始めると収録時間が従来の2~3倍に増えます。辛いです。
僕の泣き言はさておき、このコーラスライン何が素晴らしいかって、まずは普通に歌がうめぇんでコーラスラインの歌声の表情までハッキリ見て取れるところなんですね。結構、ハモリの部分ってリードボーカルの邪魔をしないように平坦に歌うことが多いんですが、構成がシンプルな分、綺麗にニュアンスを揃えながらリードは情熱的に、コーラスは少し落ち着いた表情でという二面性を持たせた仕上がりが成立しちゃってます。
ここに関しては、サカモットゥーさんのMIXの腕前も光ってます。リードとハモリがぶつからないようにうまく音量やイコライジング(音源の中で、聞こえの良くない周波数帯を削ったり、逆に聞こえがよくなる周波数帯を盛ったりして、音像をスッキリさせる作業)を調節しながら、ちゃんとハモリの歌声の質感も損なわないようにまとめてますね。結構この辺の処理はMIX師さんのやり方によって聴こえ方が変わってくるところだと思います。サカモットゥーさんのMIXからはとにかくmiyakan。さんの歌声の魅力を余すことなく伝えたいという真心がひしひしと伝わってまいります。
miyakan。さんのMIXはサカモットゥーさんが担当されることが多いのですが、この二人の組み合わせが尊くって尊くって一生ここを箱推ししてます。
「稲妻は悲しい雨の日~」からのシーン切り替え
先ほどまでのアップテンポのロックとは打って変わって、だいぶ落ち着いたメロディへと曲調が変化します。それに合わせて、miyakan。さんの歌声にも裏声成分がUP!それに合わせて、サカモットゥーさんが裏の方でリバーブ(残響)の掛かり具合をUP!一瞬にして、「雨の降りしきるウェットな情景」の出来上がりです。映像の中の雨天の風景ともよくマッチした音作りになってますよね~!裏で鳴ってる高音コーラスも気持ちいいです。
あと、何気にヤバいのが、「稲妻は哀しい雨の日、静寂を照らす為に有るのさ。」の語尾の切り方。「有るのさぁ~んぁ」って切ってます。フワッと切って終わりというのがよくある締め方だと思うのですが、あえて一度語尾を歌い直すという変態的な切り方をしています。今までにあんまり聴いたことない語尾の処理なんだけど、これがまぁどうして違和感なく良いアクセントになってるんですよね。発明ですね、パクらせてもらいます(おい)。
疾走感ある「それならば~」
リバーブが、かなり遅めのディレイ(音が遅れて聞こえるやつ)のかかり具合でリードボーカルを追っかけるように後ろの方で鳴っているんですが、この「後から追いかけてくる感じ」がこのフレーズ全体の疾走感につながっているんだと思います。このMIXの仕方、技ありですね、パクらせてもらいます(おい)。
高すぎるのに高さを全く感じさせないサビ
ここ原キーで出すって何?
最高音E5ってマ?全然高い感じしないんですが。この人の喉がどうなってるのか分かりませんが、高音を太く地声っぽく発声しているおかげで、男性にとっての超高音を全く自然に出してるように聴こえちゃうんですよね。ハ?
あとこんな高音ひねり出しながら「胸の奥が騒ぐぅう~」とか同時にこぶしかけちゃってますからねこの人。どうしたらそのポテンシャル出せるのか僕には一向に分かりません。教えて偉い人。
まるで悲劇におけるヒロインぶって
既に文字数が4,000字を越えてまいりましたが、やっと2番です(僕の文章がクソつまんな過ぎてもはや誰もここまで読んでないという悲劇が起こってないことを祈ります)。
ヒロインの部分に下降形のフェイクアレンジをかけ、「まるで悲劇におけるヒロインぶって」の歌詞のやっかみ感や、「悲劇のヒロインっぽさ」を表現してるのいいですよね。ここに軽い歪みの効いたエフェクトが挿さることで、歌詞のダークさが一層際立っているの、ホントにMIXがいい仕事してます。
救ってくれ、ひとひらの電撃で
この「救ってくれ」の「すくぅ↑ってくれ」という裏声を間に挟んだ発声が非常に良き。これにはさすがの神様も救いの手を差し伸べてしまうことでしょう。だが笹かにかま、お前はダメだ。僕はこの表現の尊さに耐えきれず絶命してしまった!
その直後の「電撃でーえー!!」のしゃくりあげ、凄い電撃感あって好き。この電撃感により心臓をマッサージされて笹かにかまは息を吹き返したのであった。命拾いしたな。
ちなみにですが、「電撃で」の部分とその後に続くサビを別録りにして、リードが重なる部分をつくることで、楽曲に奥行きと疾走感が出てていいですね。あえて録音するフレーズを分けることによって、生歌では再現できない音響感を生み出すことができるのも、歌ってみたの魅力ですわ。
2番サビ終わり怒涛の展開
これにはさすがの笹かにかまもニッコリ。
「INAZMAよ」の語尾にカットアップ(音源を細かく切り刻んで、機械的に音を切ることで独特の音色を出す手法)を入れてからの、超高音A5bシャウト。なんかもうハマりすぎてこれ以外ないって感じのアレンジですね。MIX師と歌い手の友情コンボ。
なんかシャウトの時のmiyakan。さんの声、後ろで鳴ってるギターよりも「ギターソロしてまっせ~!」の雰囲気がある。miyakan。はギターだった…?
お前の声帯をよこせ、2枚でいい。
あんだけ頭おかしいシャウトした後に訪れる、この優しい裏声。ホントにこの人の声のふり幅はどうなっているのか。考えれど考えれど、頭の中には「?」マークが浮かぶばかり。何とかしてこんな風に歌えねぇかと思って2時間無言でPC打ってる体引き絞ったら、ヒキガエルの断末魔みたいな音出た。
この音が鳴りやむ頃には
それまでの大人しめの音像から、一気に加速してラスサビへと入っていくシーン。まずそれまで鳴っていたリバーブの残響感がスッと薄れて(ナイスMIX!)miyakan。さんがめっちゃガナリの効いたボイスで暴れ始める。
僕は、「高音出ない」「地声張れない」「ガナリが弱い」という三重苦を背負った歌い手の生き地獄なので、こういう歌唱ができるシンガーはもれなく憧れちゃうね。
あと、MIXに関して、ボーカルディレイがさりげなく左から右へとパンニング(移動)されてるような気がする。気のせいかな。いやたぶんやってると思うんだよな。この微妙な細部のこだわりがええんよ。
ラスサビ前のゴーストノート
ラスサビ前のつよつよシャウト君に意識が行ってしまいがちですが、この歪みをかけながら鳴っている「びかびかどくどくちくたく」の前に、「Ah」と短くゴーストノートが入ってんだよね!
シャウトとラスサビ頭の間に一旦これを挟むことで、この2つのフレーズの間のテンションの差をうまく補完している効果があるような気がするなぁ。
あんまり目立たない技だけど、これがあるのとないのじゃかなり印象が違って聴こえてくるんじゃないかなと思いました。ハイ。とにかくセンスが良いです。
めらめらの歌い方
2番のサビから、「めらめら」の部分を「めらめらん」って歌ってんだよね。語尾をスパッと切らずに、音を引っ張る感じにすることで、ちょっと響きが情熱的になって、曲の盛り上がりと雰囲気がリンクしてていい感じ。
1番は「めらめら」と切って歌っているんだけど、逆にここを「めらめらん」にしちゃうとちょっと癖が強くなりすぎる恐れがあるところ。上手く表現を使い分けることで、自然と曲のダイナミクスに合わせてテンションを調節しているんですなぁ。こういう男はモテんだよクラスで。
凡そ、三十六度と少しのあたし
嘘つけこの熱量は確実に三十七度以上はあるぞ。体温計もってこい。
フィナーレにふさわしい歌いあげ
「この音楽に今一瞬の全ての情熱をかける」という、主人公の熱い覚悟が伝わってくるような、圧巻の歌いあげですよね。最初から最後まで余すことなくすごかったです。最初に「適度に余しながら」とか言ってたのは何だったのか。
最後に
このように、毎度クオリティの高い音源を心の乾ききったフォロワーたちに供給してくれるmiyakan。さんでございますが、この人、社会人として仕事をしながらこの歌のうまさで、しかもハイペースな活動頻度で作品を出し続けているというのがもうほんとに色んな意味で尊敬というかなんというかムニャムニャ。
一方、僕は「6月は大学のレポートがクッソ忙しくて歌録ってる場合じゃなかった。7月は気づいたらなんか終わってた。8月は遊び惚けててすでに記憶がない。」などと適当なことを抜かしており、しっかりと単位も落としています。
歌唱力だけでなく、その他さまざまなところで見習うべきところがあるんじゃねぇかと突っ込まれそうな気がしたので、先に自分で言っておきましょう。
miyakan。さん見習って反省しろ!!!!
miyakan。さん
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サカモットゥーさん
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書いた人 笹かにかま
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