Twitterよ永遠なれ〜過去作品供養〜
※本noteは、Twitterバード&Twitter名称の消滅を悼み過去にTwitterを元に制作した短編作品を再掲すると共に、二度とネタには出来ない事実を受け入れ永遠にnoteの書き置きとして供養することを目的としたものです。私個人のTwitterアカウントを知っているものに対しては、只の過去作品再掲となりますがお許しください。
ー形としてはこれまでと変わらなくとも、「Twitter」という言葉自体が、
その歴史を、
その中身を伴い、
そして我々の言語文化を形作ってきたのだ。
その文化が一切否定される訳では無いが、「Twitter」という言葉自体は
ここで一度、息を引き取る。
一緒に歩んできた歴史は過去になり、
そして伝聞でしか知り得ない「伝説」となる。
彼が作り上げてきた世界は、彼の中に生き続けてきた人々の愛、そして精神により、
いくつもの物語となって後世へと受け継がれていく。
しかし、言葉としては既に「死んで」いるのだ。
何故なら、その伝説が人々へ広がっていく場所はもう「Twitter」ではない。
「X」なのだからー。
ーTwitterに生きた誰かの言葉
今までありがとう、の気持ちを込めて。
短編小説①
Twitterと共に生きること
バシュンッ!
突然、爆音が背後から耳を劈いた。
思わずビクリとしその場に突っ立つ□□□□。
まるで自分が銃で撃ち抜かれたかのようで、指一つ動かせない。
それでも周りを見渡そうと□□□□はゆっくり首を動かし、後ろへ回す。
その時だった。
地面からカツン、という乾いた音がした。
ふと気になって音の先を見下ろす□□□□。
そこにあったのは、見覚えがある、水色の石で出来た矢じりがついた、矢。
見覚えがあるというか、さっきまですぐ隣で見ていた矢。
「…〇?」
思わず声を漏らす□□□□。続く声はこない。
胸の奥辺りから恐怖がこみあげてくる。焦りで顔が熱を帯びて火照る。
□□□□はバッと真上に振り向いた。
そこには〇が、胸のあたりを赤く染めながら、茫然としている姿があった。
「〇!!」
大声で叫び飛びつく□□□□。グッと両掌を○の胸に押し込む。
胸の真ん中に服を貫通し小さな穴が開いていて、そこから血がたらたらと流れ続けている。
「〇!〇!お前…どうして!」
「…□□□□」
叫び続ける□□□□に気付き、首を傾け彼の顔を見る〇。
今にも泣き喚きそうな彼とは違い、〇の顔には恐怖も焦りも伺えない。
むしろ何かを悟ったような、とても穏やかな表情だった。
「…やはり、及ばなかったか…」
「及ばなかった!?何だよそれ、何が!?」
□□□□は叫び続ける。目をガンガンに見開いて、〇の今にもとろけてしまいそうな穏やかな目に訴え続ける。
すると、目をスッと閉じる〇。そのままゆっくりと右手を動かし、□□□□の片腕に手をかける。
そして□□□□を自分の前に引き寄せ、にこりと微笑み、言った。
「俺たちはな…弱者なんだよ。」
「…弱、者?」
「そう、この世界で俺たちは常に、弱者なんだ。」
「え、だってお前、一度に放出できるツイートの量は一般人をゆうに超えるって…」
首を横に振る〇。
「確かに量でいけば誰にも負けない。ただ、俺は、俺たちはな、『バズれない人間』なんだ。」
「『バズれない人間』…?」
若干の間が空き、〇は続ける。
「俺のツイートは弓。短期間で大量に放出できるが、その火力は心許ない、他人を殺すには滅多に至らないんだ。」
「…」
「お前のツイートはあの時、剣に姿を変えただろう?剣は中程度の頻度、中火力を表すものだ。俺より強くても他人を殺すことはほぼ不可能だ。」
「…じゃあ、あいつらは…」
「あいつらは命中率が低い。高頻度でも低頻度でも攻撃は滅多に当たらない。」
「じゃあ弱者はそいつらのはず…」
「違うんだ。やつらは俺たちより攻撃を当てられないかもしれないが、当たった時の火力が他の人の段違いになる。こうやって、今あいつらは俺を殺した。これが何よりの証拠だ。」
「…」
「これがこの世界の強者の一つ、『ネタツイ界層』だ。」
〇の言葉に、この世界の知られざる事実に、頭の中が真っ白になる□□□□。
何より「俺を殺した」と断言した〇に、彼の消極的な態度にひどく失望していた。
そして失望と共に何らか怒りがこみあげてきて、□□□□は〇の胸をひときわ強く押さえて叫ぶ。
「お前は殺されてなんかねぇ!今からでも叩きにいけよ!さっきまでの威勢はどこに行ったんだよ!圧倒的な拡散力と人望で周りの人を一網打尽にしていたお前は!!」
「俺は殺されたんだ。」
低く、落ち着いた声で告げる〇。そして胸を押さえる□□□□の片腕をゆっくり外へと引っ張る。
「殺されたんだ。弱者として当然の道を歩んだだけなんだ。」
「お前は弱者じゃねぇ!何のためにここまで…!」
「…□□□□、お前の夢は…」
「この世界を、ツイッターの世界を統一することだ!それはお前がいないと…!」
首を横に振る〇。
そしていつになく神妙な面持ちになり、口を開く。
「…俺は初めてお前に会って、お前の夢を聞いた時、信じられなかった。無理だとしか思わなかった。」
「…!?」
「…もういいだろ、手を離せ。俺はいつまでお前の夢を裏切らなくちゃいけないんだ。」
「…」
胸を押さえる両手を緩めかけ、またぎゅっと押さえる□□□□。
「お前が俺の胸を押さえ続ける限り、俺はお前に絶望を託す。」
「構わねえよ。」
吐き捨てるようにぼそりとつぶやく□□□□。
「構わねぇよ…」
そんな彼の瞳に溢れ出す涙。
「…だったら、むしろ手を離せ。」
「断る…。」
「…構わねぇならここで止まる人間じゃねぇだろ、さっさと先に行け。」
「断る…。」
言われてすぐ□□□□の腕を強引に引っ張る〇。無理やり力を引っ張り出したのが仇となったか、足元がふらつきよろめく。
前に倒れそうになる彼の体を、腕の力だけで支え□□□□。
「俺は…お前に絶望なんて与えねぇ…!」
そして突如白く光りだす□□□□の体。
その光はだんだんと強くなり、太陽の様に輝き辺りを照らす。
「□□□□、まさかお前っ…」
「俺の力、ここで使うことになるとはな…」
目をまん丸にし、煌々と輝き続ける□□□□を見つめる〇。
「お前、ツイッタラーアビリティを持ってたのか…」
「ああ…!」
すると体中の光が〇の胸の前に集まって、丸い塊になり、そして胸のあたりへ吸収されていく。
少しずつ胸のあたりにあった穴が白い光に塞がれていき、赤い血も光に包まれ、消え去っていく。
「…こんなツイッタラーアビリティ、見たことないぞ…」
「俺の持ってる力は、『生命の再構築』なんだ。『あの日々』のメンタルと体力が復元されることを代償に、傷や消滅した命でさえもある程度復元できる。代償が怖くて使いたくなかったんだが、お前を失うよりはって思ってな…」
光は塵のようなものに少しずつ分解され、キラキラとしながら〇の体に舞い降りて、消えていく。
「…『あの日々』って、どれだけやばかったんだよ…」
「…完全回復したら教えてやるよ。俺が力を持った理由も全て。」
「…ありがとうな□□□□。そして本当にごめんな…。」
その〇の優しい声に、また溢れてきた涙を左手で拭う□□□□。
そして何かを決意したかのような表情をして、〇に振り向きこう言った。
「お前は必ず俺の夢に連れていく。絶望なんて言わせねぇよ。」
※簡易的設定の解説
・この物語は、分かる人もいるだろうが、Twitterの呟き方により各ツイッタラーに能力が付与され、それを用いて己の野望の実現のために戦いを繰り広げるというもの。よくある能力者バトルモノをTwitterコンセプトに落とし込んだものである。
・この物語の登場人物が伏せ字になっているのは、彼らが自分のFF(当時名称)そのままをモデルとしたものだからである。当事者やその周りの人は余裕で気づくかもしれない。
・その為、『あの日々』という少し濁した言葉を使用せざるを得なかった。本人が完全に特定させる内容だとTwitterには投稿しづらかった為である。
短編小説②
青い鳥の行方
「青い鳥を見つけると、幸せになれるー。」
そんな伝説が、こんな糞みたいな現代社会でも生きてるだなんて思ってもみなかった。
日々「幸せ」を求めるのにも他人との比較に追われ、満たされる自分を知る人などいない。
それでも「幸せになれる」なんて主観的で根拠も何もない言葉を求める人間が今も、生きている。
ただ自分が幸福だと信じれば、探さなくとも得られるものだなんて、分かり切っているのに。
「…本当にいるんだよ。」
…は?本当に?
「『幸せの青い鳥』は、この世界にいる。」
…どういうことだ?
『青い鳥』は現実を生きられない人間の幻想じゃなかったのか?
「ああ、俺は見つけた。」
「思ったよりも、直ぐ側にいた。」
直ぐ側に…?
そういうと彼はスーツのポケットからスマートフォンを取り出し、画面を俺の視線に向ける。
スリープを解除し、ホーム画面を人差し指でなぞってゆく。そして彼の指はとあるアプリアイコンの上に置かれた。
「twitter…?」
彼は頷く。
そのままアイコンをタップし、Twitterを起動する。
途端に画面は様々な人の投稿に埋め尽くされる。
出掛けた場所や買ったものを嬉しそうに発表するツイート、バズった結果自分に流れてきた他人のネタツイート、それらを批判するツイートや引用リツイート…
一目で他人と自分を比較できる世界が、今当に、ここにあらわされていた。
これらを見て自分の幸せを認めろだなんて無理難題どころの話ではない。ましてや青い鳥の存在なんて誰が信じるのだろう。
俺も普段からTwitterは使っている。しかしそれをしていて自分が幸せだと感じた経験なんて殆ど無い。
本当に青い鳥がここにいるのだろうか。
懐疑でしかない。
すると彼は、自分のTwitterアカウントのアイコンを押した。
タイムラインが半分隠れる。彼はそのまま画面をスクロールしていく。
下に現れたのは「設定」の文字。
彼は躊躇なくそれをタップした。
「…確かにこの中には、ツイートの中には青い鳥なんかいない。」
彼は急に呟く。
と同時に、彼の人差し指が画面の上部に触れる。
「だけどな、俺はここに見つけたんだ。きっとTwitterがある本当の理由って、ここにあるんだと思う。俺たちに教えなかっただけで。」
そう彼が言い終わると同時に、画面にとある文字が現れた。
「アカウントを削除する」という文字が。
戦慄する俺。
この一人一つSNSアカウントを持っているのが当たり前な社会で、それを削除するだなんて。
人間関係も希薄になった糞社会で、twitterのアカウントを削除するだなんて
死と同等だ。
思わず彼の手首を掴もうとする俺。
しかし彼はそんな俺の腕を振り払い、あの文字に人差し指を押し付ける。
「俺たちが自分から探すのを諦めていただけで、青い鳥はすぐ側に、ずっとここにいたんだ。幻想なんかじゃない。それがTwitterが作られた、本当の理由だったんだよ。」
画面が真っ白になった。
アカウント削除の為のパスワード入力画面。
そこに、その入力欄の上に、それはいた。
青くなったTwitterバードが、確かに、そこにいた。
青い鳥は、幸せの青い鳥はそこで、
ずっと俺たちを待っていたんだ。
おわりに
これで、私が供養したかったモノは以上となる。
ここまで見てくださった方には、本当に感謝としか言いようがない。
文章としては稚拙な部分が多く、そして明らかに自身の厨二病を抑えられていない要素があり、かなり読みづらい部分もあったと思う。
ここに残しておくべきなのか、後世に受け継ぐべきなのかと直接聞かれたら、私自身も首を傾げるだろう。
しかし「Twitter」という文化が過去のものとなった今、彼らは今後、二度と日の目を浴びることは出来ないのだ。
いや、それ自体は過言かもしれないが少なくとも、これからTwitter「だったもの」に生きる人たちは、この文が作られた理由、作者の当時の思想を「生きて」享受することは難しい。
それは、彼らは作者である私が、Twitterに生きていたからこそに存在していたものだからだ。
Twitterでこうやって遊べば楽しいのでは?
Twitterのこの要素を活かせば面白い文章ができるのでは?
といった私の好奇心から生まれたものだからだ。
「完璧な文章を書くのではなく、日常的に思い浮かんだことを『呟ける』。」
そんな世界だったからこそ、どこか実験的で不完全な文章だったとしてもある程度輝くことが出来た。
多くの人々が相手でなくても、それが一瞬の輝きでしかないとしても、彼らは私の意思と共に「生きて」いられたのだ。
「Twitter」という言葉の終焉により、果たしてそんな自由だった世界も崩壊してしまうのかというと、それはまだ未知数だ。
だが、それによりTwitterを元にした文学…(文学とは到底言えない段階の話ではあるが)もとい「Twitter文学」は一時の閉幕を迎えることは確かである。その場限りの考えから生まれた文章を、新鮮なまま享受することが出来た世の中とはしばしお別れである。
作者の当時の思想以外でこの作品が評価されるまで、彼らは永遠の眠りにつく。
私はそれを見守ることしか出来ないが、
いつしか「X」が過去を認め、
その歴史を孕みさらなる変容を遂げた時、
彼らをまたここに迎えに来よう。
Twitterよ永遠なれ。